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[コメント] THE 有頂天ホテル(2005/日)

だめだ!
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







調べますと、1930年に『有頂天時代』という映画が作られています。MGMですからミュージカル映画なんですね。原題は『Good News』。ブリードウェイのミュージカルを映画化したんだそうです。主演はメアリー・ローラー。私この人全く知りません。

続いて1936年にフレッド・アステア主演で、同じく『有頂天時代』という映画が作られています。原題は『Swing Time』。RKOの映画ですからやはりミュージカルです。監督はなんとジョージ・スティーブンスです。あの『シェーン』の監督です。フレッド・アステアジンジャー・ロジャースの共演ですから、当時の映画としては絶大な人気を誇っていたようですね。アカデミー主題歌賞を受賞しました。

そして本作『The有頂天ホテル』です。

つまり「有頂天」=ミュージカルという香りほのかに、映画は舞台と化し、その豪華なセットと豪華なスターを素材にお洒落でコミカルな世界。それが「有頂天」のイメージですね。即ち三谷幸喜の世界です。

本作は圧倒的なスター軍団による圧倒的なコメディに仕上がっている。この世界は正に三谷ワールドである。

大変楽しく面白く見ることができたが、これは正にミュージカルやコメディとしての面白さであって、映画としての味わいには欠ける。

いっそのことミュージカル仕立てにしてしまえば良かったのに、とも思えるが、そこは三谷ワールドである。あくまでも舞台演劇にこだわっている。この映画は舞台なのだ。

ここからはほとんど批判的なコメントになってしまうのであるが、これは映画ではない。映画的に見せかけるシーンはあるが、どのシーンも舞台としての映画である。舞台劇としてなら面白いかもしれないが、映画的なシーンは残念ながら見当たらなかった。

どうもこの映画で馴染まない点として、幾人かの役者のセリフだ。あれは明らかに舞台的なセリフまわしである。それはこれまで三谷幸喜の舞台に出演してきた方達であって、これを映画とするなら、あのセリフをどうにかしてほしかった。恐らく三谷本人は気付いていまい。なぜなら三谷さんが好きな世界だからである。本人は違和感を感じていないはずである。

しかし、これだけ豪勢なスターを揃えてしまうと、映画的なセリフと舞台的なセリフとではミスマッチな感じがしてしまうのだ。役所広司原田美枝子のシーンに戸田恵子がからむとがっかりする。

川平慈英香取慎吾がからむシーンは良いのだが、これは単独で舞台のようなものだ。

登場人物が多すぎて、最後に盛り上がりシーンまで一気に見せる映画なのだが、心の変化に矛盾が生じてしまう。政治家の佐藤浩市香取慎吾の歌で元気付けられ、元妻の松たか子の説教でまた考えを改める、という二重展開には辟易する。(もっとも政治家とはこの程度のものかもしれないが・・・)

香取慎吾の歌で多くの人々が正常を取り戻す、というのも説得力に欠ける。

これ以上書くと殺されそうだが、最後に、このセットは全く豪華ではない。相当お金をかけているようだが、実際のホテルでロケをした方がよっぽど豪華だったろう。これは舞台の上に作るセットでしかない。奥行き、天井の高さなど、まるで貧弱である。

これが舞台劇としてなら楽しいだけで終わるのだが、映画となると貧弱である。

ということで、映画館で見て損した映画となってしまった。

残念!

(評価:★2)

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