[コメント] メメント(2000/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
映画は「時間」を表す芸術である。
巷では映画は総合芸術といわれる。映像、物語、演技、音楽、哲学、思想とあらゆる芸術の要素が入っている。これは事実であるが、映画の根底は「時間」こそ映画そのものだと思う。本は何ページ、写真は何枚。映画は何時間何分と表す。また英語でムービーと言われることから「動いているもの」それはやはり時間だ。
この「メメント」は映画は時間芸術と理解して、あえてその「時間」を壊してみようという試みだと思う。「メメント」はその行為だけである。確かに面白い、ここまで徹底的に映画の時間に挑戦した作品ははじめてだ。今まで映画は「時間」に対していろいろ挑戦してきた。スロー、早送り、停止、逆戻し、カットバック、回想シーン。映画の根底が「時間」という事実がこの時間をコントロールする技術をここまで高めてきた。この技術のおかげで時間というものから自由になれたといってもいいだろう。
さてこの「メメント」の挑戦は成功したのだろうか?
この作品を簡単に言えば「逆戻し」の映画だ。 面白い。ここまで人気が出たのもこの面白さに皆驚いたからだ。しかし私はそれだけの映画だったような気がする。また何か物足りなさを感じる。そしてもう一度観たいと言う気持ちになれない。その理由は
この映画には「未来」がないから。
この映画の物語は過去に進んでいる。話のきっかけである謎に向かって進んでいるが映画の終わりは本当の時間の最初に戻る。「その後」は存在しない。自分の頭で元の時間を再構築してファーストシーンをラストにしても「その後」は存在しない。「その後」をこの映画自体が否定しているから。
「未来のない」「その後の物語」のない映画は一回きりでいいような気がする。映画を観終わった後残るのは映画の手法だけでそれ以上のものはない。
映画が終わった後でも自分たちの心の中で物語は続いてほしい。想像したい。 例えラストがストップモーションでも、回想シーンでも皆いい映画には「その後」がある。また絶望的な話でも、主人公が死んでも「その後」がある。それは全部 「時間」があるから。
映画が終わってからの「その後」こそが私たちの本当の映画が始まる。
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