[コメント] キル・ビル(2003/米=日)
ブラック・カルチャーとイエロー・カルチャーの継承者たることを毅然と表明するかのような配色のボディスーツに身を包んだ白人暗殺者XXXは、ユマ・サーマンである以上に、タランティーノ監督自身である。
9・11以後、最初の作品となる本作で彼が選んだテーマは「復讐」。実にタイムリーなテーマだ。このテーマをどう扱うかによってシリーズ全体への期待度、評価は大きく変わってくるだろう。勿論、俺は彼タランティーノが、未だ衰えぬ米帝の国民的ヒステリーなどに流されない、真に冷静で良心的な知識人だと信じているから、最終的にはこの女主人公が選んだ「復讐」という行為(*)が如何に愚かで苦難に充ち、更なる悲劇を生み出すだけの「映画の中でのみ許される行為」であることが証明されるであろうことに、一片の疑いも抱いていない。その信頼は本作の冒頭シーンを見て一層強まった。
ユマは(殺害した)黒人女性の幼い娘に「年をとってまだ憎かったらその時はいつでもおいで」と告げる。これは仇討ちの永続性を知り尽くし、戦いの中で行き続ける覚悟を決めた暗殺者ならではの余裕に充ちたキメ台詞だが、アフガン・イラク爆撃を支持したアメリカ国民にはどう響いたろうか。彼らにそう生きる覚悟はあるか。日本人にはどうか。
(*)・・・ユマが復讐を遂げるための武器を手に入れるのが沖縄、というのも非常に示唆的。
パム・グリアーの主役抜擢が’70年代黒人搾取映画のリバイバル人気を巻き起こした前作『ジャッキー・ブラウン』が、映画の出来はともかく、やや平和ボケしたテーマ性の薄いシロモノであっただけに、本シリーズへの期待は大きい。本作を見て本作に関連する古くて新しい六、七○年代日本映画に興味を抱く若い人(って俺もまだ26だが)が少しでもいてくれれば尚、嬉しい。
***以下お薦め作品***
とりあえず、ライバルの女やくざのメインモチーフとして使われた『修羅雪姫』と、エンドロールで流れてくる「恨み節」を主題歌に持つ『女囚さそり』。どちらも梶芽衣子主演で復讐をテーマにしている。あとクライマックスの大殺陣シーンが良く似ている石井輝男の『やさぐれ姐御伝 総括リンチ』。これは立ち回りする池玲子の着物が勝手に脱げて行くタイトルバックから、斬られて飛翔する鼻ヒゲ、サドマゾ、放尿シーンなどふんだんに盛り込まれた日本映画の裏の金字塔。故深作欣二監督をして「天才」と言わしめた石井監督の編集テクニックも存分に味わえます。
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本作(「キル・ビル」)について、最期にグチいわせてもらえば、アレだな。日本語、ちゃんと云えてないのにOKテイクになちゃってるシーン、多いね。これは駄目。千葉チャンや國村隼が大根に見えてしまう(麿赤児さんは流石巧い)。ファンが減ってしまう。ただでさえ千葉チャンは日本では過小評価なんだからもちっと恰好良くとって欲しかった。
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