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水那岐さんのコメント: 投票数順

★3ミルク(2008/トルコ=仏=独)蜂蜜』より遡って、ユスフをめぐる風景を捉えたオズクル・エケンの長廻しカメラは否が応にも際立ち冴えまくる。しかし、主人公の母親との決別の物語としては鈍くスローモーな展開に過ぎ、トルコ人ならざる自分には特異な暗喩も理解不能だ。シュールレアリスム映画でない以上、これは1時間以上の尺を充分に満たした情報量ではない。[投票]
★3卵(2007/トルコ=ギリシャ)時系列が主人公らと足並み揃えて進まないものの、この作品に至り中年男と化したユスフは俺の生きる現実に近い世界の空気を呼吸するがゆえに親密であり得る存在だ。ゆえに数々の事件に俺も心惑わされ困惑することも少ないのと同時に、この作品を「ユスフ三部作」のなかで最も魅力の少ない作品とも断ぜざるを得ない。[投票]
★4ベルセルク 黄金時代篇I 覇王の卵(2011/日)このシリーズについては意味もなく敬遠していたのだが、いい見直しの機会になってくれた。中世欧州を舞台とした剣戟映画もモデルとして構成されたために、画面に幼稚な嘘はない。そして本場のものにある宗教臭さを切り捨てるとともに、日本らしい残虐描写をも誇示せず品を保ったために、剣戟映画として純粋に愉しめたのは嬉しい。声優の選び方にも嫌味はない。[投票]
★4機動戦士ガンダムUC episode5 黒いユニコーン(2012/日)前回の修羅の連続とはうって変わって、人間の情念が織り成す一編である。おのれの理想論で敵軍の少女を救えず涙に暮れた少年が、改めて思い人に救いをもたらそうと試みる。それは人間の道を少年に示した大人たちの導きと決して無縁ではない。 [review][投票]
★4フラメンコ・フラメンコ(2010/スペイン)頭から尻尾の先までフラメンコ。余分なストーリーどころか、解説すら挟まれることなきフラメンコの連続、しかもその真髄と言えるであろう名演ばかりだ。これを見ればフラメンコはただ聴いて楽しむだけの音楽ではなく、見て参加するものだと知れる。そして人間の血に深く根ざした音楽であることも。アコギ、ピアノ、そして人間の声に肌が 粟立つ思いを久しぶりにした。[投票]
★3風と樹と空と(1964/日)方言や泥酔演技といい、旬をむかえた小百合のアイドル映画としては見所充分であり、愛らしさは頂点に達する。しかし順風満帆すぎる彼女の生活の実情、そしてつねに傍観者側に廻らされるその立ち位置から、深みある多喜子像とは映らなかったのが残念。「ミロのヴィーナス展」など時代背景はなかなか興味深い。[投票]
★4Pina ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち(2011/独=仏=英)暴力的なまでに、舞踏家たちの奥底から搾り出される熱情と愛憎が叩きつけられるパフォーマンスは決して舞台を選ばない。ステージであれ、街中であれその「身体言語」による絶叫は我々の精神に直接に働きかけ、圧倒的な衝撃を与えてやまない。セクシュアルにして人間の根源を突き、それゆえに普遍的であるこの作品たちを記憶するこのフィルムは永劫の価値を持ち続けるだろう。[投票]
★3清水次郎長伝(1952/日)殴られた石松』に続き石松役を演じる田崎潤が嬉しいが、これは広沢虎造の『石松三十石船』を始めとする浪曲に馴染んだ客向けの映画だ。ゆえに石松の運命も当然最初から当たり前のように語られ、戸惑っている暇も無い。まあ、今後いろいろな映画を観るときの一般常識として受け取るべきなのだろう。[投票]
★4大巨獣ガッパ(1967/日)「我々は、忘れていた素朴なものを思い出すべきだったんだ」そう。実に単純でプリミティブだが度肝を抜く撮影は、他社怪獣映画が忘れていたものではあるだろう。 [review][投票]
★2闘牛に賭ける男(1960/日)闘牛試合は大抵の場合八百長であり、こういう「夢の海外旅行」ムービーなればこそ、本気で命を賭ける裕次郎が道化に見えることはさておいても、北の某国のアナウンサーのように鬼気迫る表情を崩さない北原三枝の演技もどうしたものかと思わされる。まだ青臭い主人公に余裕の遊び演技はこなせなかったにしても、見ていて辛い。[投票]
★2俺にさわると危ないぜ(1966/日)コメディなんだか「手に汗にぎるサスペンス」なんだか、出演者でさえ確信をもって演じているのだかと首を傾げさせる中途半端さ。タイツ忍者の断末魔の愁嘆場演出なんか如何にもアホらしい。でも、複雑な役の演じられないマイト・ガイには、恋のゲームを愉しむショーン・コネリーばりの余裕も持ち得ないのは承知の上なのだが。[投票]
★4少年と自転車(2011/ベルギー=仏=伊)世の「正しい育児」とはいかに困難な作業であるかを問う物語だ。親が全てを捨てて子供に接しようと、子供は欲望のままに抗う。しかしそれでも諦めない「親」を名乗る者は、その強さをもって「子供」の心に「誇り」をはぐくむ。 [review][投票]
★4ヘルプ 心がつなぐストーリー(2011/米=インド)差別の怨念は社会における弱者が当然胸に抱く炎だが、真剣に訴えつつも笑いを交え、ポジティヴな筆致で物語を進めるだけで私怨は誰もに受けとめられる「公怨」となる。黒人女優たちの誰もが認める快演とともに、確信犯的な白人女優陣のモラル痴呆的演技は観衆の中の心理を揺さぶり、冷え冷えした笑いを喚起してくれる。[投票]
★3ウルトラマンサーガ(2012/日)子供向けであることに徹した脚本は、特化することで突き抜けた明快さを得、短時間で一世界の構築を立派に成し遂げている。だがそれを揺るがすのは、視聴前に危ぶまれたAKB48よりもずっと危なっかしいDAIGOの巻き舌演技だ。これに比較すれば東国原の侵略者はずっと役の表現に長けており、元コメディアンとしてベリアルの宮迫に比肩するものだ。 [review][投票]
★2アリラン(2011/韓国)ギドクを「韓国の北野武」と呼ぶのは非常に嫌なのだが、今回ばかりはこの作品が『監督・ばんざい!』に等しいというネガティブな意味でその比喩を使わざるを得ない。本作をギドクは「ドキュメンタリーであり、ドラマでもファンタジーでもある」と形容するが、ことジャンル論で言うならこれはセルフ・チア・フィルムだ。実験作とてエンタテイメントの性格を棄てなかったギドク作品にあってベクトルは確実に歪んでいる。[投票]
★4女を忘れろ(1959/日)照明が何より増して絶品だった。子供のような影なき小林と、深く業を抱えた南田洋子や安部徹の内面を彩る濃密な陰影。そして非常階段で小林を襲う制裁のシーンのアングルの素晴らしさ。カメラ姫田真佐久の仕事はここでも期待を裏切らなかった。 [review][投票]
★4黒い傷あとのブルース(1961/日)結局小百合は、虚構の国のお姫様なのだ。彼女が可能な演技をすることで、相手のやくざは優しい王子様となり、敵役は心底腐りきった鬼畜の影をまとわされる。だが、もとより当時の日活アクションの客にリアリズムなど犬のエサとも映らない。プラトニックなロマンスを含めてこれは日活テーマパークに遊ぶ装置であると誰も知っているのだ。心地良い遊びを愉しんだひとときだった。[投票]
★3黒い賭博師(1965/日)007のような小道具の頻出と、登場人物の粋を気取ったことばの数々が、どうしようもなく時代を物語る。冨士真奈美が下着を脱ぐごとに、それに合わせて咽び泣くサックスの旋律を挿入するなど、今ではギャグにすらならない古風さだ。それにも増して、こういう映画の主役を張るなら小林旭にはカードのきり方くらい学んでほしいとは思われた。[投票]
★3善き人(2008/英=独)こぢんまりとした舞台と寓意的な人物たち。どうも演劇めいていると思えば、やはり舞台劇だったか。そう考えれば全編が英語劇として進み、恣意的な台詞回しなのも納得がゆく。ただ、「寓話」であることを貫いたための煮え切らなさは隠す余地もなく、敢えて言えば凡百のナチ・ドイツ告発劇より確実に生ぬるい。むしろ「現実」ははっきりと描かれるべきではないか。 [review][投票]
★3明日は明日の風が吹く(1958/日)仁義なき戦い』の時代を前にやくざ社会の泥沼に溺れ、その渦中で救いを求め苦しむ三兄弟の抵抗。その三人がいかなる苦悩を抱えつつ、当然襲い来る不条理と戦いを交えてゆくのかと思いきや、彼らの商売敵がいとも安直に許しを与えてくれるその拙作ぶりには開いた口が塞がらない。『風と共に去りぬ』の名文句で飾るにはあまりにお気楽な任侠青春劇。[投票]