★3 | Winny(2022/日) | 2002年。ソフト開発者の金子勇(東出昌大)は開発中のファイル共有ソフト「Winny」をネット上に公開する。その革新性はたちまち注目を集めるが、映画やゲーム、音楽の違法コピーに使用する者たちが続出し社会問題化。著作権法違反で逮捕者が出るなか金子も幇助罪の容疑で逮捕される。ソフトを悪用した当人ではなく開発者が罪に問われるのは世界でも異例なことだった。サイバー犯罪に詳しい弁護士の壇(三浦貴大)は弁護団を結成。裁判で逮捕の不当性を主張するがPCやソフトウェアに対する裁判所や世間の理解は実態に追い付かず苦戦することになる。実際に7年間に渡り争われ注目を集めたWinny裁判が実名の登場人物たちで描かれる。(127分)
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★4 | ウォーデン 消えた死刑囚(2019/イラン) | 1966年。イスラム革命前のイラン。荒野にポツンと建つその刑務所では所長の少佐(ナヴィッド・モハマドザデー)のもと囚人の移送が慌ただしく行われていた。空港建設のため刑務所が閉鎖になるのだ。すべてが完了し所内がもぬけの殻となったとき、任務が成功すれば出世が約束されている所長のもとに死刑囚が一名行方不明だと連絡が入る。死刑囚はまだ所内にいると確信し、情報を得るため担当の女性社会福祉士(パリナーズ・イザドヤール)を呼び寄せるが、彼女は囚人の冤罪を主張する。美人の彼女に気もそぞろとなりながらも、所長は血眼で空っぽの建物のなかを捜索するのだが・・。1980年生まれのニマ・ジャウィディ監督の長編第二作。(91分) | [投票] |
★4 | エンパイア・オブ・ライト(2022/英=米) | 1980年代初頭のイギリス南部。その海辺の映画館はスクリーン数を減らしながらも過去の繁栄の面影を残し地元の人々から愛され続けていた。ヒラリー(オリヴィア・コールマン)は統括主任として従業員の中心となって映画館を仕切っているが、かつて心を病んだことがあり表情はふさぎがちだった。さらにヒラリーは支配人(コリン・ファース)からの卑劣なセクハラにも耐えていた。そんな職場に陽気な黒人青年のスティーヴン(マイケル・ウォード)が加わり従業員たちの関係に変化が起きはじめた。やがてこの地方の町にも、サッチャー政権下の高い失業率に荒れる若者たちによる移民排斥や人種差別を叫ぶデモと暴動の波が押し寄せてくる。(115分) | [投票] |
★3 | サハラのカフェのマリカ(2019/アルジェリア=仏=カタール) | アフリカ北部のアルジェリア。サハラ砂漠の幹線道路沿いに取り残されたように建つ小さなカフェ。その簡素な店に一人で住み切り盛りし犬と猫と暮らす老女主人マリカの日々を記録したドキュメンタリー。トラックの運転手、商人、旅人、音楽隊、ヨーロッパのバックパッカー。そんな客たちが地平線の彼方からやってきて地平線の向こうに去っていく。マリカは椅子に座り小さなテーブルをはさみ客たちのおしゃべりの相手となって時を過ごす。話題は国情や仕事、生活や家族のこと。毒舌、ボヤキ、ユーモアを交えて淡々と応じるマリカ。彼女と客の何気ない世間話のなかにアルジェリアの歴史や世情が浮かぶ。ロカルノ国際映画祭最優秀新人監督賞作。(104分)
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★5 | リフレクション(2021/ウクライナ) | ロシアのクリミア侵攻が始まった2014年の首都キーウ。従軍を控えた外科医セルヒー(ロマン・ルツキー)は、娘ポリーナ(ニカ・ミスリツカ)の12歳の誕生日を祝うため元妻(ナディア・レフチェンコ)のもとを訪ね、今のパートナーである兵士アンドリー(アンドリー・リマルーク)から戦線の惨状を聞かされた。そして東部戦線に従軍したセルヒーは敵陣の捕虜となり人民共和国軍の非人道的な行為を目の当たりにする。捕虜交換で帰還したセルヒーは、娘のポリーナと過ごす時間のなかで傷ついた心を癒すそうとするのだった。2022年のウクライナ戦争を受けてチャリティー上映ののち日本公開されたヴァレンチン・ヴァシャノヴィチ監督作。(126分) | [投票] |
★5 | アトランティス(2019/ウクライナ) | 近未来の2025年。ロシア軍の侵攻によりウクライナのドンバス地方とクリミア半島で起きた紛争が終わり一年。製鉄所で働くセルヒー(アンドリー・ルィマルーク)と同僚(ワシール・アントニャック)はPTSDに苦しんでいた。製鉄所は閉鎖され、セルヒーは給水車の運転手として水不足に苦しむ地域を巡る。その途中で知り合った戦死した兵士の遺体回収のボランティアに従事する女性(リュドミラ・ビレカ)は、無造作に埋められた兵士を発掘し、遺族とのお別れをさせて戦争を終わらせているのだと言う。2022年のウクライナ戦争を受けてチャリティー上映ののち日本公開されたヴァレンチン・ヴァシャノヴィチの東京国際映画祭 審査員特別賞作。(109分) | [投票] |
★3 | 別れる決心(2022/韓国) | 韓国。外国人の入国審査を担当する男が岩山から転落して死亡する。事件か事故か。男には中国出身の若い妻ソレ(タン・ウェイ)がいた。夫の死に動揺も涙も見せず笑みさえ浮かべているように見える妻。その言動は韓国語が堪能でないせいだろうか。担当チームのエリート刑事ヘジュン(パク・ヘイル)と部下のスワン(コ・ギョンピョ)は夫殺しの容疑者としてソレの行動を監視しはじめる。私生活で妻(イ・ジョンヒョン)との関係に窮屈さを感じていた刑事ヘジュンは、やがて美しい容疑者ソレに惹かれていき、いつしか彼女の無実を願っているかのように熱い視線を注ぎ始めるのだった。パク・チャヌクのカンヌ映画祭 監督賞受賞作。(138分) | [投票] |
★3 | チャンシルさんには福が多いね(2019/韓国) | 「映画の価値は興行収入じゃない」と言っていた監督が急死。女性プロデュ―サーのチャンシル(カン・マルグムイ)は途方に暮れる。長年仕事に忙殺され気づいたら40歳。結婚もせず貯金もない。後輩たちは優しいが頼りにならず、製作会社の女社長もつれない。気のいい小母さんが大家(キム・ヨンミン)の丘の上の一軒家に間借りして、後輩女優(ユン・スンア)の家政婦になり、そこに通ってくる年下の仏語教師(ぺ・ユラム)に心ときめかせて、あわよくば・・。そんな彼女の前にファンだったレスリー・チャンの幽霊(キム・ヨンミン)が現れる。ホン・サンス監督の女性プロデューサーキム・チョヒの長編監督デビュー作。(96分) | [投票] |
★4 | エゴイスト(2022/日) | 海辺の故郷を離れ東京でファッション誌の編集者として成功した浩輔(鈴木亮平)は、ゲイ仲間からパーソナルトレーナーの若い龍太(宮沢氷魚)を紹介される。母子家庭の龍太は将来自分のジムを持つことを夢に、病弱な母(阿川佐和子)の生活を支えるためにアルバイトをしながらトレーナーの経験を積んでいた。それまでファッションという鎧で身を固め自由を謳歌していた浩輔は、そんな貧しくも気丈な龍太に惹かれていく。その思いの先には14歳のときに亡くした自分の母への思慕を重ねているようでもあった。ゲイカップルを通して大切な人との"無償の愛"のありようを探る物語。高山真の自伝的同名小説の映画化で松永大司監督作。(120分) | [投票] |
★4 | みんなのヴァカンス(2020/仏) | セーヌ川の野外パーティーでアフリカ系青年フェリックス(エリック・ナンチュアング)は白人女性のアルマ(アスマ・メサウデンヌ)と意気投合。楽しい一夜を過ごしたあと彼女は南仏の田舎町へヴァカンスに行ってしまう。未練たっぷりのフェリックスは同じアフリカ系の親友シェリフ(サリフ・シセ)を誘って、半ば強引に白人青年エドゥアール(エドゥアール・シュルピス)の車で後を追う。突然のフェリックスの来訪にアルマの態度はどうも冷たい。一方、シェリフは赤ん坊連れの訳ありそううな白人女性(アナ・ブラゴジェヴィッチ)と親しくなっていく。若者たちのひと夏の出会いを軽妙に描くギヨーム・ブラック監督作。(100分) | [投票] |
★3 | かそけきサンカヨウ(2021/日) | 父と二人で暮らす高校生の陽(志田彩良)には幼いとき家を出た母の記憶はなかった。今では朝食から始まって家事いっさいを取り仕切り、放課後の友人たちとの付き合いもそこそこに帰宅して、夕食まで準備するのが陽にとってやりがいのある日課になっていた。ところが父(井浦新)が再婚し新しい母・美子(菊池亜希子)と4歳の連れ子ひなた(鈴木咲)との暮らしが始まる。生活の変化に戸惑う陽は、子供の頃から仲のいい美術部の男子同級生・陸(鈴鹿央士)を誘って、画家である生みの母・佐千代(石田ひかり)の個展会場を訪ねてみるが・・・。そして陸もまた家族の悩みを抱えていた。窪美澄の同名短編小説の映画化。(115分) | [投票] |
★4 | 世界は僕らに気づかない(2022/日) | 群馬県の高校生・純悟(堀家一希)はフィリピンパブに勤める母レイナ(ガウ)と二人で暮らす。日本人の父親は行方不明だが養育費は毎月振り込まれていた。息子のために気丈に働くレイナだが、純悟には母が家庭を顧みない行き当たりばったりのマイペースにみえていつも苛立っていた。卒業を控え将来の展望も見えず同級生の同性の恋人優助(篠原雅史)との仲も上手く行かない。そんな時、母は再婚したいと見知らぬ男(森下信浩)を同居させ始める。耐えきれなくなった純悟はわずかな手がかりをもとに実の父の行方を捜し始めるのだった。トランスジェンダーの経験をもとにした作品で注目される飯塚花笑監督のオリジナル長篇第5作。(112分)
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★2 | #マンホール(2023/日) | 不動産会社の営業マン俊介(中島裕翔)は、社長の娘との結婚も決まり前途洋々の未来が開けていた。式の前夜に上司や仲間が開いてくれたパーティーで痛飲。同僚の加瀬(永山絢斗)と別れたあと帰路で昏倒して、気づくと深いマンホールの底に横たわっていた。足に怪我を負い梯も壊れ身動きがとれず警察を呼ぼうにもGPSが上手く機能せず自分がどこにいるのかさえ分からない。手当たり次第に電話を掛けるが時間は真夜中、やっとつながった5年前に別れた恋人舞(奈緒)の対応はつれないものだった。思案のあげく俊介はSNSで女性になりすまして助けを求める奇策を思いつく。奈落から這い上がろうとする男の深層を暴くシチュエーションスリラー。(99分) | [投票] |
★4 | GAGARINE/ガガーリン(2020/仏) | パリ郊外に実在するガガーリン団地。1960年代の落成式に参加したソ連の宇宙飛行士の名を冠した巨大な公営住宅だが、今は貧困層が多く暮らし老朽化のため解体が決まった。母が恋人と出て行き、ひとりで暮らす16歳のユーリ(アルセニ・バティリ)は、次々と住人たちが移転していくなか団地に立てこもる。壁を壊しワンフロアを"宇宙ステーション”のように改造し自給自足の生活を始めたユーリは、唯一の理解者でロマのキャンプで暮らす少女ディアナ(リナ・クードリ)とモールス信号で互いの存在を確かめ合うのだった。団地解体のドキュメンタリーを依頼されたファニー・リヤタールとジェレミー・トルイユが脚本を書き監督した劇映画。(95分) | [投票] |
★3 | すべてうまくいきますように(2021/仏=ベルギー) | 元実業家の老父アンドレ(アンドレ・デュソリエ)が脳卒中で倒れたとの連絡が娘エマニュエル(ソフィー・マルソー)に入る。命は取り留めたが体が不自由になったアンドレは、エマニュエルにもう「人生を終わらせてほしい」とたのむ。芸術を愛し音楽を堪能して自分の思い通り生きてきたプライドが、今の自分の状況を許さないのだった。困惑し戸惑うが言い出したら絶対に引かない父の願いをかなえるために、エマニュエルは妹の(ジェラルディーヌ・ペラス)とともに「安楽死」の手はずを整え始めるのだった。監督のフランソワ・オゾンとコンビを組んだ脚本家で2017年に病死したエマニュエル・ベルンエイムの自伝的小説の映画化。(113分) | [投票] |
★5 | 辻占恋慕(2022/日) | 30歳の芽の出ないミュージシャンが小さなライブハウスで出会あう。男はロックデュオの信太(大野大輔)。女はシンガーソングライター月見ゆべしこと恵美(早織)。恵美の才能に惚れ込んだ信太は自分の活動に見切りをつけてマネージャーとして“月見ゆべし”の支え役に徹することに。評論家やプロデューサーに売り込みSNSにも目くばせし“月見ゆべし”をメジャーにしようと奔走する信太。時代遅れと言われてもスタイルを頑なに変えない恵美。ライブハウス時代の知り合いで人気アイドルになっていた菊地あずき(加藤玲奈)の一言が信太の心に引っ掛かる。意地かブライドか傷のなめ合いか。アーティストの夢の果てを描く苦く切ない愛の話し。(111分) | [投票] |
★3 | パラレル・マザーズ(2021/スペイン=仏) | スペイン内戦で虐殺された曾祖父ら村人たちの遺体の行方を気にかけていたカメラマンのジャニス(ペネロペ・クルス)は、仕事で知り合った法人類学者のアルトゥロ(イスラエル・エレハルデ)に遺骨の発掘調査を依頼する。そして二人は互いに好意を抱きジャニスは妻帯者であるアルトゥロの子を身籠り女の子を出産。その同じ日に、同室の17歳のアナ(ミレナ・スミット)もまた望まない妊娠だったが女児を産んだ。二人は母性に目覚め慣れない育児に励むが、やがてジャニスは娘が自分の子供でないことに気づいてしまう。女たちの葛藤を通じて描かれる過去から未来へと受け継がれる血縁と家族の物語。ペドロ・アルモドバル脚本、監督作.(123分) | [投票] |
★4 | スワンソング(2021/米) | 施設で暮らす偏屈なゲイの老人(ウド・キアー)を弁護士(トム・ブルーム)が訪ねて来る。老人はミスター・パットと呼ばれた腕利きのヘアドレッサーだった。かつて一番の顧客だった町の名士リタ(リンダ・エヴァンス)が「死化粧はパットに頼んでほしい」と遺言を残し亡くなったという。多額の報酬を提示されるも、過去の“ある出来事”のため依頼を断るパットだが、プロとしてのプライドが彼を故郷サンダスキーへ向かわせる。町を彷徨うように最愛のパートナーの墓や旧友の男娼、そして弟子の店や行きつけのゲイバーを訪ね、ようやく葬儀を取り仕切るリタの孫(マイケル・ユーリー)に会いに行くがパットの心はまだ揺れていた。(105分) | [投票] |
★3 | よだかの片想い(2022/日) | 顔の左側にアザがある大学院生のアイコ(松井玲奈)は、自分なりにそれを受け入れて先輩のミユウ(藤井美菜)や後輩の原田(青木柚)と研究に没頭する日々を過ごしていた。友人の編集者まりえ(織田梨沙)が、そんなアイコを紹介した本が話題となり、彼女に興味を持った映画監督の飛坂(中島歩)が映画化したいと申し出る。初めは固辞していたアイコだが飛坂の誠実な人柄に惹かれ、いつしか恋愛感情を抱き映画化をOKする。恋人のように付き合い始めた二人だが、飛坂のつかず離れずの態度に、自分は映画の素材でしかなかったのではとアイコは疑心を持ち始める。島本理生の原作を城定秀夫が脚本化した安川有果の監督作。 [more] | [投票] |
★3 | MISS OSAKA/ミス・オオサカ(2021/デンマーク=ノルウェー=日) | 自分に自信が持てず将来の展望も描けない24歳のデンマーク人女性イネス(ビクトリア・カルメン・ソンネ)は恋人と訪れたノルウェーで、大阪から来たという日仏ハーフのマリア(森本渚)と出会う。自信に溢れ颯爽と生きる彼女に心酔し二人は時間を共にするが不慮の出来事でマリアは行方不明になってしまう。そのショックを糧にイネスは"自分を変えるため”に未知の世界大阪へ向かう。そしてマリアがナンバーワンホステスとして勤めていたナイトクラブ「MISS OSAKA」で働き始めたイネスの前に、マリアの恋人シゲル(森山未來)が現れるのだった。デンマークの俊英ダニエル・デンシック監督による大阪アジアン映画祭クロージング作品。(90分) | [投票] |