3819695さんのコメント: 点数順
牡牛座 レーニンの肖像(2001/露=日) | 極度にデュフューズされた彩度の低い画面。違和感を伴う音の定位(声が口から発されたように聞こえない)。散見される異様なカット繋ぎ。こうして私たちはレーニンの最期の日々を「夢」のように目撃する。「何をどう撮るか」の意志は強烈ながら、その意図は靄に包まれて見えない。リンチ的ではなくブニュエル的な難解。 | [投票(2)] | |
決断の3時10分(1957/米) | やっぱりグレン・フォードは凄い役者だったと思い知る。「決断」の唐突感と納得感の絶妙な按配は悪役造型の懐の深さに拠る。苦悩する「善人」役に悪人顔ヴァン・ヘフリンも確信的な配役だろう。見応えある画面は多いが、特にラスト近くの「蒸気」演出が最高。緊張感の操作も見事。ヘンリー・ジョーンズも泣かせる。 | [投票(2)] | |
スペル(2009/米) | サム・ライミの名人芸を大いに堪能する。大胆にして精緻な演出、テキトーのようで確実な筋運び、異端でありながら王道の娯楽映画。集大成的恐怖演出のいちいちもさることながら、観客の快感のツボの所在を知りつくした手つきが間然するところのないホラー・コメディを築き上げている。 [review] | [投票(2)] | |
東への道(1920/米) | リリアン・ギッシュの可憐さには付け入る隙がない。クロースアップが捉えるべき顔面とはこれだ。また画面の充実度は驚くほど古びていない。リチャード・バーセルメスが初めて愛を告げるシーンの「水面」の美しさや「風」を撮る技術は普遍だ。流氷シーンのアクションの無茶はバスター・キートンと共振している。 | [投票(2)] | |
キャデラック・レコード 音楽でアメリカを変えた人々の物語(2008/米) | 登場人物の数はかなり絞ったのだろう。たとえばボ・ディドリーについてはまったく触れられていなかったりするが、それでもまだドラマの焦点がぼやけているという印象は否めない。編年体的語りでは無理からぬところでもあるが。しかし個々のシーンの出来には概ね満足できる。役者がよい。 [review] | [投票(2)] | |
男と女の不都合な真実(2009/米) | 取り立てて大騒ぎするほどではないにせよ、現在の日本でこの品質の喜劇が撮られたならばそれだけで事件になるだろう程度に面白い。くるくると表情が変わり、ことあるごとに小躍りするキャサリン・ハイグルがいい。彼女のアシスタントを演じたブリー・ターナーも同様に喜劇的表情を決めるのが巧い女優で可愛らしい。 [review] | [投票(2)] | |
ウォレスとグルミット ベーカリー街の悪夢(2008/英) | 映画を子供向けに撮らないニック・パークは絶対的に信用できる。現代最高峰のアクション・サスペンス・コメディ・シリーズ『ウォレスとグルミット』はどこまでも「大人」の映画である。展開の濃密さはシリーズでも随一。驚愕のアニメーションが連続し、どこを切っても映画の記憶が溢れ出てくる。 [review] | [投票(2)] | |
扉をたたく人(2007/米) | 太鼓の登場するシーンはすべて感動的だ。「フリをする」だけの男リチャード・ジェンキンスを変えたものとは、端的に太鼓を叩くアクションと音である。この演出家の志は高い。面会室での仕切りを隔てたセッションは映画史上の面会シーン中でも独創的な演出。ジェンキンスの芝居には僅かの過不足もない。 | [投票(2)] | |
抜き射ち二挺拳銃(1952/米) | 乗馬チェイスの速度感に終盤の銃撃戦設計。やっぱりシーゲルのアクションは最高だ。留置所の爆破シーンなど低予算なりに派手な画面を拵えるサービス精神も嬉しい。スティーヴン・マクナリーが腕に怪我を追って引き金を引けなくなるという障害の仕組み方もシーゲルらしさか。その障害による追い詰めぶりは少々手温いが。 [review] | [投票(2)] | |
不死身の保安官(1959/英=米) | 陰惨なことは何ひとつ起こらないだろうという安心感。ウォルシュはコメディもお手の物だ。この可笑しさは英国紳士をワイルド・ウェストに置くという着想の妙を貫いてさえいれば得られるほど簡単なものではない。自身の場違いぶりをどの程度認識しているのか分からないケネス・モアがよい。 [review] | [投票(2)] | |
ディア・ドクター(2009/日) | 怠惰な観客の私は笑福亭鶴瓶の出演作を追うことをまるでしてこなかったわけだが、いつの間にこれほどの俳優になっていたのか。たとえば『東京上空いらっしゃいませ』と比べても格段に巧くなっているのは確かだが、その顔面が醸す多義的に複雑な滋味ときたら! そう、ここでも問題はあくまでも「顔面」である。 [review] | [投票(2)] | |
ゴースト・オブ・マーズ(2001/米) | カーペンターの女性映画。母系社会という設定がすでに明示的だが、アイス・キューブやジェイソン・ステイサムといった間抜け面がメインキャストに名を列ねるのもこれが女性映画だからだ。ナターシャ・ヘンストリッジのヒロインぶりは申し分なく、クレア・デュヴァルも髪型のおかげで三割増し美人に見える。好っきゃ! [review] | [投票(2)] | |
消されたヘッドライン(2009/米=英) | これは面白い。上出来のアクション映画。ファーストシーン、黒人男性が何者かから必死で逃げている。その彼の車道横断をワンカットで撮りあげる呼吸がすばらしい。特にスクーターと激突する演出は最高。頭からこういうカットを見せてくれるという一点だけをもっても、私は断然この映画の味方である。 [review] | [投票(2)] | |
飛行士の妻(1980/仏) | 「尾行」は運動とサスペンスを一挙に成立させる映画的行為だ。ヒッチコックを父に持つ映画であることは明らかだが、その参照の仕方は多分にトリュフォーと響き合っているかもしれない。また主人公と探偵気取りの少女の会話が抜群に面白い。ただの会話を面白く撮れるか否かで演出家は一流と二流以下に分類される。 | [投票(2)] | |
エスケープ・フロム・L.A.(1996/米) | いつもながらカート・ラッセルのコメディ・センスの確かさには感心させられる。受け(リアクション)の演技はほとんど常に完璧だ。バラエティに富んだ移動手段も映画の楽しさ。奇跡的な『ニューヨーク1997』と比べればキャストのスケールダウン感は否めないが、スティーヴ・ブシェミ好きの私にはこれも嬉しい映画。 | [投票(2)] | |
第3逃亡者(1937/英) | 真犯人に寄っていくクレーンはむろん必殺で、『鳥』的鳥アップのような奇矯なイメージも目を惹くが、小技の充実も同等に嬉しい。自動車が廃坑の穴に呑み込まれる唐突さ。その呑み込まれる速度の緩慢さが醸す官能性。ノヴァ・ピルビームはヒッチコック・ヒロインの中でも好感度番付上位。原題は無駄に感動的。 | [投票(2)] | |
血槍富士(1955/日) | 実に微笑ましく、それなりに感動的でもあるものとして物語は終わったはずだった。だが壮絶なクライマックスはまるでエピローグのように「付け足され」てしまう。片岡千恵蔵の立回りの感動的な不格好。その直前に瞬間的に挿入される顔面アップカットの絶望的な凄み。そして樽から噴き出した酒によって場は「泥沼」となるのだ! | [投票(2)] | |
我が道を往く(1944/米) | 大好きな映画。これほど臆面もなく人間の善良さが描かれていながら、そして物語の中にトラブルを発生させる仕方に作為の跡が目立つにもかかわらず、それらがまったく鼻につかないというのはあるいはキャプラ以上かもしれない演出技量のためだ。気取りがない。衒いがない。だから笑える。だから美しい。 [review] | [投票(2)] | |
あにいもうと(1953/日) | 作中人物たちの日常は熟れてほとんど終末的な退廃に接近しているかに見える。しかしそれは彼らにとってまさに日常であるのだから、彼らはそのことに気づきすらしない。一方でラストに限らず爽やかな空気が取り込まれてもいるのだが、その文字通り嘘のような爽やかさが却って怖ろしい。 [review] | [投票(2)] | |
ダーティファイター(1978/米) | これ以上のオランウータン映画があるだろうか。イーストウッドとウータンのダブル主演という前衛的すぎる企画。ウータンの演技も完璧だが、それを見つめるイーストウッドの優しい目がいい。彼がこんなに優しい目を見せる映画は続篇および『ブロンコ・ビリー』のいくつかのシーンを除いて他にない。もう胸キュンである。 | [投票(2)] |