★5 | ダークナイト(2008/米) | 昔からある話ではある。善と悪の対決であり、『ドン・キホーテ』である。しかしそれをかくも現代的に説得力をもって語るのは簡単ではない。全編に漲る破格の馬力と量感には脱帽だ。 [review] | [投票(7)] |
★5 | ワイルドバンチ(1969/米) | 男らしさに悪酔いしてしまったような連中が、二日酔いの朝、この世の無意味に耐えられず、迎え酒にさらに強い酒をあおるような話。そして、ぶち撒けられる反吐があの壮絶な銃撃戦。 | [投票(7)] |
★5 | 暗黒街の弾痕(1937/米) | 本質的にアナキストであるラングの映画には、善と悪が危険なニアミスを犯す瞬間が必ずある。毒ガス弾の妖しい美しさを見よ!破滅への疾走が放つ生命の輝きを!哀しい自由の歌を! | [投票(5)] |
★5 | 東京暮色(1957/日) | 闇に沈む東京の凄惨な美しさ。夜更けの喫茶店の深海のような雰囲気。一本でいいから、小津にチャンドラーやハメットの原作で犯罪映画を撮って欲しかった。傑作になっていたはずだ。 | [投票(5)] |
★5 | ガントレット(1977/米) | 斜に構えない愚直さが素晴らしい。荒っぽい風土を背景に銃弾乱れ飛ぶが、愛と正義をカウボーイのホラ話的語り口で説くかなり純情な話。イーストウッドの潔癖さがよくでている。 | [投票(5)] |
★5 | フェイブルマンズ(2022/米) | 撮影カミンスキーによる光、色彩設計に脱帽。1950年代風の、一見平凡にみえてその実まったく非凡な輝かしい画面だ。スピルバーグは、凡庸な監督が決して所有しないある種の非情さをもって日常の裏側にあるものを取り出し、ただの追憶ではない何かをつくった。 [review] | [投票(4)] |
★5 | ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト(2008/米=英) | 花道をフットボール選手みたいなフォームで走るM・ジャガー!ぞくぞくするほど格好良い。類稀なダンサー。両性具有の天才的扇動者。騒乱事件の組織者。悪魔のような奴なのだ。 | [投票(4)] |
★5 | 流れる(1956/日) | 致命的な事柄をなんでもないことのようにサラリと描く。この世のしがらみも川の流れを堰くことはできないのだ、と。日本映画で最もハードボイルドな描写をするのは成瀬巳喜男かもしれない。 | [投票(4)] |
★5 | ダーティハリー(1971/米) | 資本主義の極相林・コンクリの密林たるLAに展開されるマン・ハント。夜のスタジアムでいたぶる時の生唾を呑む雰囲気。人間の本性はやはり悪なのだろう。しかしそこに高貴さもある。 | [投票(3)] |
★5 | フレンチ・カンカン(1955/仏) | ルノワールの女の好みは頭と尻は軽く、足腰は丈夫。体育会系なのだ。じゃじゃ馬どもに鞭をくれて走らせる群舞シーン!爆発するマッスは暴動に近い。全てが薔薇色に輝いている。 | [投票(3)] |
★5 | ひなぎく(1966/チェコスロバキア) | とことんフザケ倒す語り口こそが反逆の表れ。最高の復讐とは優雅に生きること。ワヤクチャのカット割りは明るい悲惨に満ち、ひらめくイメージには捨て身の美しさが…。しかし出口は無い。 | [投票(3)] |
★5 | 仁義なき戦い 頂上作戦(1974/日) | 開いた窓から舞い込む雪片。スラム・結核・ヤクザ…全ては豊かさの中へ消えてゆき、男たちの闘争も徒労に。戦争で死に損なった彼らに、この時ようやく終戦は訪れたのかもしれない。 | [投票(3)] |
★5 | 祇園の姉妹(1936/日) | 可憐でドスの利いた山田五十鈴が素晴らしい。煙草を吹かしてフフン!と鼻を鳴らすふてぶてしさ。欲しいものを手に入れようとする時の巧みな媚。日本の女優で最もスケールの大きさを感じさせる。 | [投票(3)] |
★5 | ストップ・メイキング・センス(1984/米) | ひとつ要素が付け加わるごとに、何かが確実に立ち上がってくる。そしていったん完成するや、音・リズム・動き・照明が一体となって、「意味付け無用」の怒涛の展開。フィジカル面の強度も凄い。ブカブカ服のバーンは舞踏病にかかったお父さんみたいで楽しい。 | [投票(2)] |
★5 | 姉妹(1955/日) | 古い日本映画をみる楽しさのひとつは、まだ「現代」に染まっていない頃の日本を見るおもしろさにある。明るい働きもので、生まじめな理想家だった人々。家族のように仲のいい共同体。まだ生きている季節の行事。この時代の方が良かったなどとはいわないが―― [review] | [投票(2)] |
★5 | 一心太助 天下の一大事(1958/日) | 朝焼けの日本橋を真っ正面から軽やかに駆けてくる錦ちゃん。「絶望です」と言われてドッと笑う魚河岸の兄ィ連。バカかというくらい晴れやかなのである。インテリがなんと言おうと、かつての日本の一般大衆の理想はこうだったのだろう。そして意外に前衛的だ。 [review] | [投票(2)] |
★5 | 赫い髪の女(1979/日) | 冬の海のように荒々しく、海鳴りのようにどよめき、流木のようにささくれだって、霧雨のように優しく、焚き火のように暖かい。かけがえのないオモチャ。避難港。幸せ過ぎる映画だ。 | [投票(2)] |
★5 | 8 1/2(1963/伊) | 芸術家に必要なものは、愛と受容と「自分殺し」。矛盾と逸脱と刹那の輝きに身を投げて、甘美なる溺れ死にを。そして、「記憶」や「現在」や「願望」などという幽霊たちと踊るのだ。 | [投票(2)] |
★5 | シティ・オブ・ゴッド(2002/ブラジル=仏=米) | 福祉政策として建設された街が、剣呑なガキ共の闊歩する魔宮と化すまでの年代記。創世から三十数年、今や事態は超現実的水準へ。ああ、素晴らしきこの世界!彼らは無垢そのものだ。 | [投票(2)] |
★5 | もっとしなやかに もっとしたたかに(1979/日) | 大人になれない彼ら。それでも、男と女は惹かれ合い、共に暮らし、人は生まれ、そして死ぬ。その厳粛、その倦怠、そのかけがえのなさ。日本の家庭映画が描き続けた主題がここにある。 | [投票(2)] |