★3 | シン・ゴジラ(2016/日) | こういう規模の企画を一本の映画としてまとめ上げ、なおかつ興行的にも成功させる、庵野秀明という人は映画監督である前に一流の映画プロデューサーなのだろう。この映画最大の不幸は田中友幸と円谷英二に当たる人物はいても本多猪四郎が不在という点である。いびつな映画だが『真昼の決闘』を見た人間が『リオ・ブラボー』を作ったような事態が起きることを期待し、この映画の成功自体は大いに歓迎する。 [review] | [投票(12)] |
★3 | ラ・ラ・ランド(2016/米) | やはり歌唱シーンではA Lovely Nightが最も優れており、ここはあのLAの夜景が見える丘のロケーションを選べた時点でもう勝ちだったと思う。そうした歌唱シーン幻想シーンには評価すべきところもあるのだが、ドラマ部分の演出が平凡というか力押しなところがありどうにも退屈である。なんというかミュージカル映画というジャンルにおける『シン・ゴジラ』みたいな作品だなと。 [review] | [投票(8)] |
★3 | ゴジラ(1954/日) | 本多猪四郎の演出にしろ円谷英二の特撮にしろ大したものだとは思えない。しかしゴジラの東京襲撃場面の緊張感は後の作品の追随を許さない出来映えだ。これは作り手が戦争や空襲の現実を「知っていた」から、というよりは誰も怪獣映画の撮り方を「知らなかった」ことが原因なのだと思う。本作のゴジラは「怪獣」ではなく得体の知れない「何か」として撮られている。だからこれは怪獣映画ではない。だからこそ恐ろしい。 | [投票(8)] |
★2 | アメリカン・スナイパー(2014/米) | 心理描写中心の厭戦映画だと勝手に推測していたのだが、これが意外にも痛快娯楽アクションのノリで撮られているのだ。会話にはユーモアが溢れ、ライバルのスナイパーとの対決があり、爆破やVFXを用いた大スペクタクルもある。敵はほとんど人格を描かれないただの的である。これが悪いとは言わない、むしろ好ましいとすら思う。しかし困ったことにこの映画は痛快娯楽アクションとしてあまりにもつまらないのである。 [review] | [投票(6)] |
★3 | 2001年宇宙の旅(1968/米=英) | 難解とよく言われる映画だが、本当に意味不明なのはラストの10分間ぐらいなもので後の部分はちゃんと映画を見ていれば十分ストーリーは理解できる。モノリスが出てきた場面でのいかにもなおどろおどろしい音響効果はわかり易すぎてわらってしまいそうなほど。 [review] | [投票(6)] |
★2 | ブリッジ・オブ・スパイ(2015/米) | 信念を持ち逆境に立ち向かう不屈の男の物語。それにしてはこの映画のトム・ハンクスは孤立感が薄い。反権力のようでいて権力に寄りかかりすぎている。また交渉と対話の映画である以上仕方ないとはいえ、この映画には基本的に話せばわかりあえる人間しか出てこない。対話不可能な恐怖は描かれていない。これではサスペンスも盛り上がりようがない。 [review] | [投票(5)] |
★3 | 七人の侍(1954/日) | 村の場面は別々の場所で撮影したものを後から編集で一つの村であるかのように見せかけたらしいので致し方ない面もあるのだろうけれど、それにしても人物の位地関係が非常にわかりにくい。おまけにイマジナリ―ラインを無視したような画面繋ぎがやたら多くとにかく戦闘シーンはみづらくてしょうがない作りになっている。端的に言ってアクション映画としての面白みはまるで無い。 [review] | [投票(5)] |
★4 | 曽根崎心中(1978/日) | お初(梶芽衣子)は徳兵衛(宇崎竜童)以外の人間とほとんど目を合わせようとしない。目を合わせたとしても、それは必ず徳兵衛に関する会話が成される時だ。それ以外の場面では瞬きすらせずただ何もない空間を見つめている。このひたすら徳兵衛を求めてさまよう目線が梶芽衣子のキャラクターを特異なものにしている。 | [投票(5)] |
★4 | 日本で一番悪い奴ら(2016/日) | こんなに画面にタバコの煙が充満している日本映画はもう20年は作られていないんじゃないか。アップやカメラ揺れが多くともロングショットはしっかり決めている。130分という長さは適切とは思えず終盤はだれているが『凶悪』よりずっと良い。明らかに70年代東映実録路線を意識しているがそれでも綾野剛を凄みのある悪漢ではなくどこまでも情けなく滑稽なチンピラという身の丈にあった役を演じさせているのが良い。 [review] | [投票(4)] |
★2 | シビル・ウォー キャプテン・アメリカ(2016/米) | 何度も画面真ん中にデカデカと白文字で地名を表示するのはそうでもしなければ場所が移動したとすらわからない、地形や空間、気候を生かした場面を設計できていないことの現れか。アップ主体の狭苦しい画面が示すとおり、人間関係も結局パパ・ママ・トモダチに終始する世界の狭さ。民衆の視点がまるで描かれていないくせに、ヒーローへの同情をあおり続ける演出・脚本は不愉快極まる。 [review] | [投票(4)] |
★4 | バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生(2016/米) | 目下のところザック・スナイダーの最高傑作だろう。撮影がラリー・フォンへと戻ったのは大成功だった。台詞が少ない、説明しない。人物は迷わずにただ行動し続ける――ヒーローというのは、目的がひとつしかない人物のことだ。そのただひとつの目的がなんであるか、その目的が邪悪であるか軽薄であるかポジティブであるかにかかわりなく、それがヒーローなんだ。(ジョン・カーペンター) [review] | [投票(4)] |
★4 | ザ・ウォーク(2015/米) | まずはパントマイム他各種曲芸に綱渡りスタント、おまけに全裸ダンスまで見せてくれたジョセフ・ゴードン・レヴィットに敬意を表そう。綱渡りの話なんかどうやって映画にするのかと訝しんでいたが序盤のフランスパートは喜劇、アメリカパートは犯罪映画的とうまいこと映画の文体に落とし込めている。たとえ3Dで見なくとも奥行きのある構図は十二分に効果的である。 [review] | [投票(4)] |
★4 | 続・荒野の用心棒(1966/伊=スペイン) | ぬかるんだ町は『シェーン』からの影響という意見もあるが、泥濘の量から考えると『スポイラース』や『アラスカ魂』などのアラスカを舞台にした西部劇を参考にしたのではないか。北のアラスカと南のメキシコがこんなところで繋がるというのも何とも面白い。 [review] | [投票(4)] |
★3 | 続 夕陽のガンマン 地獄の決斗(1966/伊) | セルジオ・レオーネの映画では一番つまらない、というのは言い過ぎで『ロード島の要塞』よりは面白い。基本的に単純な娯楽アクションとして作られているためか後の三作とは異なり上映時間の長さは必ずしも映画の豊穣さに繋がっているとはいえず、冗長なだけではないのか。 [review] | [投票(3)] |
★3 | SCOOP!(2016/日) | 長回しからカメラが上昇しタイトルインするオープニングのかっこよさ。カーチェイスの造形も近年の日本映画では屈指の出来栄えだろう。そうした魅力的な細部があるだけに、結局福山雅治のナルシシズム的かっこつけ映画に留まってしまったのが残念である。中年パパラッチ、ゴキブリ、ドブネズミと卑下しながら冷徹に突き放し切れていない、ただの言い訳でしかない。 [review] | [投票(3)] |
★4 | スター・ウォーズ フォースの覚醒(2015/米) | シリーズ最高傑作だと思う。シリーズ故の制約かローレンス・カスダンの脚本のおかげなのか、同監督の『スター・トレック』とは違い、1カットが程よく長く奥行きがあり、煙が立ちこみ光がきらめく落ち着いた画面が作られている。136分という長さや回想シーンもあるため多少だれるところはあるものの、人物が行動し続けるため映画が停滞することはない。ことあるごとに被写体にカメラをぐっと寄せるのは好きになれないが。 [review] | [投票(3)] |
★4 | ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q(2012/日) | 断然支持する。テレビの延長線上にあった以前のシリーズよりも立体的な構図やカメラワークが多用されており映画たろうとする意欲が感じられる。音楽と映像を見事に同期させたアクションシーンも『ファンタジア』の頃からの伝統に沿うアニメーションの正しい姿であると言って良い。ひたすら画面と音響を堪能するという点において前作よりもよほど優秀な娯楽映画である。 [review] | [投票(3)] |
★3 | GODZILLA ゴジラ(2014/米) | ギャレス・エドワーズという人が怪獣映画についてよく勉強していることはわかる。何気ない場面までまるで怪獣を撮るように撮っている。例えば廃墟となったジャンジラ市に捨て置かれた車のドアミラーにヘリが映り、そのヘリを父子二人が目で追い謎の施設が映されるまでの一連のカット割および目線の動きなんかがそうだ。本作は特撮場面に用いられる演出を本編でも使ってみせる一種の実験映画として見るべきなのかもしれない。 [review] | [投票(3)] |
★4 | スパルタカス(1960/米) | この時期に作られたローマ史劇ものの中では本作が最高傑作だろう。これだけの大作を画面の隅々までコントロールしてみせたスタンリー・キューブリックの手腕は見事としか言い様がない。本人のプライドが許さなかったのだろうけれど、変に作家ぶったりせずにこういう大作専門の職人監督として活躍し続けてくれたなら映画史はもっと面白いものになっただろうに。 | [投票(3)] |
★4 | 寄生獣(2014/日) | あの心理的かつ説明的な原作からよくここまで映画として見られる脚本を作ったものだと感心する。一方で原作のドライさのおかげか山崎貴のいつもの感傷病も幾分か抑えられているのも良い傾向だ。阿藤正一の撮影も中島哲也作品の時のようなPV臭は感じさせず硬質な世界観を生み出すのに貢献している。音楽はやや大袈裟だが。 [review] | [投票(3)] |