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[コメント] 火垂るの墓(1988/日)

はじめて観た子供のころは、せっちゃんが可哀想で可哀想で、ずいぶん泣いた。今日、何度目かで観たけれど、素直に泣けない自分がいた。そんな大人になったことを、私は全然悔やんでいない。
movableinferno

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







かわいそうな、かわいそうなせっちゃん。ちいさな子供の哀れな姿はちいさなわたしの胸に響いた。

今、おおきくなったわたしには、「何故せっちゃんが可哀想な目に遭わなければならなかったか」、その理由がいやというほど目に付く。そう、この物語は他の方のコメントにもあるとおり「無知で意固地な少年が、その無知と意固地さの故に妹を死なせ、自分も死んだ」、そういう物語だ。

だめだだめだ。愛するものの命を失ってしまうような、そんな「無知蒙昧」を、こんなふうに美化して描いてしまうことを許してしまってはだめだ。そんなものに涙を流すことを、わたしは断固として拒否する。

そして《ハシヤ》氏の言うように、この物語のそうした本質に対して高畑勲が自覚的であるとするならば、その上での「アイロニー」なのだとしたら、わたしは彼のそうしたやり方をこそ、より激しく憎む。それは観客に対する最悪の侮蔑に他ならないからだ。

この映画を観ても素直に泣けなくなったわたしは、その分だけ「無知」から遠ざかることができたのだと思っている。だから、こんな大人になったことを、わたしはやっぱり、少しも悔やんでいない。

(評価:★1)

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このコメントを気に入った人達 (21 人)yasuyon ナム太郎 ごう Myurakz[*] かける[*] すわ 水那岐[*] てでぃ kei natsui 4分33秒 ペンクロフ peaceful*evening[*] stag-B[*] ロボトミー[*] でぃーこば[*] [*] こしょく[*] はっぴぃ・まにあ アルシュ[*] ハイズ[*] muffler&silencer[消音装置]

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