[コメント] 蝶の舌(1999/スペイン)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
それは、蝶には蜜を吸うための細くゼンマイのように巻かれている舌がある事。しかし普段は顕微鏡で見なくては見えないほどに小さく隠されている。・・・これはまるで「人の心」を暗示しているかのようであった。内に秘めた、「自由な心」を。グレゴリオ先生の生徒たちへの願いも「自由に飛び立つ」ことだった。だから、ラストシーンでモンチョが「蝶の舌!」と叫んだことは、モンチョがそれを自覚していたかどうかは別として、映画そのもののメッセージとしては「自由な心」を暗示しているのでは無かったか。
最初の方の”雄鶏クイズ”エピソードで、少年が他の子に比べて頭の回転が良いらしいというイメージは持っていたが、モンチョのラストの言動は観る者に委ねられているのだろう。しかしわたしにはそれはあまり重要には思えなかった。モンチョがどう思い行動したかより、「観る者が何を感じ取ったか」の方が大切なのではなかったかと思う。
ある時モンチョが、人間が死んだ後にはどうなるのかをグレゴリオ先生に聞く。先生は、地獄なんて無い、本当の地獄は人間が作り出すもの・・罪の意識や残酷さ・・なのだと教える。”地獄とは人間の内側にあるものなんだ”という事を。そしてこれもまさに最後の連行されるシーンで証明される。
それにしても、あまりにも美しい映像だった。個人的にはDVDでご覧になることをお薦めしたい。自分の幼い頃の”山と森と川と虫”の記憶がそのまま映像に出力されたかの様な、そんな美しさと懐かしさであった。まるでデジャヴ。 ・・こんな冷静に書いているようだけれど、本当は相当心を打たれてしまっている。ラストを思い出すだけで辛く切なく悲しく涙が出る。また素晴らしい映画に出会えて嬉しい。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (13 人) | [*] [*] [*] [*] [*] [*] [*] [*] [*] [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。