[コメント] モンスターズ・インク(2001/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
■子どもたちの反応やいかに
いつものように、両側に子どもを座らせて鑑賞。予想外にも彼らはじっくり見入ってしまった。『シュレック』の時とちょっと違う。『バグズ・ライフ』『トイ・ストーリー』はビデオだったけど、この時はいちいち反応してたのでこれまた全然違う。笑いどころでもほとんど笑わない。ドア工場のシーンでやっと表情が動き出し、ブーとの別れのシーンでは感情が揺さぶられたようで、私の顔を覗き込んだ。
子どもたちの評価はよかったようだ。でも見終わったあと、「おもしろかった」と言ったが、次々にモンスターの話が飛び出してはこない。モンスター遊びも始まらない。なぜだろうか?
■「目線」が違うんじゃないか
『バグズ・ライフ』は確かに子どもが暮らす世界、大人(私)より子ども(わが家の場合)の方が詳しくて馴染んでいる世界が描かれていた。虫の目線は子どもの目線に限りなく近かった。『トイ・ストーリー』も同様、いやそれ以上かも。おもちゃの目線は子どもたちの目線と言ってもよかった。わが家の子どもたちもすんなりその世界に浸り、この2作品には、ほとんど説明も必要なかった。逆に子どもに教えられた。子どもたちはいっぱいいろんなこと発見して楽しんでいた。『トイ・ストーリー2』では、大人の感覚、知識がたくさん必要になり、子どもたちには理解できないことが随分増えた。大人の郷愁を誘う演出が多くて、子どもに説明するのに少し困った。でも物理的にはやっぱり子どもの目線に近いし、前作を見た知識が手助けしてくれた。
『モンスターズ・インク』は、強いて言えばモンスターの目線なのかもしれないが、それは結局一般的な、第3者的な視点に立って観ているのと変わりない。「モンスターの特別な視点」は見いだされていない。モンスターを人間くさく描いているからか、大人の目線と言ってもいい。(でもそれは、とっても優しい大人の目線だ。)ただ、そういう意味ではこれまでのような新鮮みには欠けていたし、“虫やおもちゃ”の目線から“子ども”を飛び越えて“大人”の目線に行っちゃったという印象だ。そういうことからだろうか?子どもたちが映画の世界に入り込むのに時間がかかったし、モンスターが彼らの世界に直接入り込んではくれなかったようだ。
それでも大人の優しい気持ちは伝わってきたし、大人感覚の遊び心が満ち溢れていた。子どもたちも楽しんだ。キャラクターの楽しさ、CG技術、映像の質、ストーリーのおもしろさ、きめ細かな配慮、どれをとっても非常に高いレベルで、大人も子どもも楽しめる作品に仕上がっている。全体を包み込んでいる優しくあたたかい心も評価したい。
しかし、“バグズ”から“モンスター”に移るにつれて、「大人が楽しめる要素」が増えていく一方で、「子どもの感性に直接触れる部分」が減っていっているように思う。それが悪いというわけではないけれど、何となく私の気持ちは“バグズ”の方に傾いてしまうのだ。PIXERには、ぜひ、今の技術力を最大限に発揮して、子どもの目線に戻した作品をつくって欲しい。新しいものに挑戦することだけがよい映画ではないと思うのだ。
■最後にちょっと気になったところを2つ
雪男の家で、マイクをおいて、サリーが一人で出て行くシーンは、子どもたちも大変気になったようだ。『シュレック』でもそうだったが、いつもそばにいる本当の親友を大事にすることに、子どもたちも非常にだわっているようだ。我が子ながら、なんだかとてもうれしかった。ただ、こういうシーンが子どもをターゲットにした作品でよく出てくるのが気になる。
また、みなさんも書いているとおり、エンドロールのNG特集はいただけない。子どもたちは全然わからなかったようで、あとで説明してもピンとこなかった。小さな子どもにとっては、ちょっと混乱させられただけだ。感動させて終わってもらった方がよかったように思う。
※帰り道で、近くの映画館が壊されて空き地になっていた。これでワーナー・マイカルを除いた全ての映画館が、私の街からなくなってしまった。小学生の時からの思い出がいっぱい詰まった場所が形もなくなっていくのはどうしようもなく寂しい。でも、子どもたちにはワーナー・マイカルが思い出の場所になるのだろう。今日もその積み重ねの一つだったんだと思うと、少し気分を取り直せた。
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