コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 鬼が来た!(2000/中国)

思想信条を問わず、老若男女に関わりなく、できるだけ多くの日本人に観てほしい。納得できる・できない、共感できる・できないは別の話だ。ただ俺は日本人として★5をつけるぜ。[新宿武蔵野館4]
Yasu

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







こと日本と中国に関する限り、“戦後”はまだ終わっていない。この映画からはそんなことを考えさせられる。

日中国交回復後も「南京大虐殺はなかった」「いやあった」と不毛な論議を繰り返してきた挙げ句、近年の「新しい歴史教科書をつくる会」の騒動にまで発展してしまったのも記憶に新しい、日本と中国の歴史認識のズレ。

どちらが正しいかということはこの際問題ではない。いや、当然お互い自分が正しいだろうと思っているだろうし、双方の国民一人一人にも考えはあるだろう。もちろん、自分にもこの件について意見はある。ただ、それをこの場で言うつもりはない。

大事なのは、チアン・ウェンが、中国人・日本人の双方の立場を尊重し、お互いに歩み寄ったとも言えるような視点で本作を製作したという点なのだ(にもかかわらず、日本の右翼からはバッシングされ、中国政府からも睨まれてしまい、結局どちらにも完全に受け入れられない結果になったのは残念である)。

では、日本人の立場を尊重したというのは、どういうことか。

それは、ラスト近く、チアン・ウェン演じるマーが日本軍の収容所に乗り込み、斧で日本兵をぶった斬って回るシーンに表れていると思う。あれは単に村を焼き払われたためだけの怒りではなかったはずだ。事実、あの終戦直前の惨劇までは、中国人と日本人の関係は(被支配者と支配者というつながりではあっても)それなりに良かったのだから。

言ってみれば、日本軍の下でそれなりに平和に過ごしていた彼らが、日本軍の軍人精神だか何だか、彼らには理解できない論理によって、その暮らしがメチャクチャにされてしまったがための驚き・戸惑い・怒り、それらが混ざりあった複雑な感情が、彼をあの行動に走らせたのだと感じた。

マーにしてみれば、信頼していたはずの日本人に裏切られたという思いが心の中にあったに違いない。「あの時まではお互い仲良くできていたじゃないか! なぜなんだ! なぜあんなことになったんだ!」彼は内心、そう言いたかったのではあるまいか。

そんなマーに向かって「降伏した日本人をわざわざ痛めつけるのはポツダム宣言の精神にもとる」と言い放つ国民党軍の将校。この言葉は日本人、また日本という国に対する、当時の(そして現在の)中国人の建前をよく言い表わしている。しかし、物事が建前だけで成り立つはずはなく、多かれ少なかれ、中国人の心の中にはマーの行動を支持するかのような本音の部分が、現在でも確実にくすぶっているはずなのだ。

我々(中国人と日本人)がどこでボタンを掛け違ったか、この映画ははっきり我々に提示している。そして、それを学ぶか無視するかの選択は、我々次第なのである。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (20 人)NAO[*] Santa Monica[*] ババロアミルク[*] muffler&silencer[消音装置] 死ぬまでシネマ[*] はしぼそがらす[*] peaceful*evening[*] RED DANCER[*] m[*] ろびんますく[*] マリー あき♪[*] sawa:38[*] マッツァ[*] プロキオン14 水那岐[*] スパルタのキツネ[*] ジョー・チップ 緑雨[*] 町田[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。