[コメント] ターミネーター3(2003/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
前作から10年ぶりの続編で、見終わった直後は、「いくらなんでもそれはないだろう」という結末に思えた。ただ冷静に考えれば、「1」は核戦争に向かう結末だったから、シリーズの方向性みたいなものをひっくり返したことにはならないのだろう。
目玉の一つとなった女ターミネーターだが、今回も表情をほとんど変えないが、微妙にふてぶてしさを表していてよかった。それに何より、あのたくましさ、凛々しさはよい。
そして意外だが、今回は、本格SFとしてみれば、なかなかに考えさせるところが多い。
まず「スカイネット」の正体について、確かにこのシリーズが初登場した1984年やその続編公開の1991年当時は、「スカイネット」という名のコンピューター=「機械」が、そう俗に言う「スーパーコンピューター」みたいなのが、どこか奥深い所にあって、それがそこから様々な指示を出している、というイメージがあった。
しかし今回はインターネットとPCの普及を背景に、ずばり「スカイネット」とはソフトウェアであり、それ故にどこかにある特定のコンピューターにとらわれない存在、プログラムだとしたこと。こう考えるならば、もしそういうものが発生すれば、PCの端末、もっといえば、FDまたはCDの一枚でもあれば、存続させることができ、それを打ち破ることは限りなく不可能のようにも思えるし、今回の結末も納得できるものである。
それともう一つ、「スカイネット」誕生にいたるきっかけは、突如現われて、軍事関係をはじめ通信関係などに悪影響をもたらしたコンピューター・ウィルスになっている。そして(まあ当然といえば当然なのだが)このウィルスの登場は、T−Xの登場と機を一にしているし、T−Xはまず最初に携帯電話から、ちょっとすごい方法でネットに接続している。そしてT−Xの能力の一つに機械を操作できる、というのがあるとすれば、「このウィルスをばら撒いたのはひょっとしてT−Xなのでは?」という想像も成り立つ。それに空軍基地でT−Xに操られて人間を襲う殺人マシーンには、「T−1」という型式番号が付けられており、「おお、これがT−850から続くシリーズの初代か」と示唆しているようで、ついニヤリとさせる。
ただ、もしそうだとしても、あまり深く込み入るとタイム・パラドックスみたいなややこしい話にもなるのだが、そういう想像をかきたてて、「あれっ」と思わせるというのは、この作品がSFとして成功している証でもある。
だがしかし、今回のターミネーターたちは、あまりにも根性がなく歴代最弱といえるものである。何よりも、己の身体で闘うという点がとてつもなく弱い。陶器でできた便器が砕け散っても、そうすごいとは思えないし、前2作の、やったと思っても、倒したと思っても、まるでダルマのように必ず立ち上がってくる不屈さに比べると、あまりにあっさりとした最後であった。あんまり淡白だと、さすがのシュワちゃんも年なのかと、なんだか悲しい現実に引き戻されてすっかり興ざめである。
T−Xもあまりにあっけないじゃないか。初代のターミネーターは、本当にすごかったぞ。もっと気合入れてほしいところだ。
だけど、ところどころに、サングラスにこだわるシュワちゃんとか、トイレで一瞬、鏡に目をやるT−Xなど、前2作に対するオーマジュは感じられて、その辺はうれしい。
それと最後に、どうしても気になったことが一つ。今回、未来世界でジョン・コナー率いる人類抵抗軍が、ボロボロになったとはいえ、星条旗を掲げていた。これだけは、前2作と比べてもはっきりとした、製作者のスタンスの違いが、そしてそれをもたらしたアメリカ社会の現実が垣間見えた。やはり、前作からの10年余の時は、長かったのだなあと、しみじみ感じさせた。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (23 人) | [*] [*] [*] [*] [*] [*] [*] [*] [*] [*] [*] [*] [*] [*] [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。