[コメント] たそがれ清兵衛(2002/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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室内でのチャンバラというのは、「水戸黄門」をはじめとするテレビ時代劇で“偽物”を見慣れているから感じないかもしれないが、実はあまりない。 すぐに外に飛び出してしまうか、やっても襖から刃が突き出てくる程度で、室内という「狭い空間」を感じさせる殺陣はほとんど記憶に無い。
私が記憶しているのは、大黒柱を背に次々と切り倒す勝新の『座頭市』、何人斬りだかやって役所広司の腕がつったという市川崑の『どら平太』ぐらいである。ところが今回は、お屋敷などではなく、もっと天井の低い「民家」なのだ。
小太刀で闘う清兵衛と対峙する一刀流の名手である敵は、ほんの一瞬、チラと天井に目をやる。天井の高さを計っているのだ。上段からは斬り込めないと判断した敵は、突き、あるいは横や下から斬り上げる、あるいは肩に背負った位置からそのままコンパクトに斬り込むといった攻めをするのだ。冷静なうちは・・・。
何しろ雨戸で閉め切った室内の暗さがいい。バーンと雨戸が倒れるとハッとするほど美しい日差しと咲きほこった花。上手い上手すぎる。あれで露出過多で飛ばないんだから、ただ単に暗い部屋なのではなく、きちんと地明かりを当て緻密に計算された照明設計がされているのだろう。
元々しっかりしたドラマの上に、細部もキチンと描けている。そうだよなあ、無精髭(ぶしょうひげ)が伸びてるんだから、月代(さかやき)だって伸びるよなあ。あのカツラは特注だそうだ。
いい映画だ。思わず泣いた。泣いたぞ。結局、ドロくさい人情噺に泣かされてるんじゃねーか、チキショー。
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