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ジェリーさんのコメント: 点数順

★3今夜、ロマンス劇場で(2018/日)映画世界から飛び出した精霊と映画青年の恋愛を描いた幻想譚。銀幕の中の人物に恋したことのある映画フリークは、その経験を媒介にしてこの奇抜な展開と初々しい恋の顛末に夢中になり、ときめきと切なさで胸いっぱいになるだろう。映画愛を讃える映画でもある。[投票]
★3マチネの終わりに(2019/日)フィクションらしいフィクション。主役二人がぶち当たる心理的風雨の激しさが見どころ。『君の名は』というお手本を思い出す。中年の人生過渡期における自我再構築プロセスは一筋縄でゆかない。優等生的だが潔くここで終わらせたのは正解。ロケ地に関係なく光のトーンがそろっていて立派。[投票]
★3Tメン(1947/米)潜入捜査ものならではの緊張高いシチュエーションが最後まで続く。監督の作風のせいか、悪者のキャラの立て方が時代よりはるか前を進んでおり、ニューシネマ時代以降のテイストがある。タフな状況にしり込みしないデニス・オキーフアルフレッド・ライダーも、警察官としてのリアルさがある。[投票]
★3三度目の殺人(2017/日)静謐で粘液質な波動。ユーモアと、映画に最も期待されるカタルシスさえ削ぎ落とされて作られたミニマルな作品。正体を表さない登場人物の数が、映画の常識を超えている。彼らの交錯と不信と共鳴の有様を観客は見せつけられる。我々の混乱が臨界点に達し異様な色に発火する。焼き上がりの出来を決めるのは一人一人の観客である。衒い過ぎ。[投票]
★3青い戦慄(1946/米)退役軍人の戦傷という暗い影がストーリー進行に落ちかかり、ノワール味を齎す。雨、夜が背景に多いのはハードボイルドの定法。ソフト帽とコートの男たちの輪郭が美しい。しかしそれゆえに時おり挟まれる朝のシーンが一際鮮烈になる。最大の魅力はセリフがピリリと辛口なこと。何度でも味わいたくなる。ニクい映画だ。[投票]
★3糸(2020/日)王道のストーリーテリング。二人の人生が、年単位の高低のうねりをもって描写される。人が偶発時の中に機会の芽を見出しては次のステージにつなげていくという生き方の普遍的様相が、オーソドックスな演出により見事にフィルムに定着された。[投票]
★3拳銃貸します(1942/米)冒頭、やせ猫と男をだぶらせる演出はうまい。アラン・ラッドの感情を表さない目が怖い。人を信じなかった男が、女に少しだけ心を許す。ここにノワールの核心である哀切感が生まれる。安宿、列車、ガス工場、駅、黒幕のアジトと舞台転換は実にテンポよく、犯罪映画らしい影の演出もよい。[投票]
★3進め竜騎兵(1936/米)エロール・フリンオリヴィア・デ・ハヴィランドの黄金コンビ作品。登場する馬の頭数は今まで見た映画の中では最高だ。最後の突撃シーンは壮絶を極めるが、話の筋は決してお約束ではなく哀切な短調の余韻が残る。ドナルド・クリスプが実によい。[投票]
★3雨(1932/米)罪深い俗人がにわかに改悛する。それを支えるのが聖職者。この一対が男と女であったときに起こることを夜の闇の中の台詞のやり取りで見せる。音が効果的だ。セントルイスブルースのSP盤、激しい雨音、南洋の土俗的なドラムの響き。あるある話だが、状況設定のうまさに呻ってしまう。[投票]
★3ガラスの鍵(1942/米)結構入り組んだ人物関係だが、説明もそこそこに、まるでビデオの早回しのようにプロットが進む。これがハードボイルドの賞味ポイントなのでまったく不満はない。俳優の持ち味を生かすのが監督の見せ所でこれも悪くない。しかし今になってみるとアラン・ラッドは生理的に無理なニヤケ顔だと気づいた。[投票]
★3ココナッツ(1929/米)兄弟の数々の驚異的な芸は、最長1リール(10分)あればよい。モンタージュもカット割りも邪魔で、観客は瞬きを惜しんで目と耳を凝らす必要がある。つまり彼らを最高度に鑑賞するのに映画の誇る特性は有効ではない。この映画も、ボードビル劇場の見世物の連続のような趣きとなる。画面は立体性を失う。[投票]
★3蛇の穴(1948/米)精神病院というシステムの告発映画というにはエンディングが緩すぎ、病んだ人たちの生活を描く社会啓蒙映画というには意地が悪すぎる。映画の立ち位置には疑問符が付くが、オリヴィア・デ・ハヴィランドが振る舞いをコントロールしきれない患者として芯をとらえた演技を見せる。[投票]
★3黒騎士(1952/米)ユダヤ教の異教性/ノルマンとサクソンの対立感情など中世英国の分からなさはあるが、きびきびした展開で見せる。高低感を生かした城の戦いが凝っている。火の演出も豪快。さらにラストの強者同士の戦いには、他作品にはない古式が漂う。それにしても二人の名花の美しいことよ。[投票]
★3君の膵臓をたべたい(2017/日)若い二人の主役の存在や振る舞いのもたらす透明な抒情感で一点突破を狙った感あり。一応の成功と言える。さらに12年後から描き始めることで、時制の中心が映画の現在から映画の過去に移行し、叙述を一層甘美にできた。しかし、追慕の念の持続や人物の一貫性というやっかいな課題が浮上し、そこがうまく処理されたとは言えない。[投票]
★3薔薇合戦(1950/日)成瀬巳喜男の女性映画は、少しも女性を持ち上げない。お人好しで思慮浅い人間を的確に造形する。それでも、性欲や物欲で女性にもたれかかってくる男たちよりもずっとまなざしは優しい。ここでは若山セツ子がよい。いつもの庶民派の味を消して山の手のお嬢様をうまく演じている。[投票]
★3静かについて来い(1949/米)典型的な警察捜査がきびきびと描かれる。描写の簡潔さは今の映画にない味で好ましい。ただ、主役二人がともに弱く、むしろ脇役の味濃さで楽しめる。ラスト、巨大な機械の積載された高層ビルのアクションは簡潔でスリルに満ちる。人形の幻想が必要だったか疑問。 [投票]
★3底流(1946/米)前半は明るく寛闊に進むが、後半暗くもたれてくる。ロバート・テイラー扮する主人公の造形が手に余った。対する女性主人公のキャサリン・ヘップバーンの知的な美しさの造形はすばらしい。撮影・美術ともに戦前MGMの実力を示して申し分なし。[投票]
★3テレグラフ・ヒルの家(1951/米)波乱万丈の変転の結果ようやくありついた安寧な暮らしに待っていたものが実に怖い。舞台となる家が高台にある。これがストーリー的にも風景的にも抜群の効果をもたらす。ひとつの餌を取り合う複数の蟻たちという例えは言い過ぎかもしれないが、その切迫感がノワールの香りを醸す。[投票]
★3ゴジラ キング・オブ・モンスターズ(2019/米)雑味、エグミは多々あるが、まずは空想生物をここまで生体っぽく見せた工夫には拍手をしたい。前作と違い最初から力みかえった演出に難があるが、特撮映像としての凄みは立派なものだ。ただ人物については評価の埒外であることは付言しておきます。メッセージ性を読む作品でもない。[投票]
★3マルタの鷹(1931/米)3回の映画化の中では最も原作に近い。とはいうもののやはりヒューストン作品が上。出演者の重厚感が違う。冒頭いきなりシルエットでキスシーンが描かれている。にやけてチャラいサム・スペード登場の名場面だ。進行はきびきびして好ましい。[投票]