けにろんさんのコメント: 更新順
| 恐怖の報酬(1952/仏) | 何度か繰り返されるサスペンスの山場はクローズアップの力感が漲り弩級とは言えるが、ドラマトゥルギーの欠如が決定的。食い詰め者達の脱出願望に更なる切実さが欲しかった。要はハートに沁みてこないのだ。 | [投票(3)] | |
| 丹下左膳餘話 百萬両の壷(1935/日) | 大河内の殺陣に潜む狂気な殺気と喜代三の骨身から滲む玄人臭。「日々平安」なプロットは本物イズムに担保され瞬時も緊張は途切れない。パロディに臨んで諧謔の中に鋭利を差し込む山中イズムの後世への波及。マスターピースとはこういうのを言う。 | [投票(3)] | |
| スネーク・フライト(2006/米) | 密室に蛇と閉じこめられるということだけで完結し切っている点で清々しいまでに一本気な程度の低さと言いたいところだが、矢張り一本気すぎで芸もくそもない。笑いもお色気も今一の弾け度合いの中、終盤のヤケッパチが辛うじておもろい…かも。 | [投票(1)] | |
| ３−４Ｘ１０月(1990/日) | 平素がどうであれ男達が有する内に秘めた怖さの突発的表出に対する既視感を繰り返しクローズアップ。わけてもたけし・渡嘉敷コンビの個人史に基づくリアリティが傑出してる。シュールな展開も脳内組成でない肌感覚。北野最高作。 | [投票(2)] | |
| 愛の予感(2007/日) | シネマヴェリテ的手法に於いてカサヴェテスの豊穣に、反復のエクリチュールに於いてカウリスマキの巧緻には及ばない。がともかく、愛の萌芽に向けての全篇を牽引するサスペンスフルな緊張は傑出している。あとロケ選定も完璧だった。 | [投票(1)] | |
| ザ・フォッグ(1979/米) | グロ度が低くムード歌謡のように情緒に訴求しようとしたが、余りにムードのみで他には何のなかった…というのは後のカーペンターを見れば意図したとも思えず単に金が無かっただけなのだろうと思われ侘びしい。 | [投票(1)] | |
| アポカリプト(2006/米) | ギブソンが偏執的なのは知っていたが、ミクロに凝結せずに良い意味で拡散し、中盤はコッポラのベトナムの帝国を越えてフェリーニの古代ローマに迫るかとさえ思われた。どうなるのかの終盤も意外な単線構造が凛々しくさえある。侮れない。 | [投票(1)] | |
| わが谷は緑なりき(1941/米) | 幾何学的計算に裏付けられたかの如きオープンセット美や紫檀の陰影を有した白黒撮影があれば充分とも言えるが、多くの登場人物が織りなしノスタルジーに収斂される編年記としては矢張りどうしても短い。クリスプの親爺も弱かった。 | [投票(2)] | |
| トリコロール／青の愛(1993/仏) | 閉塞された心の解放までの短調な物語を、『ベロニカ』の長焦点レンズ使いを更に先鋭化させたイジャク撮影が青の色使いも鋭角的に高濃度に凝縮させていく。ショットショットが奏でる訴求力は瞬時の弛緩も無い。キェシロフシキの最高到達点。 | [投票(2)] | |
| プラネット・テラー ｉｎ グラインドハウス(2007/米) | 腐った牛乳がやがてヨーグルトになる様に不快な下司も半端を通り越して一周すると爽快になる。人体が砕けて飛び散る様を繰り返し見せられオモロイなあ。賢い人がアホなフリしてるとしても。『デス・プルーフ』とは本当に良いマッチング。 | [投票(2)] | |
| 恋人よ帰れ！わが胸に(1966/米) | 訴訟を巡るドタバタもシュールなパロディを織り交ぜ冴えてはいるが、女房に逃げられたジャック・レモンの独壇場とも言える切ないまでの哀感と侘びしさ。マッソーとのやりとりは巷間言われる凸凹コンビではなく高度なＳＭショウめいている。 | [投票(1)] | |
| しのび逢い(1954/仏＝英) | どうにもピリっとしない女こまし野郎の自慢話で、老獪な戦前派クレールあたりならエスプリで流すところがクレマンでは半端なクソ真面目で物語相性悪い。なのに、モリス撮影の自然主義的屋外シーンがアンビバレンツな魅力を漲らせるので困るのだ。 | [投票(1)] | |
| ぼくの伯父さんの休暇(1952/仏) | このユローという受動的キャラクターが少なからずイラつく。チャップリンの模倣もあからさまでオリジナリティがない上に攻撃性に転化するまでもいかない弛緩ギャグは未だ幾何学構図の冷徹を獲得していない。バカンス風景の郷愁感だけが救い。 | [投票(3)] | |
| 転々(2007/日) | 成る程コンセプトはわからんでもない。俺も散歩は嫌いじゃないし追いつめられた男の今生のセンチ旅は解る。が、若者には迎合して欲しくもないし、疑似家庭に涙なんぞ絶対に流して欲しくない。ちゃうやろと思う。ギャグは５本に４本がこっ恥ずかしく笑えない。 | [投票(3)] | |
| タロットカード殺人事件(2006/英＝米) | ええ年こいた爺さんが若いおなごと如何様に接したいか、又接して欲しいかという理想郷のような世界が延々と繰り広げられて陶然としてしまう。俺はウディほどの年ではないが現役であり続けたいものだ。『殺人狂時代』への垣間見えるリスペクトも好感。 | [投票(3)] | |
| がんばっていきまっしょい(1998/日) | 竹中直人不在が象徴する周防的ギミック偏重の邦画潮流からの決別と、芸が無いとも言える典型スポ根にも拘わらず全くベタじゃないという奇跡の混在。その奇跡の結露としての澄み渡ったような透明感が良い。調和的なノスタルジアだとしてもだ。 | [投票(2)] | |
| 修羅雪姫(1973/日) | 即席培養された「怨み」は過剰なまでの激烈さで消化されなければ矮小化する一方だから仕方ないのだろう。昭和の暗部の残酷見世物小屋の如き「ブッタ斬り」ショーが一種マゾヒスティックな悲哀をもたらすのが唯一の見所。 | [投票(2)] | |
| ブリット(1968/米) | 寡黙すぎるマックイーンからは怒りや執念よりもナルシズムが匂い立ってかなわん気がするし、残念ながらカーチェイスは風化してしまっている。しかし、フレイカー撮影の鋭角的なショットの連続はスタティックな怜悧さを醸し出してやまない。クールだ。 | [投票(2)] | |
| クローズ ＺＥＲＯ(2007/日) | 親爺の座を取ったるとか息巻いてる割にメソついたりヘタレな先輩に頼ってみたりで、主人公に強靱さが無く、対する芹沢も太めでカリスマが無い。途中からどうでもよくなる覇権争いだが仲間の手術との青春カットバックは別の意味で狂気の沙汰だろう。寒すぎる。 | [投票(3)] | |
| 雨月物語(1953/日) | 田中よりは案外に水戸光子が切ないのだが、やはり真に圧倒的なのは京マチ子と宮川一夫であり、両者が３年前の『羅生門』とリンクする形で戦前戦後の巨匠を同期させたことに映画史上の因縁を思わずにいられない。奇跡と思う。 | [投票(4)] |