ヴィットリオ・ストラーロの映画ファンのコメント
けにろんのコメント |
ディック・トレイシー(1990/米) | アメリカンパルプコミックの6原色で構成されたスタイリッシュなマット技術の書き割り世界に適応するメイクを凝らせたオールスターズは粋を凝らしており、そこに真逆ノーブルな主人公を配置するというコンセプトは完璧なのだが、如何せん話が全然面白くない。 | [投票] | |
ラストタンゴ・イン・パリ(1972/伊=仏) | 欧州の停滞がもたらす退廃と異邦人としての孤絶がシンクロし男は落ちていく。内省的展開だがストラーロのクレーンワークと中距離レンズが相当にドラマチックで痺れる。ブランドの朽ち具合も良。終盤のタンゴ競技会のシーンは陶然とする素晴らしさだ。 | [投票(2)] | |
暗殺の森(1970/伊=仏=独) | トラウマから逃げるためにファシズムに傾倒し命ぜられるままに暗殺に手を染める。そういう主人公の受け身人生が感情を排した観察眼で取り上げられるのだが、一方で耽美的な映像やデカダンな意匠にここぞとばかりに傾注する。表層的で両者は相互に浸食しない。 | [投票(1)] | |
ルナ(1979/伊) | 親と子の不寛容がもたらす絆の断絶を月は黙然と見おろすだけ。そういう諦観の果ての悟りは冷たい光に包み込まれる。採光を操るストラーロの撮影が圧倒的。だが、オペラにせよ近親相姦にせよクレイバーグと親和性がなく無理筋。完全なミスキャストだ。 | [投票] | |
1900年(1976/独=仏=伊) | デ・ニーロ&ドパルデューを立てても主人公2人の役回りが受け身過ぎランカスター&ヘイドンが舞台を去ってから構造の脆弱さが露呈する。ベルトルッチの本質はコミュニズム勃興の裏でファシズムの走狗となった個に否応なく感応するから。 | [投票] | |
地獄の黙示録(1979/米) | 地獄巡りの主人公が見聞する、恐怖がドラッグを蔓延させ抑圧された性欲が暴力衝動を喚起し意義喪失が殺戮の意味を見失わせる様は圧倒的画力を持つ。しかし、狂言回しが、何時しか侵食され変容するという形而上的な物語を語り尽くせたとは思えない。 | [投票(1)] | |
暗殺のオペラ(1970/伊) | サスペンスフルに謎が解明されるわけでもないが、ストラーロによる緩やかな移動と匂い立つ緑萌えるイタリアの田舎町の環境描写が、じわじわ絡め取られるかのような白昼の夢幻とでも言うべき雰囲気を醸し出している。そして、ラストが迷宮化を決定付ける。 | [投票(1)] | |
シェルタリング・スカイ(1990/英) | 愛の儚い残滓を観念で希求しても、結局その不在を確認する道行でしかない。相手の死により終焉するどころか、最果ての砂漠の深遠に埋没し、その先の行くところまで行く。この感覚が堪らない。『ラストタンゴ・イン・パリ』と並ぶベルトルッチ的実存主義。 | [投票(3)] | |
ラストエンペラー(1987/英=中国=伊) | ベルトルッチが全てを手中に入れた上で構築したとは思えない。妖怪支配の退廃異世界が投げ込まれた幼児に形成を及ぼす過程には納得するが、後半の重層的史観には自己範疇のエッセンスしか窺えず薄っぺらい。論外の坂本は元よりローンも買えない。 | [投票] | |
カフェ・ソサエティ(2016/米) | 一種の批評精神に独特の諧謔嗜好が加わるアレン掌中の語りは影を潜めメロウな情に流れる。他者を語るにシニカルな奴の自己愛は無様。初期『マンハッタン』と同質でも技法のエッジは消失。ストラーロとの初タッグもデジタルの平板さだけが浮き上がる。 | [投票(1)] | |
エクソシスト・ビギニング(2004/米) | 何もかも整合性をつけようとし過ぎるから、わけの解らない恐ろしさが薄まるのだ。悪魔バズズの最大の武器は人の心の弱みにつけ込む巧みな対話というオリジナルコンセプトを踏襲してるのに部分的に今風ケレン描写を見せる演出が印象を散漫化した。 | [投票(1)] | |
レイニーデイ・イン・ニューヨーク(2019/米) | 業界人の身内ネタに振り回されハイにテンパる彼女と同じ街で濡れそぼつ雨のなか彷徨する年甲斐もないロマンティシズムの吐露。しかし、それは霰もないミニスカ天国へのスケベ心と同心円だった。本卦帰りの軽妙洒脱が十全でストラーロとの息も漸く合致。 | [投票(3)] | |
レッズ(1981/米) | リーン映画のようなロマンティシズムは希薄だが、2年をかけストラーロと行脚した実インタビューを起点とする意外な腰の据わり方やニコルソンやハックマン等ニューシネマ人脈の参画等ベイティプロデュース力が米映画の底力を引き出した。 | [投票(2)] | |
女と男の観覧車(2017/米) | ウィンスレットの荒びと倦怠は未だしも若造との情事がのめり込んだよに見えず余裕の遊び半分に見え後半の展開がしっくり来ない。一線を越えたかの如きラスト大芝居は空転する。悪魔チックな火遊びガキやトリッキーな照明。ピースは揃ったが噛み合わない。 | [投票(2)] | |
サン・セバスチャンへ、ようこそ(2020/スペイン=米=伊) | 今いち華に欠ける親爺の恋バナであるが、片やイソイソ片やヤキモキの狂騒はアレン映画として取り敢えず過不足ない。しかし、今更の映画愛としてシーンパロディ準えて取り上げられた作品群がホンマに今更で年寄りの繰り言。焼きが回ったとしか言えない。 | [投票] | |
ワン・フロム・ザ・ハート(1982/米) | さして起伏ない物語であるから行間を埋める機微こそ命の世界だろうに満艦飾のセットしか術ない。『黙示録』の反動に見えて根は同じで、そういうコッポラはいじらしい。これだけの熱量を費やし行き着いた感もてんで無い。主役2人の地味さもやってくれる。 | [投票] |