エルミタージュ幻想(2002/露=日=独) | ★3 ロシア・サンクトペテルブルグのエルミタージュ美術館の中を、キュスティーヌ伯爵(セルゲイ・ドレイデン)と名乗る人物が歩いている。それを画面の外から、映画監督の声(アレクサンドル・ソクーロフ)が追う。彼らが言葉を交わしながら歩くうち、過去と現在は入りまじり、かつてロマノフ王朝の宮殿であったエルミタージュで起こった数々の出来事を、2人は夢とも現実ともつかないままに体験する。エルミタージュというこの巨大な方舟の中で、ピョートル大帝やエカテリーナ2世、ニコライ2世など実在の人物、そして虚構の人物と共に繰り広げられる、ロシア史の幻想の旅。[96分/カラー/アメリカンヴィスタ] [more] (Yasu) | [投票(1)] |
弘高青春物語(1992/日) | ★5 キーワードは「旧官立弘前高等学校」、それのみ。清順も以前そこで学んだことがあるという同校の記録や同窓生たちの(熟成発酵された)思い出を、その頃の世相も交え奇想天外に甦らせたジャンル不問のビデオ作品。同窓会のために制作されたというややプライベートなものでもあるため、ある意味、清順ワールドの根幹となる素の部分も堪能できるかも。な、恋も友情もケンカもリビドーも怪談も戦争も革命もイデオロギーも芸術もつまった、当時の若者たちが見聞きし体験した青春の全てがある56分。 (tredair) | [投票(1)] |
アンドレイ・ルブリョフ(1967/露) | ★3 15世紀初頭のロシアで活躍したイコン(聖像画)画家、アンドレイ・ルブリョフの半生を二部構成で描いた作品。僧侶のアンドレイ(アナトーリ・ソロニーツィン)は修道院で学んだ絵画で身を立てようとしていた。しかし世間に出て、異民族の侵攻や疫病の流行、貴族の圧政に苦しむ民衆を目の当たりにした彼は、民衆への共感と自らの信仰との間で苦悩する。[182分/モノクロ/シネマスコープ] [more] (Yasu) | [投票(1)] |
漫☆画太郎SHOW ババアゾーン(他)(2004/日) | ★4 エロ本買蔵(矢部太郎)はエロ本も買えない気の小ささに悩んでいた。ボケた本屋の店主に泥棒と間違われ、またもエロ本を買い逃がしたある日、買蔵はとんでもない風貌のババア(根岸季衣)にとっ捕まり、なりゆきで「肝っ玉の大きくなる薬」を飲まされるのだが…(「ババアゾーン」) [more] (movableinferno) | [投票(4)] |
ひなぎく(1966/チェコスロバキア) | ★4 「幻の60年代、女のこ映画の決定版!ウソとバカ騒ぎとお気楽さだけの女のこ二人のハチャメチャ行状記。オシャレして、男だまして食べ放題...泣きまねして逃げちゃえ!」―パッケージより―
自由奔放な姉妹(かどうかも?)が繰り広げる無秩序で刺激的な<非日常的日常>。その世界は、青林檎、鍵、蝶の標本、ハサミ…メタファーにあふれ、実験的なカメラワークに効果音、斬新な色使い、ファッションとメイク、色ズレに光学処理、含蓄あるセリフの数々…同時代の映画作家、例えばゴダールの、先を行った女性監督ヒティロヴァの「踏みつぶされたサラダだけをかわいそうと思わない人々」に捧げられた、画期的な映画。当時の東欧では、彼女の作品は斬新すぎ、弾圧を受けて活動停止を余儀なくされた。ちなみに「ひなぎく」とはチェコの花言葉で「貞淑」...「なぜ、'愛する'という代わりに'卵'と言えないの?」 (muffler&silencer[消音装置]) | [投票(5)] |
ベニスに死す(1971/伊) | ★5 1911年の夏。ドイツの高名な作曲家アッシェンバッハ(ダーク・ボガード)は静養のためベニスを訪れる。滞在先のホテルにはポーランドの貴婦人(シルバーナ・マンガーノ)の一行が宿泊していた。アッシェンバッハは、貴婦人の子息タジオ(ビョルン・アンドレセン)のこの世のものとは思えない美しさに心を奪われる。苦悩しながらも、タジオ少年の美に魅せられてその姿を追い求めるアッシェンバッハ。だがベニスの街には疫病が忍び寄ってきていた。グスタフ・マーラーをモデルにしたとされるトーマス・マンの中編小説を映画化 2時間11分 1971年カンヌ映画祭25周年記念特別賞 [more] (ルッコラ) | [投票(7)] |
今宵限りは(1972/スイス) | ★5 「毎年5月16日、聖ネポムクの記念日に、召使たちのための宴会が開かれる。その日は夜中の12時まで、主人と召使いは立場を変えるのである」という字幕から始まる(特に物語はない)夢幻の1時間30分。日ごろの主従関係を逆転させ、貴族たちが召使いのために延々と宴会芸を見せるというただそれだけの話。けれどもそこにはシュミットならではのブラックユーモアや徹底した美意識もしっかりつまっていて、原題の「Heute Nacht oder nie」は邦題では「今宵かぎりは…」と曖昧にしてあるものの、「今宵こそは、さもなくば無」とも読めるのだそうです。リズムがかなり緩慢なので、体調や状況によっては熟睡できるでしょう。聖ネポムクは、場所によってはワインの神様でもあるとのこと。 (tredair) | [投票(2)] |
叫びとささやき(1972/スウェーデン) | ★5 忠告:この壮絶な命の「悲鳴と跪拝」に耐え得る精神力はおありですか? ―キン、キン、チン、キン…機械的な不協和音…スクリーンを支配するくすんだ朱色…やがてカメラは、すでに死神に憑かれたような、中年女性アグネスのやつれた蒼白の顔を映し出す。朝だ。彼女は目を覚ますと、かすれ濁った呼吸と共に涙を流し水を飲む。そして、おもむろに日記を開き、ペンを走らせる。「姉と妹が、わたしを見舞いに屋敷を訪ねてくれた…」と― [more] (muffler&silencer[消音装置]) | [投票(11)] |
ラ・パロマ(1974/スイス) | ★5 娼婦であり歌姫でもある(まるで『嘆きの天使』等でのマレーネ・ディートリッヒを思わせるキャラの)ラ・パロマと、彼女に惚れ込みプロポーズする(つまり例のニワトリ教授を思わせる)青年貴族イジドールの不思議な恋物語。バリバリのメロドラマではあるが、へんてこなカメラやあやしい演技、突然はじまるオペレッタなどデカダン風味の見どころ(つまり眠りどころでもある)がいっぱい。独特の、腐りかけの桃のような色香が全編を通し気だるく漂い、最後まで起きていられれば「映像の魔術師」ダニエル・シュミットを堪能。できるだろう1時間50分。眠れぬ夜にオススメします。 (tredair) | [投票(2)] |
黒猫・白猫(1998/独=仏=ユーゴスラビア) | ★5 ドナウ川のほとりに暮らす自称天才ギャンブラーのオヤジと純真でじいちゃん孝行なムスコを中心に、ギャング・マフィア・テキヤ・死人・アヒル・ブタ・ヤギ・切り株・ボットン式トイレたちが織りなす、愛とお金と犯罪と音楽と歌と踊り、そして笑いと勇気のぐるぐる絵巻。黒猫が画面を横切れば不吉のしるし、白猫が画面を横切れば幸せがやってくる。2匹揃えばナニが起こる!?・・・エミール・クストリッツァの引退宣言後第1作。主演数人を除き、出演者はほとんどが素人のロマ人(ジプシー)で、彼らは台詞を覚えられず、台本はあってないようなものだったという。とくに主役級のじじい二人は「台詞を覚えて、それを喋る」ことを理解しているかどうかも怪しく、絶対台詞を覚えない。キレた監督が「次に違うこと言ったら殺す!」と叫んだところ、じいさんたちは「わしも1カ月ぐらい前からそうして欲しいと思ってた」と返したとか。 (はしぼそがらす) | [投票(28)] |
UNCHAIN(2001/日) | ★4 「アンチェイン梶というボクサーがいた。リングネームの “アンチェイン” は、レイ・チャールズの『アンチェイン・マイ・ハート』からとった。 “心の鎖を解き放て!” まさにその歌のように梶は生きた。戦績、6敗1引き分け。たった1度も勝てなかった。」――どこにでもいる阿呆な男のとち狂った半生。その男と強い絆で結ばれ(てしまっ)た三人のボクサーと一人の女の「ココニイルコト」、「ココニイタコト」。 (movableinferno) | [投票(2)] |
皆殺しの天使(1962/メキシコ) | ★5 エンリケ・ノビレと妻のルシアは、オペラ帰りの名士たち約20名を自宅の晩餐会へと招く。が、まるで何か悪い予兆でもあったかのように、彼らが屋敷に到着する頃には、執事のフリオを除くすべての使用人は逃げ出してしまっている…。それでも和やかに歓談し食事をとる一同。ところがその後、なぜか誰ひとり客間から出られなくなってしまい、また、外からも誰ひとり屋敷に入れなくなってしまう…。極限状態におかれた客たちの悲しくもありおかしくもある醜態や、外で大騒ぎする人々の様子をたのしむ不条理型パニックムービー。95分。「皆殺しの天使」というタイトルは聖書の黙示録に出てくるもので、もともとは友人が違う作品に使おうとしていたものをブニュエルが先にパクったそう。とは言え、きちんと使用許可を求める手紙を書き「聖書の言葉に使用権も何もあるかね。」という返事をもらったそうなのでどうぞご安心ください。 (tredair) | [投票(3)] |
自転車吐息(1990/日) | ★5 新聞配達をしながら浪人生活をする史郎と圭太。受験勉強よりも高校時代に撮りはじめた8ミリを完成することにご執心な史郎に対し、圭太は三浪というプレッシャーに押しつぶされそう。そんな彼らのもとに、今は東京で暮らす圭太の元恋人、京子がしばらく帰省するという噂が…。監督による主演はもちろん、家族まで総動員して撮りあげたといういかにもな(ややワンマンぎみ)自主映画。「俺」という旗を持って疾走する、マッチ一本の灯りで見渡せる93分の青春碑。「終わりだ。嘘ももうつくな。精算してくれ!君の青春を!」監督の意向ということで永らくビデオ化されていなかったが、気が変わったのか2001年にはDVD化までされたとのこと。89年度PFFグランプリ受賞のスカラシップ作。 (tredair) | [投票(3)] |
CUBE(1997/カナダ) | ★5 「どこなのココ」 「・・・知らない」 「何だこの空間は何で僕達はこんな所に居るの?」 「・・・さぁ」 「ん?みんな
何でココに居るのか分らないの?」 「うん。」 「とりあえず、そこにドアが有るから行ってみようよ!」 ・・・・・ 「げ!同じ様な部屋だよ!」 ===グイーン===シャキン!!! 「あ!!」 「あ!!!」 「トラップだ
!!!」 ・・・・・ 「危険だ!」 「こっちは大丈夫みたいだ!」 「何か法則が有るの!?」 「でも、また、同じ様な部屋だぜ!」 「先に進めば出口が有るわよ!」 「どうするの?どうやって出るの!?何で私がココに居るのよ〜!!」 (1/2(Nibunnnoiti) | [投票(8)] |
モンド(1996/仏) | ★5 ル・クレジオの「海を見たことがなかった少年〜モンドほか子供たちの物語」を映像化した作品。
南仏の小さな町に、ある日どこかから不思議な少年がやって来る。彼には家族も住む家もなく、けれどそのぶん自由を満喫し、やはり一般社会からはちょっとずつはみだした人々に受け入れられ町になじんでゆく…。
聖歌やアラブ音楽もこだまする、謎めいたファンタジー、80分。
実際のホームレスや綱渡り芸人が重要な(自分自身の)役を演じるこの映画では、主人公を演じる少年自身も、監督がメトロで見つけた強制送還すれすれのルーマニア系ロマだったとのこと。 (tredair) | [投票(3)] |
コーカサスの虜(1996/露=カザフスタン) | ★4 ロシア兵のワ−ニャ(セルゲイ・ボドロフJr.)とサーシャ(オルグ・メンシコフ)はチェチェンの戦場に送り込まれるが、アブドゥル・ムラットが二人を捕らえて、ロシアに捕まっている自分の息子と、捕虜交換するために、村に連れて行く。捕虜となった二人は、アブドゥルの娘ジーナや村人たちと次第に心を通わせるが、捕虜交換は思わぬ展開を見せる…。文豪トルストイの短編小説「コーカサスの捕虜」を、現代のチェチェン紛争に置き換えて描かれた入魂の感動作。アカデミー外国語映画賞候補。ワーニャを演じるのは、監督であるセルゲイ・ボドロフの実の息子。俳優を続ける気はなかったそうだが、この映画でロシア若手俳優の中でもほぼ一番の人気俳優に。 (ことは) | [投票(1)] |