★4 | お熱い夜をあなたに(1972/米=伊) | コメディの巨匠と讃える人は多いが、下世話で小芝居に通じるあくの効いた演出こそワイルダーの芸風だろう。知的なひねりや徹底したキャラ立ちといった表芸だけを見ずに、破廉恥や露骨を見たくてたまらない観客を意地悪に観察する覗き屋としてのワイルダーをこの作品で賞玩しよう。 | [投票(1)] |
★4 | バーバー(2001/米) | 無明の「黒」を怖がるごく一般的な観客が、終幕部の数分で、否定も逃げ場もない悟りのような「白」を畏怖するその瞬間、彼は映画芸術の深奥を垣間見ている。映像として語られたすすり泣きのような祈りを全身を耳にして聞き漏らさないようにしよう。 | [投票(2)] |
★1 | アンブレイカブル(2000/米) | 冒頭数分間の列車内シーンのキャメラの動きの素晴らしさに震えつつ、「じれてはならぬ、じれてはならぬ」と自らを戒めて見とおした。ビハインド・ザ・ビートを志向しながら1拍程度も遅れているリズム感の悪さに苦笑。豊穣の予感のみ満ち溢れた映画だった。 | [投票(1)] |
★5 | 理想の女〈ひと〉(2004/英=スペイン=伊=ルクセンブルク=米) | 小品ながら傑作。さまざまな仕掛けが満載されており、約90分の上映時間を身動きすら許さぬ高い呪縛度ですごすことができる。正直スカーレット・ヨハンソンは期待の地平線上の演技であるが、ヘレン・ハント は、従来の役柄から飛躍的に逸脱しており、凄みすら感じる 。 | [投票(2)] |
★2 | ハリー・ポッターと炎のゴブレット(2005/英=米) | レイフ・ファインズ 、ゲイリー・オールドマン 、アラン・リックマンら味のある名優たちをどうしてこうも無駄遣いするのか。とにかくテンポが悪く、ふくらみに欠ける。そして決定的なことに美しくない。監督と並んで撮影監督の罪も深い。 | [投票] |
★3 | 吸血鬼ドラキュラ(1958/英) | クリストファー・リー とピーター・カッシングが初めて起用された作品。各々が持ち味を活かしており完璧である。女優陣のB級っぽさが素敵。(私的には、多分これが生まれて初めて見た洋画ではないかと思う) | [投票] |
★2 | 座頭市喧嘩太鼓(1968/日) | 佐藤允 は何なのか、それにもまして西村晃は何だったのか。小悪党が次から次へと現れては消えるだけ。映画の骨格をどう作るかを脚本段階で考え抜いておいて欲しい。勝新太郎のユーモアも筋から浮き上がり空回り。 | [投票] |
★5 | 或る殺人(1959/米) | 映画を見る官能性を最高度に引き出してくれる傑作。法廷物の必須要件である会話の応酬が水際立ってスリリング。フィルムで描写された部分の更に向こうにいくつかの真実の可能性が奥深く息づいているところが見えてきて、『十二人の怒れる男』すらここまで及ばず。 | [投票(4)] |
★3 | フィニアンの虹(1968/米) | フレッド・アステアという戦前からの大スターに、監督含め若き世代がどうからむかが見所。御伽噺の要素が強く、うそ臭さにうそ臭さが重なっていく難はあるが、この当時既に廃れ行きつつあったこの老残のジャンルにしてはそれなりに新しさも示しえている。 | [投票(1)] |
★3 | M:i:III(2006/米) | 息もつかせないアクションシーンの間に、要領よく人間関係の機微が描きこんであり、まとまりよい印象を受ける。走るトム・クルーズ 、飛ぶトム・クルーズがすばらしいカッティングと特撮で魅力たっぷりに描かれ、ウエルメイドな娯楽快作と言える。 | [投票] |
★3 | 古都(1963/日) | 陶然とするような美しい絵の次に、唖然とするような興ざめな構図がつながっていることが多々見られる。美意識の持続が欠けている。岩下志麻の清楚さ・品のよさは十分だが、中村登の演出は岩下ふんする二役の関係を説得的に描けなかった。 | [投票] |
★2 | 楢山節考(1958/日) | 極低所得階層の家庭において今も決してありえないわけではない事象が、共同体のレベルでシステムとして存在することの恐怖。しかし文楽やオールセットなどのアンチリアルな意匠がこのテーマにあまり適せず、才走りすぎた作品となった。それでも田中絹代の演技は一級品。 | [投票(1)] |
★2 | ダ・ヴィンチ・コード(2006/米) | プロットを追いかけるのに悪戦苦闘した様子ばかりが伝わってきて、痛々しいことこの上ない。ヒロインが普通すぎる点に、この映画の中途半端さが象徴されている。劇中劇などを使って、血統伝説のファンタジックさを強調する方向に持っていくなどの工夫がほしかった。 | [投票(1)] |
★4 | コレヒドール戦記(1945/米) | ジョン・フォードが、自らの理想とする男たちを描くとき、それはすべて「静かなる男」なのである。本作品を見ていてもあまりスカッとはしないだろう。この映画は映画を見ることのカタルシスから意識的に決定的に離れていくことを目指しているのだ。 [review] | [投票] |
★4 | クリスチナ女王(1933/米) | 大口を開けて笑うガルボ。男装するガルボ。神話の帳の向こうで、観客を驚かし続ける監督と主演女優の愉快なたくらみを楽しめばよい。松明を持った群集のシーンや田舎の宿の寝室の陰影豊かな描写など、ため息つくしかない美しさに満ちた映像もまた、ガルボ神話を彩るものだ。 | [投票(1)] |
★3 | 遠い太鼓(1951/米) | 大砂塵ではなく大湿地帯が舞台となり、拳銃よりもナイフが生動するという異色さが魅力の西部劇。文明から遠く離れた土地におけるインディアンとの攻防が行き詰る演出の積み重ねで描かれ、見るものをあきさせない。豪快な作風で知られる監督ながら、ヒロインの演技指導など繊細この上ない。 | [投票] |
★3 | ヒトラー 最期の12日間(2004/独=伊=オーストリア) | ヒトラーに光を当てれば当てるほどくっきりしてくるのは、反駁を忘れた追随者たちのよわよわしい孤独の影だ。怪物が怖いのではなく、追随者の弱さこそ実は怖い。これが全体主義の本質だろう。地下室の入り組ませ方は、この映画のテーマに関わる表現の要。 | [投票(6)] |
★2 | ハーヴェイ・ガールズ(1946/米) | 生きるのに一生懸命なテンションの高い女性を演じ続けたジュディ・ガーランドにとって十八番の役柄だ。歌とダンスはいすれもすばらしいが、とりわけ、アカデミー主題歌賞に輝いた“On The Atchison,Topeka And The Santa Fe"が佳曲。ストーリーはミュージカル映画らしい滅茶苦茶ぶり。 | [投票] |
★2 | Mr.&Mrs.スミス(2005/米) | シチュエーションを面白く撮るか、アクションを面白く撮るか、二兎両方を狙ってしまったのが最大の敗因だ。コンピュータ特撮への依存が強くなった結果、映画は、省く・隠す・暗示するなどの先人の究めた奥深い技法群を失いつつあることを今更ながら痛感。 | [投票] |
★3 | かもめ食堂(2005/日) | 3人の日本人の女達だけが中心人物と言い切れない不思議さ。全登場人物が等しく存在感をたたえ、一瞬をぬって、我々の眼の前をよぎってゆく。その見せ方の無駄のなさを味わおう。キャメラが、狭い食堂の中を実にたくさんの画角で切り取ってくれる、この贅沢さも満喫すべし。 [review] | [投票(4)] |