水那岐さんのコメント: 更新順
大菩薩峠 竜神の巻(1960/日) | 仏道思想に貫かれた宿業の物語としての、『大菩薩峠』の輪郭が姿を現わし始めた。俗世の垢を嫌いつつ無用の血を流し続ける雷蔵。目の前に穴を開けた地獄に怯えつつ、雷蔵との逃避行に身も心も捧げゆく玉緒。彼らは一団となって救済の見えざる手なき迷妄の世界へと転げ落ちてゆく。凄絶な情炎は若き本郷、富士子らの手の届かないところまで燃え広がって止まない。 | [投票(1)] | |
悪名十八番(1968/日) | いかにもダレた演出でメリハリがない。勝と田宮のコンビで支えられているものの、全体に精彩に乏しい演技陣も残念。気を吐いているのは森光子くらいか。森一生はプログラムピクチュア作りでも三流どころに堕ちた、と暴露された一作。 | [投票] | |
ゲゲゲの鬼太郎(2007/日) | 子供向けに徹し、あえて往年の少年漫画的演出から逸脱しなかったのは正解。登場人物の総ての行動原理と、その倫理は小学生でも理解できる平明さであり、なおかつ親達は水木しげる的ユートピアに肩まで浸れる構造を成している。 [review] | [投票(3)] | |
大菩薩峠(1960/日) | 雷蔵がまるっきり狂四郎演技。いつ「音無しの構え」から「円月殺法」に転じるか冷や冷やした。個人的には過度のピカレスク・ロマンへの期待があったので、狂気に蝕まれたかのような机竜之介の殺人行が観たかったのだが、それは無理ってものでしょうね。山本富士子の存在で非人情の世界から少し救われる。 | [投票(1)] | |
多摩川少女戦争 girls are no good(2001/日) | ガチの女の闘いも、連帯も描けない甘ったれた監督が、こんなもの撮るんじゃない。『吉祥天女』の予習のつもりで及川中作品を観てみたが、これでは先が思いやられる。 | [投票] | |
東京タワー オカンとボクと、時々、オトン(2007/日) | イラストレーターという立ち位置におりながら普通の男と、限りない優しさをもって接してきた母親の愛情の交錯と、それを神の目から冷厳に見下ろす鉄塔の物語。しかし、物語は多くの純愛物語がぶつかる、本人に感情移入できなければ無意味、という大きな壁の前ではなす術もない。むしろ演技陣の至芸を楽しもう。 [review] | [投票(3)] | |
幸福のスイッチ(2006/日) | 上野樹里の憎まれっ子演技で、彼女も一皮剥けたと感ずる。もとより性格俳優の素養はあったのだから、立派に今後も「顔だけじゃない女」を演じてくれるだろう。そして、カッコ良くない沢田研二が、今になってやっと許せてきたような気がする。この物語の暖かい構造がそう見せてくれたのだろう。安田真奈、注目の作家である。 | [投票(3)] | |
眠狂四郎多情剣(1966/日) | カメラワークの無駄な衒い。素直にカメラを引けばいいものを固定してぶつ切りのまま引いたり、アオリや斜角度等等あちこちから撮ってはいるが、如何せん奇を衒う以外の何の効果も作品にもたらしてはいない。ストーリー的には珍しく青臭く怒る狂四郎が見られるのが興味深い。 | [投票] | |
天使の卵(2006/日) | 冨樫森のシスターコンプレックス・「ピュア」(というか夢精臭い)少年ものも、『ごめん』『鉄人28号』までは許したがいい加減イライラしてきた。あんたにはそれしかないんかい!? [review] | [投票(1)] | |
Coo 遠い海から来たクー(1993/日) | 思ったより高レベルのアニメ画面が楽しめる。だが、内容はファミリー向けとしてはきな臭すぎるのではないか。岡本喜八のシナリオも、どちらかといえばお父さん向けの内容である。原作を曲げても、クーと洋助のふれあいにもう少し時間を割いても良かったように思われる。 | [投票] | |
あかね空(2007/日) | 中谷美紀の町娘演技は思いのほか可愛らしかったのだが、いかんせん連れ合いの内野聖陽の軽い扱いに拍子抜け。永代橋の再現に手間をかけるより、もっと他にやるべきことはあろう。 [review] | [投票(1)] | |
バッテリー(2007/日) | 豪少年(山田健太)の屈託のない笑顔、寺の息子(米谷真一)の豊かな表情の変化が忘れられない。トゲを振りたてて青春を歩んできた巧(林遣都)も、彼らには笑顔を許すのも肯ける、きわめて自然な少年の姿がそこにはあった。 [review] | [投票(4)] | |
眠狂四郎 悪女狩り(1969/日) | エロ・グロの極みを通り越してシュールの世界へ。伊賀者は鳥に姿を変え能面の女を抱けと迫り来る。もはや雷蔵最終作にして時代劇すら突き抜けてしまった観あり。 | [投票] | |
地下鉄〈メトロ〉に乗って(2006/日) | 都合の良すぎる時間遡行は、ファンタジーとして見ても正視に堪えない。SF的設定を、身の程を知らない人がさも得意げに操ってみせると、こんな無残な作品が生まれるという好例。子供だまし以外の何物でもない。 [review] | [投票(2)] | |
檸檬のころ(2007/日) | 岩田監督はまだ新進気鋭であるだけに頭ごなしにはけなせないが、学校周辺以外の奥行きある風景が、ラスト近くまでほとんど写されていないのが妙に気になった。これは写したい被写体…俳優のことばかり考えて、背景のことを忘れている新人らしい失態だろう。 [review] | [投票] | |
WELTER ウェルター(1987/日) | 演出も脚本も稚拙の一語に尽きるが、半世紀前の少年漫画と思えば結構楽しめる。しかし、折角本物のボクサーを主人公に起用しておいて、極端すぎる八百長演技を強いるのは些か残酷に感じられた。 [review] | [投票] | |
シュガー&スパイス 風味絶佳(2006/日) | モノローグに頼りすぎる状況描写、「イカニモ」な名文句気取りのセリフ。それらが折角の美点を台無しにしてゆくのは、きわめてテレビドラマ的に過ぎるこの映画の性格を反映している。 [review] | [投票(2)] | |
リアル・フィクション(2000/韓国) | きわめてキム・ギドク作品の中ではストレートな作品である。「啓示」に導かれるように世間から迫害されてきた主人公は凶行を犯し続けるが、それが映画の中の出来事でしかないことをギドクは無慈悲に宣告する。 [review] | [投票(1)] | |
ワイルド・アニマル(1997/韓国) | ともすれば通俗的な、きわめて判りやすい作品の印象に戸惑わされる「愛国心」の発露のカタチ。だがそこに在るモノが分断国家の国民の偽らざる心底の核感情なのだ。ふたつの国の象徴たる男たちの戦いは痛く、苦しい。 [review] | [投票(2)] | |
絶対の愛(2006/韓国=日) | 流石のギドク監督も、母国の流行批判を主題に取り上げるまでに安易な態度では、魅力的かつ後世にも評価され得る作品は創れない。この監督の映画では初めて、最初から最後まで乗れなかった。 [review] | [投票] |