煽尼采さんのコメント: 点数順
ブレイブ ワン(2007/米=豪) | これもポスト9.11的映画。法と暴力という主題を充分に展開し得ているとは思えないが、ヒロインのDJという職業を活かした「音」の使い方など、幾つか演出的に光る所がある。だが、演技力とは別に、ジョディ・フォスターは適役だったのかという疑問も。 [review] | [投票] | |
めぐりあう時間たち(2002/米) | 「彼女は二つの人生を送っているの」と言われるヴァージニア(・ウルフ)。そのもう一つの生である小説(=虚構)の生が、読者の実人生と重なり合う。日常の所作の、差異を孕んだ反復による作劇術。“それでもパーティの時間(hour)はやって来る”。 [review] | [投票] | |
ストレンヂア 無皇刃譚(2007/日) | 血に飢えた映画。スピーディかつ景気よく飛び散る鮮血の連続に、トランス状態。切れ味の良さが光る。細かい人間的な演技描写も抜かりなく、背景美術は繊細、長瀬の淡々とした低い呟き声も耳に馴染む。筋はお約束的だが。 [review] | [投票] | |
トリノ、24時からの恋人たち(2004/伊) | バスター・キートンやチャールズ・チャップリン等のフィルムに自らを挿み込むような生活を送る、どこかアキ・カウリスマキ風の青年。衒学的なシネフィル(映画狂)の厭味さなど微塵もない、愛すべき素朴な映画。 [review] | [投票] | |
歌麿をめぐる五人の女(1946/日) | 溝口は、情念に突き動かされる女たちをただ見つめることに徹する映画監督としての自分の姿を、歌麿に投影していたのだろうか。劇中で歌麿は、女たちに「描かせてくれ」と迫ったり、絵師としての強情を張る場面以外は殆ど受動的な人物として描かれている。 [review] | [投票] | |
夜の女たち(1948/日) | 劇伴はベートーヴェンの「運命」の一節に似た旋律で、切羽詰まったような旋律を繰り返しながら、どこへ発展していくでもなく悲鳴に似た音を伸ばして途切れる、という、この映画の物語を体現したような印象だ。 [review] | [投票] | |
最高の人生の見つけ方(2007/米) | 「棺桶リスト」という原題の通り、全篇をユーモアが包み込む。『スタンド・バイ・ミー』は少年たちが死体を探しに冒険に出る話だったが、今回は、死体になりかけた大人の男たちが冒険に出る。 [review] | [投票] | |
ゾンビーノ(2006/カナダ) | 「古き良きアメリカ」を再現したカラフルでシンプルな映像の愛らしいミニチュア感が好み。死ねば自動的にゾンビになる状況下で、ゾンビへの愛着が逆に生者の死をジョークと化す倒錯性。世界観そのものが、死せるアメリカ像=ゾンビ。 [review] | [投票] | |
サンキュー・スモーキング(2006/米) | 愛煙家と嫌煙家の対立ではなく、アメリカ国民の殆どが背負う十字架たるローン返済、及び自由の為の闘いを描いた作品。後に『ダークナイト』で実現しそこなったアーロン・エッカートとケイティ・ホームズの共演に注目するのも面白い。 [review] | [投票] | |
青春怪談(1955/日) | 台詞回しも、カット割りも、パンの速度も、小気味いいと言うには余りに忙しない。合理的でサバサバした二人の若者の性格に合ってはいるが。都会的だが妙に野暮ったい。 [review] | [投票] | |
トランスアメリカ(2005/米) | 主題として描かれているのは「距離感」であり、そこにこの映画の現代性がある、と見た。距離、隔たりを尊重すること、垣根を越えてコミュニケーションを結ぶこと、この二つは対立し合いながらも両立すべき倫理として提示される。 [review] | [投票] | |
モディリアーニ 真実の愛(2004/米=独=仏=伊=ルーマニア=英) | 実在したジャンヌ・エビュテルヌを映した一枚の写真の存在感に足元にも及ばないエルザ・ジルベルスタイン。この時点で既にこの映画は終わっていると言いたい所だが、ピカソの特異な人物造形と、ケレン味のある演出法には面白味を感じたので1点加点。 [review] | [投票] | |
あるスキャンダルの覚え書き(2006/英) | ショットの頻繁な切り換えも、混乱はなく躍動的。緩やかに揺れるカメラワークの浮遊感。女優二人の演技力が込められたアップが、画面に重みを加える。P.グラスの曲は単体では単調だが、先を急ぐような速度感が映像に上手く乗る。 [review] | [投票] | |
地下水道(1957/ポーランド) | 地上ではまだ残されていた光が、地下で次々と闇へ転じる。自らの、また他人の希望が、悪意ある木霊のように絶望として返ってくる。光と音が迷宮状に織り成す地獄篇( [review]は殆どその該当箇所の羅列)。だが、これでもまだ圧倒的に闇が足りない。 [review] | [投票] | |
とむらい師たち(1968/日) | 人類の進歩と調和、輝かしき未来の祭典、万博の開催を前に、勝新が全日本人に贈る『死にものの記録』。この秀逸なアイデアは、山下敦弘監督辺りで現代版にリメイクしてほしい。劇中の国葬CMの三人娘は、Perfumeで。くり返すこのメメントモリ。 [review] | [投票] | |
笑の大学(2004/日) | 検閲官と劇作家の対決は、前者を編集者、クライアント、プロデューサー、裁判所、映倫、PTA、スポンサー等々に置き換えて考えれば、相当に普遍性のある劇と言える筈。創作する者必見。映画として面白いかは別問題だが。 [review] | [投票] | |
暗殺者のメロディー(1972/英=仏=伊) | 自らが投げた石に打たれたのは、トロツキーか、暗殺者か、両方か。終盤に至るまでは眠気を誘うが、全てのドラマが急速に集束していった時の緊張度は見事。 [review] | [投票] | |
二十四時間の情事(1959/仏) | 痕跡は、記憶ではない。知り得ない事を知り、想像できない事を想像する義務としてのヒロシマ。何者にも所有され得ないものとしての固有名詞。 [review] | [投票] | |
キサラギ(2007/日) | 鑑賞中には事の真相について考え、鑑賞後は‘アイドル’との関係性について考えた。 [review] | [投票] | |
ポーラX(1999/日=スイス=独=仏) | 恋愛を戦争や災害のように描かせたら、レオス・カラックスの右に出る者は恐らくいないだろう。闇と光と破壊音。だが、瞬間的な詩興の爆発に頼りすぎ、若気の至りの‘絶望’‘孤独’が自己目的化した作風には正直、辟易。 [review] | [投票] |