3819695さんのコメント: 点数順
勝利者(1957/日) | ナイトクラブも喫茶店もボクシングジムもバレエ教室も国籍不詳の抽象性を獲得して相変わらず日活の美術・照明はすばらしい。北原三枝のバレエ(なのか?)公演シーンは必要以上に長尺で物語の均衡を台無しにし、かつ幼稚なトリック撮影を無駄に駆使して最高に阿呆らしい。そこがよいのだ。 | [投票] | |
ジンクス! あいつのツキをぶっとばせ!(1982/米) | 『ファミリー・プロット』にも似た掴みどころのなさ。ベット・ミドラーがコメディエンヌを務めきれていないのが辛い。ジャック・イーラムのシーン周辺に来てようやく腹から笑える。しかしトレーラー落下など見捨て難い演出・画面は少なくなく、シーゲル×ジグモンドの貴重な協働作としても大切にしたい。 | [投票] | |
ダイアナの選択(2007/米) | 露骨に作為を感じさせる美しさの画面は私の好みと完全に合致するものではないが、やはりパヴェル・エデルマンの造型するそれは多くの箇所で強く目を惹く。ロジャー・ディーキンスの『砂と霧の家』とは異なったルックも「露骨な映像美」という点では共通している。ヴァディム・パールマンの嗜好なのだろう。 [review] | [投票] | |
ジーザス・クライスト・スーパースター(1973/米) | ダサいなあ。七〇年代アメリカ映画が格好よくなるかダサくなるかは本当に紙一重なのだ。ダグラス・スローカムの画は悪くないがズームなどの処理が不味い。ジーザスの物語をロック・ミュージカルで語るという趣向にも特に惹かれない。が、見渡す限りの不毛の地で歌い踊る砂漠ミュージカルという点でこの映画は嬉しい。 | [投票] | |
害虫(2002/日) | 宮崎あおいが堪らん。というのはなるほどその通りだろう。いやいや蒼井優のほうこそが堪らんのですよ。この天性の垢抜けなさ! との説にも頷いておこう。だが私は、真に堪らんのはりょうである、と記すことにする。ともあれ塩田明彦は女優を撮ることができる。しかし映画は頭でっかちで惜しい。 [review] | [投票] | |
満月の夜(1984/仏) | このパスカル・オジェを好きになることは私には難しい。だがルイーズというキャラクタ、ひいてはこの映画がオジェなしに成立しないことは明白だ。ここでもロメールの配役術は恐ろしく的確。ファブリス・ルキーニはいつもながらいい顔だ。最終カットは第一カットの反復。捻れた円環として映画を締める抜かりのなさよ。 | [投票] | |
枢機卿(1963/米) | 暴力的な場面が凄まじい。トム・トライオンがKKKにリンチされるシーンの、燃え上がる巨大十字架を背景に置いた画面。ウィーン枢機卿の青年団解散宣言シーンからナチス大暴れシーンにかけてのモブ演出。トライオンと妹キャロル・リンレイの手術室での切り返しも凄い。なんたる顔面へのライティング! レオン・シャムロイ! | [投票] | |
フック(1991/米) | やはりスピルバーグと大多数の観客の感動のツボにはズレがあるようだ。「悪口で童心を取り戻す」など至るところに展開の不備があって居心地が悪い。「父」の主題ひとつを取ってもスピルバーグの重要作であるには違いないのだが、私はこれを積極的に擁護するほどに熱狂的な彼のファンではない。 [review] | [投票] | |
画家と庭師とカンパーニュ(2007/仏) | 語られていることに比して語り方はきわめてせわしない。膨大な量のダイアローグ。シーン間でクッション的に働くカットの欠如。省略も多い。特に何が起こるでもない物語をこうも速く語る目的は何なのか。「犬」や「ジー」が期待させるがどうにも面白くならない。これを「映画」にするにはより高い演出力が要求される。 | [投票] | |
マン・オン・ザ・ムーン(1999/米) | ジム・キャリー演じるアンディ・カウフマンの芸が映画の観客である私たちにとって笑えるかどうかというのは実際のところどうでもよろしいのであって、問題はそれが「笑えるものとして」演出されているかどうかである。ここでもフォアマンの演出には穴があるように見える。 [review] | [投票] | |
四つの恋の物語(1947/日) | 豊田篇:「木登り」という素敵着想。池部良の陽性演技も好み。成瀬篇:空間は窒息気味だが芝居の統制力で見せる。鋭角的な顎が目立つこの木暮実千代はやや苦手。山本篇:最高。飯田蝶子が『長屋紳士録』級にすばらしい。音楽劇の処理も妥当。衣笠篇:意表を突く出発点は悪くないがサーカスならではの演出が後一つほしい。 | [投票] | |
誇り高き戦場(1967/米) | 「城」や「チャペル」あるいは「雪」といった舞台を活かしきれていない。戦争映画としてもっとしっかり作りこんでほしい。チャールトン・ヘストンとマクシミリアン・シェルのシンメトリが描けていないのもどうか。またヘストン演じる指揮者が実に嫌な野郎だ。ということは期待通りの演技なのだが。 | [投票] | |
ロルナの祈り(2008/仏=ベルギー=伊) | これではまだ峻厳さが足りない。そう思うのはこれがなまじ「金の移動」の映画として『ラルジャン』の想起を許すからだ。またアクションにも乏しい。アクションとは端的に映画のエモーションである。アルタ・ドブロシがジェレミー・レニエの「自転車」と「並走」する――この感動的なアクションこそがこの映画の最良の部分だ。 | [投票] | |
オーストラリア(2008/豪=米) | よい。確かに前後半の乖離は著しいが、それぞれの骨格はクラシカルで安定度は高い。ラーマンらしい奔放なカメラ扱いとディジタル処理も好き嫌いを超えた求心力を持っていると思う。ただし会話シーンのアップカット繋ぎはやはり窮屈だ。ヒュー・ジャックマンもキッドマンの向こうを張るには力不足。 [review] | [投票] | |
ボルサリーノ(1969/仏) | 食肉倉庫襲撃シーンに尽きる。吊り下げられた多量の肉塊が炎上し、居所不明の敵との銃撃戦が繰り広げられる。ここだけは最高のアクション映画だ。倉庫から脱出し車に辿り着くまでの緊張感もよい。その他のシーンはほぼ緩い。ラグタイム・ピアノもそれに拍車をかける。緩さを補償するだけの楽しさもない。 | [投票] | |
英国王給仕人に乾杯!(2006/チェコ=スロバキア) | 「欲望」を共通項とした「食」と「性」の複合主題はありきたりだが、そこに「給仕行為=サーヴ(ィス)」が割って入るあたりが興味深い。主人公の妻のナチス女性としての造型も現代映画らしい豊かなニュアンスを持っているし、切手が大財産というのも分かったような分からぬような感じで面白い。裸体選択眼の確かさも光る。 | [投票] | |
伯爵夫人(1967/英) | ほぼ退屈。舞台劇を安直に映画化した作品に似た貧しさが漂う。衰えというよりこれが元々のチャップリンの演出力の程度なのだ、と冷たく云ってもよいが、しかし彼の遺作のラストカット(ダンス!)を何の感慨も覚えずに見ることができるほど冷めた人間でも私はない。このエンド・クレジットの出方の冴えには正直鳥肌が立つ。 | [投票] | |
そして、私たちは愛に帰る(2007/独=トルコ) | 演出家が自身の脚本に縛られている。脚本を超越する演出の自由がない。つまり、脚本が想定した以上の感動がない。「予告」されていた死の訪れのあまりのあっけなさや女優二人の乳繰り合いなど「よくできた映画」の像が綻ぶ瞬間には惹かれる。脚本を超えるとは、観客の想像を超えるとはそういう瞬間のことではないか。 | [投票] | |
PARIS(2008/仏) | 俯瞰の映画、というわけでもないようだ。ロマン・デュリスの位置づけ(「空想する人」なのか「行動する人」なのか、あるいは両者間を移行する人なのか)が曖昧で映画の輪郭もぼやける。堂々とダンスシーンに挑戦した気概は買いたい。ジュリエット・ビノシュの「ストリップ」とファブリス・ルキーニの「ダンス天国」。 | [投票] | |
7つの贈り物(2008/米) | 美談ホラー。親切地獄。美談としての不完全さ(批判の余地があること)はむしろ作者の誠実さのためか。ファナティックなウィル・スミスのさまからは「これは美談でもなんでもありませんよ。ただの怖ろしい話です」という演出の自覚が窺えぬこともない。「クラゲ」や「印刷機」といったアイテムの選択はよい。 | [投票] |