[コメント] ゼア・ウィル・ビー・ブラッド(2007/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
映画は、ツルハシを打ち降ろす所から始まり、ボウリングのピンを打ち降ろす所で終わります。 自らの手で運命を切り開いた男が、自らの手で終焉を迎える物語なのです。 だから、必然として“神の奇跡(=天の配剤)”を拒絶するのです。
ダニエルは言います。「早く金を稼いで、人から遠ざかって暮らしたい。」 私は100%共感する言葉なのですが、同時に、本当は孤独を求めていないことも分かります。 子供、弟と名乗る男、再び子供と、常にパートナーを持ちたがります。 しかし、正面切って「家族」「血縁」とは言わず、“パートナー”と呼ぶ。 「子供の育て方に口を出すな!」と言いがかりに近いキレ方をし、真剣に子供を救出しようとすることから、家族や血縁に強い憧れを抱いていることも分かります。 でも、その憧れを他人に悟られるのが嫌なのでしょう。
これは、不器用な男の物語なのです。
もしかすると、これはPTA自身が投影されたキャラクターかもしれません。 ぶっちゃけキチガイです。
例えば油井炎上シーン。今時、キチガイの極みです。
CGとか使ってる箇所もあるんだろうけど、吹き出した石油で一瞬カメラのレンズが汚れるんですよ。うわ、リアルにカメラ泥水かぶってるよ。しびれますよ。しびれポイントですよ。 炎上シーンは途中で光線の加減が変わるんですね。え?リアルに燃やしてる?やっぱりあれはリアルに油が燃えてる黒煙だよね?一晩経て朝に消化したように見えるんだけど、一晩燃やし続けたの?2度3度燃やし直したの?しかも消化(爆破)はワンカットでやってるよね。 大変な撮影してるな。つーか、キチガイ沙汰だ。 PTA37歳。コッポラがナパームで森林燃やしたのがたぶん39歳頃だから、早熟の監督はどっかで頭がオカシクなるんですよ。黒澤もそうだし。
ドカーン!とかボカーン!とかいうシーンに麻痺してると気付きにくいんですが、この炎上シーン、出来事としてショッキングなだけでなく、演出としてもショッキングなんですね。『サイコ』のシャワーシーンと一緒です。そしてそれは、映画として重要なターニングポイントなんです。PTAはそれを心得てる。
またこの炎上シーンが美しいんだ。映画は“神の奇跡”を否定しますが、このシーンは映画の神様が舞い降りたシーンだと思うんですね。こういう瞬間が来るんですよ。コッポラや黒澤がそうだったように。
音楽(レディオ・ヘッドの奴かよ)の選び方・使い方、構図のとり方、長回しの使い方、一転して短いショットの重ね方、しびれた。面白かった。
この映画や『ノーカントリー』みたいな映画をやっと選べるようになったアカデミーも成長したな。
余談
ダニエル・デイ=ルイスも狂ってたね。 一時期廃業してイタリアで靴屋の修行してたそうじゃない。狂ってる。みんな狂ってる。
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