[コメント] ボウリング・フォー・コロンバイン(2002/カナダ=米)
世界中の人から最も親近感を持たれ、と同時に最も忌み嫌われているアメリカ人。
数年前のTV番組「そこが変だよ日本人」で各国の人々から総口撃を受けるアメリカ人たちを見て、日本人はショックを受けたという。我々の大好きな隣人であるアメリカが実は世界中から総スカンを喰らっているとは知らなかったのだと。
で、そんな呑気な我々もイラク攻撃を必死になって主張する米大統領のアノ滑稽なまでの「必死さ」にようやく気が付いた。アメリカってちょっと普通じゃないんじゃないの?
マイケル・ムーアの著作『アホでマヌケなアメリカ白人』はそんな世界の人々のツボにはまりベストセラーになった。その語り口は皮肉に溢れ、やや閉口したが、平均的な米国人というクラスにいながら、一歩も二歩も退いた視点には驚かされた。だが、こういった本や映画が当のアメリカでヒットするという事の方が真の驚きに値するだろう。この点ではアメリカの民主主義の健全性は賞賛されるべきである。
振り返って現在の日本はどうだろう?TVでは毎日のように北朝鮮の脅威を報道している。それは報道番組の域を超えて、バラエティ番組でも北朝鮮の国民の滑稽な言動を面白おかしく伝えている。まるで彼等が理解不能な宇宙人であるかのような伝え方をしている。つまり、本作でマイケル・ムーアの言う「恐怖と不安の扇動」を始めてしまった。
太平洋戦争前の日本のマスコミが中国人を指して平然と「犬」扱いしていた頃以来の出来事である。
今日のTVでは新潟に寄港する万景峰号に対して怒りの声が殺到していた。総連に対して極右組織がテロまがいの嫌がらせもした。だが、多くの日本人はパチンコ屋に火を放ったり、焼肉屋のショーウィンドウを割ったりしていない。チマチョゴリの学生も安全に電車に乗ることが出来ている。
そう、日本人はまだ健全性を保っている。ただそれは非常に危ういバランスの上に立っている。かつて日本人も過ちを犯している。このバランスが崩れそうな今、本作が警鐘を鳴らす「恐怖と不安の扇動」を知っておかなくてはならない。
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