とにかくよく脚本の練られた映画で感心してばかりだったが、ちょっと違う話を書きたい。

ブルース・ウィリス演じる刑事マクレーンの行動がいちいち感動的なのは、彼が自分だけの目的を持っているからだ。「ヨメさんを助ける」それだけである。彼はそのこと以外、何も考えていないように見える。他の人質の皆さんが全員助かっても、ヨメさんを失ったら終わりだ。他のやつの命なんて、どうだっていいのだ。ナカトミ社長は救えなかったが、あの局面でマクレーンは命を張れない。ヨメさんを救える可能性があるのは、自分だけだからだ。彼はたまたま刑事だったけど、「刑事としての行動」を全然しない。危機に陥ったヨメさんを助けることに必死な男、ただそれだけである。だからこそ、逆説的に彼を刑事とした設定の妙に感心する。彼の目的がよくわかるからだ。

ふと思い出したが『ロッキー』もそうだった。3流ボクサー、ロッキーの目的は王者アポロに勝つことではなかった。「アポロとフルラウンド闘い抜いて、それでもまだオレがリングで立っていられたら」自分はただのチンピラじゃないことを証明できる。彼が望んだのは、それだけだった。肩書きや仕事を超えたところで描かれる人間像には、やはり感動するよ。