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[コメント] ミスティック・リバー(2003/米)

少年時代、誘拐事件に接した主人公3人のその後を描く。事件とトラウマを描いた社会作品として秀逸。ティム・ロビンスの熱演光る。
スパルタのキツネ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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トラウマは、罪を犯す者、犯される者、傍観する者、全てに宿る。

3人のトラウマの違いは、デイブのトラウマが連れ去られた事実よりも”そこ”から逃げてきた「恐怖」にあるのに対し、ジミーとショーンは車を”そこ”でただ見送るしかなかった「無力」にあると思う。デイブと比べると、他の2人は苦い記憶程度のものかもしれないが、自分でなくてよかったという「恐怖」と「安堵」の気持ちに「後悔」が複雑に絡んでいるといえよう。

デイブは、その記憶の「閃光」ともに成長してきた。彼が脳裏を襲っては消える記憶を「蛍の光」に例えていたのが心に残る。ジミーとショーンについては、どのように過去の記憶が彼らの成長に影響を及ぼしたか定かではないけれど、ギャングと警察の生業から、彼らなりにこの記憶を克服しようとした結果と感じとることができる。

デイブはトラウマに苛まされ、性的虐待を目にしたとき制動が効かなくなるまでになっていた。児童を守る為といえ、相手を殺してしまっているのだから、彼も裁かれるべき罪を抱えたことになる。しかし、デイブは、その罪を償うことよりも、「記憶が蘇る」ことを恐れた。「蛍の光」が「明るみ」になることを恐れたのである。彼の言動は支離滅裂となる。こうしたデイブに周囲は疑いを抱く。

我々鑑賞者も、彼が真犯人であると疑うとともに、彼の人格そのものに不審の目を向けるようになる。デイブの「行動」と「言動」、デイブへの「不審」と「疑い」、そしてトラウマ。これが本作の核といえよう。

このようなテーマを扱った作品は他にもあるけれど、本作は、過去の事件の被害者(デイブ)が、3人(デイブ、ショーン、ジミー)の異なる感性によって、別の事件で加害者・容疑者・被害者になりうると描いた点、社会的作品として評価できると思う。またミステリー作品としてもどこまでデイブを信じていいか最後まで判断できない演出は良かったと思う。ただ、”普通のレイ”の口のきけない次男の存在がどうにも不自然で、「臭い」と感づいてしまえるのが残念ではあった。

ともかく、この難役を見事に演じたティム・ロビンスは、3人の演技戦で一つ抜きん出ていると言わざるを得ないでしょう。

(評価:★4)

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