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[コメント] アラビアのロレンス(1962/米)

誰だ?誰だ?誰だー?
ろびんますく

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







と言ってもガッチャマンのことではない。この映画のテーマ。

第一次大戦中に連合国側に英雄として担ぎ出され、その後事故により若くしてこの世を去ることとなったT・E・ロレンス。この映画は謎に包まれた部分の多いこの人物に迫る物語だ。

イギリス人でありながらアラブを率いたロレンスが何者だったのか(誰なのか)というテーマは物語の節目で色々な登場人物のセリフにおいて繰り返される。いくつか挙げると

●ロレンスがアカバへ向かう前、フェイサルの名の下にネフド砂漠を渡ることについて了承を与えるフェイサル:Yes, you can use my name, Colonel Lawrence. But in whose name DO you ride?

●アカバ前のオアシスでロレンスの父親の話を聞いたアリ:It seems to me that you are free to choose your own name then.

●アカバ進攻後、ロレンスが砂漠を渡りスエズ運河に辿り着いたとき、民族衣装を身にまとったロレンスを見た対岸のイギリス兵:Who are you??

●デラ進攻の是非についてアリと口論になった時のロレンス:Do you think I am just anybody?

●デラでのトルコ人に陵辱される事件の後。アリ:A man can be whatever he wants to be, you said. ロレンス:Any man is what I am.

ロレンスが「誰だったのか」ということは、この映画の冒頭のロレンスの葬式で様々な人々が全く異なるコメントをする通り、誰にも分からなかった。そして、おそらくロレンス自身も分かっていなかったのだろう。イギリス軍の中で異端児とされ、好きな砂漠の中でアラブとともに自分のアイデンティティーを見出そうとしたロレンス。だが、最終的にはアラブ人からも異端児とされてしまう。

この映画の原題は『Lawrence of Arabia』。多くの人々もその名称でロレンスを記憶している。「of」は「〜に帰属する」というような意味(日本語の「の」とは若干ニュアンスが異)。しかし、この物語は、Lawrence of Arabiaの話ではなく、Lawrence in ArabiaからLawrence of Arabiaになろうとしたが、ついにはなることが叶わなかった男の話のように感じた。フェイサルが「He is ‘almost’ an Arab.」と言うように。

ロレンスの顔が暗く見えなくなっている公開当時のあのポスターは秀逸。

(評価:★5)

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