★4 | スパイの妻(2020/日) | 男の正義と女の恋慕の間に生じた溝を、感情の勢いで飛び越えようとする女と、ゲーム的術数で埋めようとする男。女の半径3メートルの痴話嫉妬が、ビジネス仕様の世界主義に端を発した優男の野望によって、図らずも帝国主義と対峙する大胆不敵なエンタメサスペンス。 [review] | [投票(4)] |
★5 | 福田村事件(2023/日) | 生粋の殺人鬼や、邪悪な価値や正義を妄信する者が大量の人の命を殺めたとして、せいぜん二桁の域だろう。何百、何千、何万の人の命を奪ってしまうのは、たいてい自分を信じることができなくなった善良な人々の集団だ。そこでの悪者は誰だという問いはとても虚しい。
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★4 | 寝ても覚めても(2018/日) | 現実を夢うつつで彷徨う朝子(唐田えりか)に“朝”はもう訪れたのだろうか。許されなくても側にいるだけでいい。それは究極の愛情表現なのだろうか。ただの自己中心的な感情の逃避ではないのか。何故なら愛とはもともと身勝手でエゴイスティックなものだから。 [review] | [投票(7)] |
★4 | 散歩する侵略者(2017/日) | 女子高生のぶっ飛んだつかみで一気に物語に引き込まれる。大げさな細工や言い訳もせずに、何の違和感もなく“違和”を日常に定着させてしまう黒沢清の技は日本映画界の誇るべき至芸。刑事の「自分」や、牧師の「愛」に関するやり取りも皮肉がきいていて可笑しい。 [review] | [投票(1)] |
★4 | 青春ジャック 止められるか、俺たちを2(2023/日) | 豪放磊落ながら実は緻密な親分肌オーナー若松(井浦新)と、天然良性の優しき夢追い支配人木全(東出昌大)の“学校(スコーレ)”で学んだ映画青年(杉田雷麟)の成長譚に井上淳一が仕込んだのは自身の郷愁ではなく今どきめずらしい「父性」へのリスペクト。 [review] | [投票(1)] |
★4 | 桐島、部活やめるってよ(2012/日) | 全能とは憧れであり幻想だ。おそらく桐島の全能性も、周りの者たちが自身の不安や劣等感を紛らわすために、おのおのが勝手に理想男子の桐島に仮託した幻想にまみれていたのだろう。あやういパワーバランスに揺れながら自分を演じる日常。学校という牢獄の日々。 [review] | [投票(5)] |
★3 | クローズ EXPLODE(2013/日) | どこか昭和の香りが漂うのは、あの石井聰亙の初期作のようなライブハウスのせいだけではない。鏑木(東出)や加賀美(早乙女)の背景にある湿気のせいだろう。残念なのは設楽以外の面々にキャラの「個性」を引き受けるだけの個性が足りず映画が爆発しないところ。 | [投票(1)] |
★4 | パンク侍、斬られて候(2018/日) | トヨエツの大人の論理のどす黒さは『空飛ぶタイヤ』の比ではなく、染谷のテンパリは“ゆとり”のリアルを悲しく代弁し、北川の「腹ふり」は彼女史上最も可愛い。何よりも、孤独なバカはバカとして解放し、群れるバカをちゃんとバカたど言い切る真摯さが素晴らしい。 [review] | [投票(5)] |
★5 | 草の響き(2021/日) | 狂ったように走るのは狂わないようにするため。自嘲的に吐き捨てる男(東出昌大)は周りの世界とかかわるすべを見失っており、自分のことしか見えていないようで実は自分のことすら見えなくなっている。進むことが逃げるこになった男のゴールを思うと胸が痛む。 [review] | [投票(2)] |
★3 | 0.5ミリ(2013/日) | 抱え込んだ欠落感を「人」と接することで、無意識に埋めようとするサワの自由奔放な献身は、物理的援助の域を超え「人」の心のわだかまりを氷解させる。まさにヘルパー、「助け人」なのだ。安藤サクラの演技を超えた存在感がこの寓話に説得力を与えている。 | [投票] |
★2 | 菊とギロチン(2018/日) | 階級や体制が醸す圧迫感に、理屈と世事に流され成り行きまかせで逆らう男ども。方や、体当たりの身体感覚に希望を託す女たち。面白くなりそうでいながら、女力士たちの個性立ちの良さに対してテロリストが類型的で魅力がなく、群像劇の“群像”が実を結ばない。 [review] | [投票(1)] |
★3 | GONIN サーガ(2015/日) | 恨みが爆発するまでの導火線がまどろっこしいうえ、みんな往生ぎわが悪すぎて興ざめ。スパッと逝ってこその感慨やカタルシス。竹中直人、福島リラの異形カップルと、何故かやたらスクリーン映えする土屋アンナがいなかったらどうなっていたことか。 | [投票] |
★3 | クリーピー 偽りの隣人(2016/日) | 高低を意識した空間描写へのこだわりや、大胆に明暗操作された表現主義的長回し、建造物の傷みが醸し出す反生活臭など黒沢清印が満載。さらに香川照之の一挙手一投足は不穏を絵に描いたように不愉快で、藤野涼子ちゃんの陽と陰の振り幅も不気味。 [review] | [投票(4)] |
★4 | BLUE ブルー(2020/日) | 才能とは物事を他人より巧みに成し遂げる能力のことで、強さとは物事を他人より持続的に維持できる能力のことだとしたら、瓜田(松山ケンイチ)だってその資格に値する。思えば学校にだって職場にだって、どこにだって“本流”のすぐ隣に瓜田のような奴はいた。 [review] | [投票(2)] |
★4 | 天上の花(2022/日) | 言葉を吐き出すことで人の心の在りようを綴る詩人が、愛する者のために語るべき言葉を吐き出せないという哀れ。言ってしまえばこの男(三好達治)ただのDV野郎なのだが、自分自身でも制御できないその苦悩に“悲しみ”が滲み、私は思わず同情してしまった。 [review] | [投票] |
★3 | Winny(2022/日) | 言いたいことは分かるが伝え方が下手くそ。冒頭からテレビドラマみたいな説明調のシナリオ展開が興をそぎ、始まって15分ほどで嫌な予感。案の定、要所ごとに入る弁護団の打ち合わせ(会話)にも何の工夫もなく、ひたすら話を進めるための状況説明に終始して鬱陶しい。
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