「小津安二郎」(システム既定POV)の映画ファンのコメント
ゑぎのコメント |
早春(1956/日) | 戦後の小津には本当にハズレがない。この映画の演出の緊密度も並大抵なものじゃない。例えば麻雀シーン。高橋貞二、須賀不二夫、田中春男等を切り換えるカット割りなんかでも、もう魔法のような美しさを感じる。 [review] | [投票(4)] | |
東京暮色(1957/日) | まるでホラー映画のようなローキーの画面。終始一貫して陰鬱な有馬稲子!後期小津作品らしい明朗さのない映画で、多くの小津ファンが幻滅するのも判るが、反面、人間洞察の冷厳な特質が現れている小津らしい作品だ。また画面造型の繊細さを楽しむスタンスに立てば抜群に面白い映画。『東京物語』『麦秋』級の傑作だと思う。 | [投票(3)] | |
彼岸花(1958/日) | 小津のカラー第一作のなんという美しさ。部屋の隅に意味不明に配置された赤いヤカンが目を射る。こゝでも高橋貞二が出鱈目な人物を飄々と演じており良いアクセントになっている。それは二枚目・佐田啓二以上の扱いで、小津のこの手のキャラクタへの愛着ぶりが見て取れる。 [review] | [投票(3)] | |
浮草物語(1934/日) | サイレント後期の小津作品だが、もう殆ど小津の特質をゆるぎない形で見ることができる。ローアングルと完璧なアクション繋ぎによる、或いは相似形を反復する画面によるこゝまでの画の安定感は今更ながら映画史上空前絶後だと感じ入る。 [review] | [投票(3)] | |
浮草(1959/日) | 中村鴈治郎は全く凄い役者だ。絶妙の表情と台詞回し。京マチ子もいいし、若尾文子の可愛らしさも絶品。鴈治郎と京マチ子が通りを挟んで悪態をつきあう雨のシーンのその雨の土砂降りなこと!この過剰さこそが映画だ。 | [投票(11)] | |
お早よう(1959/日) | 素晴らしい。全てが素晴らしい。何を記せばいいのだろう。言葉を失ってしまう。一つだけ。久我美子の脚に決定的に感動した。 | [投票(1)] | |
秋日和(1960/日) | ほとんど完璧な映画。少なくも、徹底的に意識して完璧が目指され、具現化されているのではないか。例えば完璧なアクション繋ぎ。 [review] | [投票(1)] | |
突貫小僧(1929/日) | 世界映画史上の決定的な二つの名前、小津安二郎とハワード・ホークスが同一原作を映画化しているという驚き。二つの作品を比べれば多少なりとも小津の方が勝っているということは云えるが、しかしいずれも成功作ではない。しかしいずれも突出した輝きを放つ作品であることは確かだ。小津による「酋長の身代金」。 | [投票] | |
大学は出たけれど(1929/日) | 元々70分あった映画を11分しか見ることができないということが腹立たしくて仕方が無いが、それはそれとして、11分でも見られたことを喜ぼう。さらにこの11分間の奇跡のような美しさに幸福を感じよう。何といっても田中絹代の可愛らしさが輝くばかりだが、現存するラストカットの潔さはことさら愛おしい。 | [投票] | |
東京の合唱(1931/日) | 不景気な時代を背景にした小津のサラリーマンものの系譜は『大学は出たけれど』等以前からあるのだが、演出面においては本作あたりから小津が真価を発揮したと云えるだろう。主人公を演じる岡田時彦は軽妙かつ哀感漂う演技でこの時期小津のお気に入りだったことがようく理解できる。 [review] | [投票] | |
大人の見る絵本 生れてはみたけれど(1932/日) | 映画はサイレントの時点で既に頂点に到達していたのではないかと思わせる、豊かな豊かな時間の映画。一両編成の列車が何度も画面を横切り、その度毎に映画におけるリアリズムのあり方を私に突きつける。 [review] | [投票(8)] | |
秋刀魚の味(1962/日) | 映画史上最高の遺作。もう完璧だ。演出力とは時間を描く力だ。我々はこの豊かな時間を本当に取り戻すことができないのだろうか。佐田啓二がタバコの煙で輪を作るカットなんて神業。もう本当に最高。 | [投票(3)] | |
戸田家の兄妹(1941/日) | 前作『淑女は何を忘れたか』(1937)に引き続き相当のブルジョア家庭を舞台にした映画だが、家屋や家具調度品の豪奢さは前作の比ではない。小津は戦後の作品でも一部の例外(『早春』『お早う』等)を除いてある程度の上流家庭を好んで描いたが、しかしこれほど富裕な家を舞台にしたものは無い。 [review] | [投票(1)] | |
父ありき(1942/日) | これも『東京物語』だ。小津の映画は多くの意味で自作の反復に溢れかえっているのだが、『東京物語』はこの『父ありき』の裏返しだ。 [review] | [投票(1)] | |
長屋紳士録(1947/日) | 飯田蝶子の圧倒的な素晴らしさ。その睨んだ顔の怖いこと。劇中、吉川満子から「あんたは土佐だもん。ブルも入っているけど」と評されるがそんな形容じゃ足りない足りない。般若と云ったほうがシックリくるくらい。また茅ヶ崎の浜辺のシーンで子供から逃げるために走る飯田蝶子も実にいい。 [review] | [投票(7)] | |
晩春(1949/日) | 私はある時期この映画が日本映画の中で一番好きだった。原節子と三島雅夫(「汚らしい」叔父さん)とのやりとり、出戻り娘・月丘夢路の男性観の現代性、杉村春子のコメディ・リリーフの見事さ。「熊太郎」をめぐる杉村春子の演技の妙味は何度見ても驚嘆ものの可笑しさだ。 [review] | [投票(11)] | |
麦秋(1951/日) | 小津の中では『東京物語』と並ぶ完成度だろう。プロット構成や人物の深みの点でも画面のスペクタクルという点でも最も均整の取れた豊かな映画だ。 [review] | [投票(15)] | |
お茶漬の味(1952/日) | 映画で描かれる雲はこれだ。女性に涙を流させるとはこういうことだ。淡島千景のソファへの座り方、煙草の喫い方、これが映画の演出というものだ。 | [投票] |