★4 | ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界(2012/カナダ=デンマーク=クロアチア=英) | 1945年。広島を核爆弾の炎が覆っていたとき、ロンドンの病院でふたつの命が生を受けた。そして冷戦に世界が覆われた1960年代、ふたりは美しい少女となっていた。ジンジャー(エル・ファニング)とローザ(アリス・イングラート)だ。彼女らはずっとふたり一緒に行動し、世界情勢などについて考察を巡らせる日々を送っていた。ジンジャーにとって、反核運動に加わることは母のナタリー(クリスティナ・ヘンドリックス)と別居中の自由人である父、ローランド(アレッサンドロ・ニヴォラ)への憧れに裏打ちされたものだった。だが真摯に世界を憂うジンジャーとは裏腹に、ローザは男としてのローランドに惹かれ、その腕に抱かれてゆくのだった。〔90分〕 | [投票] |
★4 | 偉大なるマルグリット(2015/仏) | 1920年のフランス。男爵夫人マルグリット(カトリーヌ・フロ)は自宅での音楽会でのみノドを披露する「謎の名歌手」で通っていた。補欠歌手として男爵邸に向かったアゼル(クリスタ・テレ)は、そこで辛口批評家のボーモン(シルヴァン・デュエード)とその友人の画家キリル(オベール・フェノワ)とともにマルグリットの歌唱の場に臨む。マルグリットは絶望的な音痴だった。夫のジョルジュ(アンドレ・マルコン)が臨席を望まぬほどに…。だが、その歌になぜか惚れ込んだボーモンは彼女のリサイタル開催を本気で応援しようとするのだった。その裏には、マルグリットの夢を叶えようとする執事マテルボス(デニ・M・プンガ)の暗躍があった。〔129分〕 | [投票] |
★4 | 神様メール(2015/ベルギー=仏=ルクセンブルク) | この世を創造した神様(ブノワ・ポールヴールド)は、性格の悪さをむき出しにして今日も人々に意地悪を重ねていた。気の優しい女神様(ヨランド・モロー)にも口を出させぬ狼藉ぶりに、ついにその娘エア(ピリ・グロワーヌ)はブチ切れる。父のパソコンからすべての人々に余命をメールで知らせたエアは、昔家出した兄のJ・C(デヴィッド・マルジア)に導かれ外界に出奔した。激怒する神様をよそに「新・新約聖書」執筆のため使徒を探すエアの前に、書記となる浮浪者ヴィクトール(マルコ・ロレンツィーニ)と使徒たちが現われる。彼らは、少女として生きようとするウィリー少年(ロマン・ジェラン)をはじめ余生を見つめ直す者たちだった。〔115分〕 | [投票] |
★4 | 未来を花束にして(2015/英) | 1912年、ロンドン。洗濯場で過酷な労働を続けるモード(キャリー・マリガン)は、仕事仲間のサニー(ベン・ウィショウ)と所帯を持って息子ジョージの生活を支えていた。幼顔のモードは、少女嗜好の工場長(ジェフ・ベル)との性交渉をもつことで彼からは目をかけてもらってはいたが、それでも重労働を強いられる毎日を過ごしていたのだった。そして彼女の沈潜していた不満は、女性参政権運動の人々のデモに遭遇することで一気に顕在化する。同僚のヴァイオレット(アンヌ・マリー・ダフ)は彼女をグループのリーダー、イーディス(ヘレナ・ボナム・カーター)に紹介、モードは裁判所での発言という洗礼を受け、今までにない生き方に目覚めてゆく。〔106分〕 | [投票] |
★4 | 私の、息子(2013/ルーマニア) | 何不自由のない生活を送る婦人コルネリア(リュミニータ・ゲオルギュー)の生き甲斐は、幼時より愛情を注ぎ続けた息子バルブ(ボグダン・ドゥミトラケ)の存在であったが、従順だったバルブが30歳にして反抗的になった事実が彼女を悩ませていた。彼女とソリが合わない恋人カルメン(イリンカ・ゴヤ)と同居し、実母に対してとは思えぬ罵言を放つバルブ。そしてある日、彼が自動車でひとりの少年を轢き殺したとの報せがコルネリアを驚かせる。息子が拘留されている警察署に向かい、彼女はおのれの法知識と財力にモノを言わせ弁護を重ねる。だが彼女と実父(フロリン・ザムフィレスク)の言葉はバルブの怒りを招くだけだった。〔112分〕 | [投票] |
★4 | ダゲレオタイプの女(2016/仏=ベルギー=日) | 青年ジャン(タハール・ラヒム)は気難しい写真家のステファン(オリヴィエ・グルメ)の助手として雇われる。ジャンに任されたのは、ダゲレオタイプ…拘束したモデルの姿を長時間かけて等身大の銀板に焼きつける撮影法の手助けをすることだ。モデルとなるのはステファンの美しい娘、マリー(コンスタンス・ルソー)。彼女は古ぼけた館でドレスを着込み、父の作業を手伝わされるのに嫌気がさし、植物園での仕事を夢見ていた。ジャンとマリーの心の距離が近づくなか、ステファンの旧友ヴァンサン(マチュー・アマルリック)が館のある土地を高価で買い上げたいと誘い、ステファンの怒りを買う。写真家の館への固執は何のためなのか。〔131分〕 | [投票] |
★4 | あの日のように抱きしめて(2014/独) | 第二次大戦後のベルリン。顔を包帯に隠した元歌手のネリー(ニーナ・ホス)は、ユダヤ人収容所を出て、親友のレネ(ニナ・クンツェンドルフ)に伴われて帰還した。ユダヤ機関の一員であるレネは、ネリーにパレスチナへの移住の話を持ち掛けるが、彼女は生き別れになった夫ジョニー(ロナルト・ツェアフェルト)との生活以外に関心を持たなかった。収容所で滅茶苦茶にされた美貌を元通りに整形したネリーは、ジョニーを探し続け、ついにその姿を米兵相手のクラブに見い出す。だが、ネリーは収容所で死んだとの知らせを頑なに信じるジョニーは、ネリーを自分の妻とは認めなかった。そしてレネは、ジョニーが遺産目当てでナチスに妻を売った男だと言い放つ。〔98分〕 | [投票] |
★4 | 湯を沸かすほどの熱い愛(2016/日) | 夫・一浩(オダギリジョー)の失踪後、女手一つで娘の安澄(杉咲花)を育ててきた双葉(宮沢りえ)は、末期ガンの宣告を主治医から受ける。数か月の命といわれ衝撃に沈む双葉だったが、すぐにせねばならない仕事が山積していると悟り立ち上がった。まず、苛めを受けて登校拒否を訴える安澄を奮い立たせ、言うべきことを言わせること。そして愛人とともに行方不明の一浩を探し出し、休業していた稼業の銭湯を再開させること。持ち前の明るさとバイタリティで双葉は仕事をこなし、一浩が愛人から押し付けられた連れ子・鮎子(伊東蒼)をも引き取って見事銭湯を立て直した。だが、まだ彼女の計画は始まったばかりなのだ。中野量太の商業映画デビュー作。〔125分〕 | [投票] |
★4 | 永い言い訳(2016/日) | 小説家の幸夫(本木雅弘)は、倦怠期に陥った妻・夏子(深津絵里)を友人との旅行に送り出したその日、彼女が事故死したことを知る。だが、その知らせを編集者の福永(黒木華 )との不倫行為の最中に受けた幸夫にとっては、それはショックに涙するような事件ではなかった。葬儀が続く中、夏子とともに客死した親友ゆき(堀内敬子)の夫であるトラック運転手の陽一(竹原ピストル)が、悲嘆の果てに同じ境遇の幸夫に電話をかけてくる。マスコミの取材続きに疲弊していた幸夫が彼の家を訪ねると、そこには受験間近な息子の真平(藤田健心)と保育所に通う娘の灯(白鳥玉季)がいた。幸夫は多忙な陽一に代わっての子供の世話を引き受ける。〔124分〕 | [投票] |
★4 | ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ(2015/英) | 妻子より愛されながら、報いてやれぬパーキンズ(コリン・ファース)の生業は書籍編集者だ。彼は無名の作家たちの労作を発掘する才能をもち、ヘミングウェイやフィッツジェラルドをスターダムに伸し上げた。そんな彼の前に現れた作家ウルフ(ジュード・ロウ)は、出版社を盥回しにされたという小説『天使よ故郷を見よ』を売り込んで来る。興味を覚えたパーキンズは寸暇を惜しんで熟読、惚れ込んだあげくに出版を目指し添削を行う。できあがった作品は読書界に旋風を巻き起こし、次回作に向けてふたりの蜜月期が始まった。だが、それはウルフを愛するアリーン(ニコール・キッドマン)、パーキンズの妻ルイーズ(ローラ・リニー)を焦燥に導くのだった。〔104分〕 | [投票] |
★4 | めぐり逢わせのお弁当(2013/インド=仏=独) | ムンバイの主婦イラ(ニムラト・カウル)は夫とは冷えた関係ながら、愛妻弁当を夫のオフィスに届けてもらう努力を惜しまなかった。この街の弁当配達人は正確さに定評があり、その仕事を疑う者もなかったが、ある日ミスが起こる。イラの弁当は夫にではなく、定年間近の会社員、サージャン(イルファン・カーン)のもとに届けられたのだ。近所の食堂に弁当を頼んでいたサージャンはイラの料理上手さに驚き、舐めるように平らげてイラに感謝を示すメモを送る。手紙のやり取りによるふたりの奇妙な関係はここから始まるが、サージャンは後任のシャイク(N・シッディーキー)への仕事引継ぎを第一義に考え、愛に発展しそうな事態を危ぶむのだった。〔115分〕 | [投票] |
★4 | サイの季節(2012/イラク=トルコ) | 革命後のイラン。反体制的な詩の執筆で30年投獄された詩人、サヘル(ベヘルーズ・ヴォスギー)が出獄してきた。彼は先に刑期を終えた妻ミナ(モニカ・ベルッチ)の影を追い、彼女のいるトルコに車を走らせる。革命前、サヘル(カネル・シンドルク)はミナと仲睦まじく暮らしていた。だが、運転手のアクバル(ユルマズ・エルドガン)はミナの美しさに我を見失い、彼女に愛を告白して家を放逐された。なおも執念を燃やすアクバルは革命軍幹部となり、虚偽の密告で夫婦を訴えたのだ。サヘルは若い娼婦(ベレン・サート)たちに案内されながら、ミナの街を巡り続ける。その胸に熱情を隠して。祖国を追われたバフマン・ゴバディ監督の心情を語る一作。〔93分〕 | [投票] |
★4 | 独裁者と小さな孫(2014/グルジア=仏=英=独) | 大統領(ミシャ・ゴミアシュウィリ)が君臨する独裁国家。だが、その全能の権力を真似して喜ぶ孫(ダチ・オルウェラシュウィリ)と玉座にあった彼の前で、突然その帝国は崩れ去る。クーデターを目前に妻子は国外に脱出し、期を逃した大統領と孫のみが混乱するこの国に残された。賞金首となったおのれの正体を偽り、大統領は床屋に忍び込み主人(ズラ・ベガリシュヴィリ)に変装の協力を強い、逃亡の旅に出る。旅芸人となった彼の道行きを前に、無罪嘆願も虚しく姉を処刑された娼婦(ラ・スキタシュヴィリ)や、愛する妻との間を引き裂かれた政治犯(ソソ・クヴェデリゼ)が現われ、彼の魂に揺さぶりをかける。そして大統領への包囲網は狭められてゆく。〔119分〕 | [投票] |
★4 | 栄光のランナー 1936ベルリン(2016/米=独=カナダ) | オハイオ大学で、黒人陸上選手オーエンス(ステファン・ジェイムス)はコーチのスナイダー(ジェイソン・サダイキス)にその脚力を見込まれ、オリンピックを目標に研鑚を積んだ。貧しさゆえ離れていた恋人ルース(シャニース・バンタン)と結婚、後顧の憂いを絶ったオーエンスは、国内大会で次々に世界最高記録を更新する。来るべきベルリン五輪はナチスの宣伝色が強く、彼も辞退すべきか悩むが、ライバルであるピーコック(シャミア・アンダーソン)に「勝ってヒトラーの鼻を明かせ」と背中を押され、参加を決意する。五輪会場に待つのは強豪ロング(デヴィッド・クロス)、そして主催者ゲッベルス宣伝相(バーナビー・メッチュラート)だ。〔134分〕 | [投票] |
★4 | ブルックリン(2015/アイルランド=英=カナダ) | 閉鎖的な故郷アイルランドで、自分を磨く契機を見い出せずにいたエイリシュ(シアーシャ・ローナン)は、会計士の姉によってニューヨークで働く機会を得る。だが、慣れぬデパート店員としての勤務、女たちとの寮生活のなかで彼女は引っ込み思案になってゆく。ホームシックに苦しむエイリシュのため、世話人のフラッド神父(ジム・ブロードベント)は大学の会計士コース受講を薦めた。自信をつけ始めた彼女を、イタリア系青年トニー(エモリー・コーエン)は見初めてプロポーズに出、エイリシュの毎日は輝きを帯びてゆく。そんな時突然の悲報が届き、故郷に戻るエイリシュ。そこに待っていたのは昔なじみの青年ジム(ドンホール・グリーソン)だった。〔112分〕 | [投票] |
★4 | 団地(2016/日) | とある大阪の団地。清治(岸部一徳)とヒナ子(藤山直美)の夫婦は稼業の漢方薬店を閉め、ここで慎ましく暮らしていた。そこを風変わりな男・真城(斎藤工)が訪れ、彼らに漢方薬販売の確約をさせて去ってゆく。まったく夫婦の暮らしの変化はこれしかなく、口さがない団地の井戸端メンバーも、次の自治会長に隣人の正三(石橋蓮司)が選ばれるか否かを騒ぐばかりだった。いきおい清治は近所の林で野草を探し、生活のためスーパーのレジに立つヒナ子が上司にどやされる日々が続く。だが、そのうちに数ヶ月清治が姿を見せないことが噂になった。ヒナ子と親しい君子(大楠道代)は否定するものの、主婦連は殺人事件と見てヒナ子を疑いはじめるのだった。〔103分〕 | [投票] |
★4 | 海よりもまだ深く(2016/日) | 良多(阿部寛)は作家として昔文学賞をとってはいたが、次回作を書こうとして果たせず興信所勤めを続けている。生来のギャンブル好きが災いして宵越しの金は残さず、老母・淑子(樹木希林)や姉・千奈津(小林聡美)に金をせびる毎日であった。そんな彼に愛想を尽かして元妻・響子(真木よう子)はとうに彼の元を去り、息子・真吾(吉澤太陽)の養育費を出させる時以外は、接触を持とうとはしなくなっていた。しかし家族の絆を最低限持っていたい良多は、一ヶ月一度ながら真吾と逢える機会にはサービスを心掛けるのだった。そして台風の日、面会の機会がやって来る。〔117分〕 | [投票] |
★4 | マクベス(2015/英=米=仏) | 内戦下のスコットランド。ダンカン王(デヴィッド・シューリス)の軍勢も苦戦を強いられたが、その中にあって王に忠誠を誓う猛将マクベス(ミヒャエル・ファスベンダー)の働きは目覚ましいものがあり、彼はコーダー公の地位を与えられるに至った。だがその前にマクベスの前に現われた魔女たちが、彼を王位を継ぐ者と褒めたたえ、その上で戦友バンクォー(パディ・コンシダイン)を次代の王の父と呼んだことが彼の頭のなかにこびり付いていた。その話を聞いたマクベス夫人(マリオン・コティヤール)は、わが子が早逝した悲しみを振り切るかのように予言の成就に固執し、夫に恐ろしい使命を託す。それはダンカン王の暗殺による王位簒奪の命である。〔113分〕 | [投票] |
★4 | さざなみ(2015/英) | ケイト(シャーロット・ランプリング)とジェフ(トム・コートネイ)の夫婦は、結婚45周年を迎えようとしている。ふたりの間には子供はないが、その絆は揺るぎないものとなっていた。そんなある日のこと、ジェフのもとに手紙が届く。その内容は、かつてジェフの恋人であった登山家カチャの遺体が、事故で呑み込まれてしまった氷河の中から発見されたというものであった。ジェフは過去のことと片づけはするものの、そのことばからこの上ないカチャへの執着を感じ取ったケイトは、無駄とはいえど嫉妬に似た感情を抱き始める。こうして、永遠のものと思われたふたりの関係はあからさまに引き裂かれてゆくのだった。〔95分〕 | [投票] |
★4 | リリーのすべて(2015/英=独=米) | 仲睦まじい夫婦のアイナー(エディ・レッドメイン)とゲルダ(アリシア・ヴィキャンデル)は、ともに成長を見込まれる画家同士だった。あるとき、ゲルダは女物のドレスを羽織ってのモデルを夫にしてもらった。それは単にモデルのウラ(アンバー・ハード)が不在であるための応急処置だったのだが、この仕事を境にアイナーの内面に小さな欲求が生まれた。悪戯半分に女装して出かけた舞踏会で、アイナーはその美貌を客たちに褒めそやされ、キスを求められる。そしてアイナーの中の人格リリーは肥大してゆき、奔放に男を求める性情を露呈してゆく。驚き苦悩するゲルダは、アイナーの旧友である画商のハンス(マティアス・スーナールツ)の助力を求めた。〔120分〕 | [投票] |