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ジェリーさんのコメント: 更新順

★1カンタベリー物語(1972/伊)本作がベルリンの金熊賞受賞作という事実から感じるものがない。裸や性交や排泄や放屁や放尿をどれだけえがいたところで、人間の動物性という暴露的主題を人類史がとうに追い越しているという事実認識は、当時にもあったはずだ。[投票(1)]
★4無限の青空(1935/米)感情の持続を舞台劇のようにリアルタイムで追跡した巧緻な演出に目を瞠る。目立つスペクタクルなど飛行機炎上の瞬間以外ないのだが高い職業意識の劇的な衝突あり、オフィスラブあり、手に汗握る場面が続く。ジェームズ・キャグニーの芝居っ気が小気味よい。[投票]
★3ザ・ファイター(2010/米)ボクサー家族のもたつきぶりを表現していくスタッフには少しももたつきがない。実在モデルのいる・いないはこの映画の出来には少しも関係ない。普遍的でもあり個性的でもある微妙な兄弟関係が多少のペーソスを添えてメリハリよく語られる。その緩急のテンポがよい。[投票(1)]
★3アレクサンドリア(2009/スペイン)歴史を俯瞰する意志が、宇宙空間から見た地球という映像で何度も表わされるが拙劣。何の効果もない。しかしそれでもこの転換期に、ある別の転換期のモデルを表現しようとする誠意は受け取った。世相風俗描写が、デミル/ワイラー時代を越えた点は紛れもない進歩。[投票]
★1タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密(2011/米)初期スピルバーグの良さは運動のさなかに適切に繰り込まれる静止が作り出すサスペンスにあった。これを忘れてひたすらに運動のノンストップ化に猪突した堕落が全編を蝕む。他キャラが原作重視の姿勢のくせに主役に駘蕩とした魅力を再現できなかった点も難がある。[投票(1)]
★1ある貴婦人の肖像(1996/英=米)自分のことを何一つ理解していなかった凡庸な女に飛び切りの美貌と共感力があったという皮肉。しかしそれをここまで大げさに描かなければならないほど映画は不自由でも制度的でもない。主人公以上の勘違いをやってのけたジェーン・カンピオンこそ真の無能である。[投票]
★4塔の上のラプンツェル(2010/米)自らの存在理由として、ディズニーはお姫様を生産し続ける。何度変奏されても面白い主題があるという発見を楽しみにしている。今回も実にウェルメイドな出来だ。この動作一つ一つが老婆、青年、成人直前の女性になっている。そしてあの馬とお城。完璧だ。[投票]
★4Ray レイ(2004/米)有名人の一生を描いた作品として最良の一作。ヤクと女という黒人音楽家の典型イメージをしっかり踏襲する分かりやすさに支えられている。人生をあるトラウマを切り口に上手に再編して見せた。割り切るのは詐術の一種だが、割り切った代わりに提示される中身が豊穣なので許せる。[投票]
★1白鯨(1956/米)ボギー出演作以外に見るべき作品を残さなかった監督という位置づけが私のジョン・ヒューストン観で、本作もその見方を裏切らない。 [review][投票]
★4汚れた血(1986/仏)ゴーギャン的平面化にマチスの色感を掛け合わせたような斬新な構図が素晴らしい。照明は加藤泰に似たところもあってこれまた新鮮。ドゥニ・ラヴァンミシェル・ピコリジュリエット・ビノシュの俳優の不均衡がこの不均衡ドラマを完璧に具現化して秀逸。[投票]
★1007/カジノロワイヤル(1967/英)方図もなくだらしないドラッグ映画。本家シリーズが実はスパイ映画の茶化しからスタートしたような一面がある。それをさらに茶化すという着想が既に破綻しているだろう。全俳優がカメオ出演である奇態さと周回遅れで新鮮さを獲得した美術の面白さは請合う。[投票(1)]
★3赤い風車(1952/英=米)恋物語は説話上の撒き餌で主題はロートレック作品の謎解きである。蓮の花のような彼の作品群の秘密は、本映画が恍惚と苦痛とがない混ざって歪んだ顔の映画であると気づいた瞬間に開示される。歪みこそが醜から美への、俗から聖への転移の回路。西洋美術の本質を鷲掴みにした思い。[投票(1)]
★3激怒(1936/米)』の後日談ともとれる。孤立無援の人物に群集が冷たい仕打ちに及ぶという夢魔的モチーフがよく似る。『暗黒街の弾痕』にも類似構造があり、よほどフリッツ・ラング好みの展開なのだろう。このパターンを更に一ひねりしようとしたのだが空回り気味。[投票(1)]
★4沈黙の女 ロウフィールド館の惨劇(1995/仏)ストーリーテリングが筋肉質で無駄がない。伏線の張り方がさりげないが周到だ。特に主要舞台となる富豪一家の家屋の間取りや屋外の状況提示が説明的ではないのにクリアなので、どれだけ終盤の「解放」が盛り上がったことか。さらにうまいのが性格描写で→ [review][投票]
★2ヤギと男と男と壁と(2009/米=英)ゆるさを武器にした笑いが、コーエン兄弟を想起させないでもない。解釈の許容度が結構広い。アメリカの行き詰まり感がこの映画の深層にあるとするテーマ主義的な見方をする/しないにより、本作の評価も変わるだろう。個人的には取替え自在の看板と見る。[投票(1)]
★5アナとオットー ANA+OTTO(1998/スペイン)淡いブルーグレイを中心にすえた清澄な色彩設計、大胆な切り返しショットと省略の冴えが際立つ編集技術、時間の順行と遡行を自在に操りながら、かつまた同じ時間を二人の視線から描き込んでいく勇気と才気溢れる語り口。全てが惚れ惚れする出来栄えだ。 [review][投票]
★4冷血(1967/米)悪役の汚さを強さ或いは優越感と並置させることに専念する映画が9割9分だった時代からの、高らかな離脱の産声を感じる。悪役は弱さ或いは劣等感と並置され、観客との距離感を測り合えるところにまで近寄せられてきた。ドキュメンタリー調の斬新な表現が この着想をしっかりと支えた。[投票]
★3ギャング・オブ・ニューヨーク(2002/米=独=伊=英=オランダ)構想力の弱さを逆手に取った奇想の傑作『タクシードライバー』以降、同じ手は二度と使えず、構想力の弱さを露呈し続けてきたスコセッシの正味の限界線を示す力作。パラノイアックでバランスが欠如するゆえに強さを獲得した人物というキャラ造形パターンは今後も変わらないだろう。[投票(2)]
★1フィールド・オブ・ドリームス(1989/米)気色の悪い生温かさが終始付きまとう。歴然とした消化不良作品。トウモロコシ畑の中に忽然と存在する野球場、という魅力的なモティーフを中途半端なセンチメンタリズムでしか彩れない無策には笑うしかない。やりすぎるくらいの覚悟が欲しい。[投票]
★3アドレナリン(2006/米=英)作り過ぎた映画が嫌い、と思っていたらこのおおらかな作風に触れて前言撤回。走り続けねばならないという映画的設定の必勝手は今なお効く。ぐるぐる回る手持ちキャメラの悪酔い感が男の置かれた境遇をうまく演出する。粗さと軽さの魅力だ。[投票(1)]