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ジェリーさんのコメント: 更新順

★5河内山宗俊(1936/日)人情紙風船』が雨なら、本作には傑出した雪のシーンがある。幕末の退嬰的な空気が底流に湛えられていても、具現化されたのはアメリカ映画の理念そのもの。どこかバタ臭い。市之丞と宗俊がワイアット・アープとドク・ホリデイのように格好よい名コンビに見える。[投票(3)]
★5丹下左膳餘話 百萬両の壷(1935/日)被写体が動くことにより映画の価値が生まれるという生無垢の基本原理が全ショットであらわである。とにかく佐膳と子役と壷がよく動く。この動きを動きとして面白く見せるのに不動の被写体があえて取り込まれている。それが女達で、この静と動のずれが上等のユーモアを生む。[投票(5)]
★3戦國群盗傳(1937/日)富士の裾野を背景にとりこんだスケール感は戦前作ならでは。馬撮影の水準は黒澤登場までお手本だったかもしれない。馬の疾駆する姿が戦前らしからぬ伸びやかなアナーキーさを醸す。モーゼ的な役柄に扮する河原崎長十郎の野太い茫洋さと暗い情念は今の俳優では絶対に出ない。[投票]
★2オーケストラの妻たち(1942/米)楽旅に奥さん達が随行するという状況設定はユニークだが何のふくらみもなく、全盛期のグレン・ミラー楽団のMTVとしての価値がむしろ高い。突如登場するニコラス・ブラザーズの驚異的な開脚タップ芸が素晴らしい出来栄えで、ラストを盛り上げてくれる。[投票]
★3黒船(1958/米)アメリカ人が身を挺して下田村のコレラの蔓延を防ぎ、幼君をいいように操る幕閣たちの閉鎖性をこじ開け、最後に日本人の信頼を勝ち取るという合衆国御用映画。幼君の姿は昭和天皇への、下田の日本人家屋を焼く火は広島長崎を焼いた火への連想を誘う。 [review][投票]
★5マルクス一番乗り(1937/米)ハーポのジャズへの接近は快感を超えて崇高ですらあるし、スプリンクラーがしぶきを上げる診察室に馬が突如登場するシーンはダリをも凌駕する。荒唐無稽のアルカディアが70年も前に完成していることの驚き。映画は進化しないと断言したくなる。[投票(1)]
★3ワルキューレ(2008/米=独)信管の差し込まれたプラスチック爆弾はいつの時代でも映画の最高の主役なのだから、小味の利いたサスペンスフルな場面がもっとあってよい。綾のない一本調子のストーリーテリングが残念。しかし人物一人一人の描き方はかなりいい線である。たとえばヒトラー。 [review][投票(2)]
★2わが命つきるとも(1966/英=米)俳優達の顔や壁面に投げかけられる光の質感がこの時代劇にそぐわない。クローズアップの多用の結果、表情による演技過多の2時間ドラマとなってしまった。主人公の神や法への忠誠が行動として伝わってこず、重厚を気取るドラマの腰が軽く見えてしかたがない。[投票]
★5マルクス兄弟オペラは踊る(1935/米)チコのピアノ芸に我を忘れて笑う子供たち。スクリーンのこちら側にいるはずの観客がスクリーンの向こう側にもいるかのような錯覚にわが身が総毛だつ。現実には決して起こりえない時空を実際に撮った画面で見せ付けてくれる3兄弟の才能は、まさに唯一無二のものだ。[投票(1)]
★5愛の昼下がり(1972/仏)自然な照明と演技ゆえ、日常的な光景が淡々と描かれているかに見えるが、ドラマの濃さは並大抵ではない。登場人物の会話と内面独白にはつつましいが純度100%の率直さが込められ、各エピソードのあけすけさには驚嘆のほかない。フィクションによってフィクションを超えた作品。[投票]
★4ワイルド・アット・ハート(1990/米)映画の辻褄などどのようにもとってつけて見せられるという高らかな宣言。道化的悪役ボビー・ペルーの造形だけで、この映画は後世に残りうる。円環性の強いリンチ作品にあっては本作は開かれた拡散性を感じる。特定の映像へのフェティッシュなこだわりは既に完成の域。[投票(3)]
★3北京の55日(1963/米)史実から映画世界への大胆不敵な架橋。満州人の主要な役割をイギリス人が演じるという超現実的キャスティングはこの映画のくらくらする魅惑となった。美術制作とスペクタクルの演出には彫琢の限りが尽くされるが、ゆるさの伴う演技の演出が残念である。[投票]
★1ブーリン家の姉妹(2008/英=米)美しいスチル写真と映画の美しさの取り違え。当時の絵画に多くを学んだであろう構図や照明を静止画として観るとき確かに本作は美しい。しかし、この映画が唯一動的なフィルムとして美しかったのはスカーレット・ヨハンソンが涙をはらりと流した一瞬だけ。[投票(1)]
★3天使と悪魔(2009/米)現実と虚構の混ぜあわせ方の大胆さは前作以上。映像にしづらいバチカンという時空間の選び取り方には、映画として誠に正統的なスキャンダラス要素も含みセンスを感じる。しかし伝説の複雑化は説明を増やし、説明過多なる映画はサスペンスの奥行きを浅くする。 [review][投票]
★1SPIRIT(2006/香港=米)身体能力とワイヤ・ワークと特撮の連携の滑らかさは、これ以上のものを見た記憶がない。戦いの山谷がどれも同じに感じられるのは大いに不満。単細胞すぎる主人公の設定と妙にナショナリズムの鼓舞に行きがちな要素の混入も残念。もっと炸裂して枠を吹き飛ばして欲しいのだが。[投票]
★5砂漠の鬼将軍(1951/米)アバンタイトル部でのアクションによるサスペンスフルなストーリーへの引き込み、原作者の登場から主役の初登場にいたる流れの手際、水際立った簡潔さに煌く会話、将軍や政治家たちのキャスティング、どこをとっても引き締まり、知性と緊張感に満ちた作品。 [review][投票(1)]
★1太平洋作戦(1951/米)おそらくドキュメント映像を含んで空中戦が演出されていると思われるが悪い出来ではない。この心浮き立つ運動感を下支えする地の部分の基地内のやり取りがやたらと凡庸で、マネジメントという主題は映画にはきわめて不向きな主題であることが幸いにも理解できた。[投票]
★1マイ・ブルーベリー・ナイツ(2007/仏=中国=香港)はりぼての色彩設計、昼夜の区別を判別させえぬ照明、これらも実に痛々しいのだが、特に空間造形力の貧困さが致命傷。ノラ・ジョーンズが恋人の家を見上げるカットでは彼女の立ち位置と恋人の家の窓の距離感が決定的に重要なのだが、それが皆無。彼女の好演が台無し。[投票]
★3コラテラル(2004/米)昔嗅いだ匂いがする。この匂いは監督の意図したものではないかもしれない。あまりにも私風の解釈にすぎないのだが、私の目に映ったものはこういうことだ→。 [review][投票(1)]
★5ピアニスト(2001/仏=オーストリア)じっとりと湿った冷ややかさが画面に漲る。シューベルトのように極端から極端に走ることしかできない女が、密室の中で男と無器用にもゼロから性愛の規則を作り出して行く生々しい過程の描写がすばらしい。世俗的希望を捨てた無償の感情を捨て身で表現したイザベル・ユペールに脱帽した。 [review][投票(1)]