[コメント] ビッグ・フィッシュ(2003/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
行商の長い旅路で、父(アルバート・フィニー/ユアン・マクレガー)は妻(ジェシカ・ラング)と息子(ビリー・クラダップ)のことを思いながら、どれだけ妄想したことだろう? 色々な人に出会い、いろんな珍事や苦労に遭遇した物語り好きの父は、世間の誰よりもよく、世間を現実を知っていたことだろう。
父は、物語の中で、「大男」に「人の器の小ささ」を例え、「双子の姉妹」に自身も参加した「ベトナム戦争が犯した罪」を例え、人の死を見通す「魔女」に「寂れゆく街」を例えた。 父親が旅先で物語を創るとき、息子に現実の厳しさを前向きに乗り越えてほしい、との願いがあったのではないだろうか? 後で考えると一つ一つのエピソードにメッセージが込められているのが判る。
そんな父の織り成す物語の大きな特徴は、秘密の終わり(自分の死)を前提としている点だろう。「自分の死はこうじゃない!」と、難関を次々切り抜けていく。なんとロマンチックなことでしょう! (この物語の結末はきっと息子がかなえてくれる・・・)
ところが、息子にとっても自分にとっても晴れの結婚式で、息子に「父さんの物語はうんざりだ!」と言われてしまう・・・。父にとってこれほどショッキングな事件はなかったことだろう。
3年後、死の床に就いた父を前に父の最期を飾る物語が始まる。ようやく息子が自分のことを理解してくれた。 「朝起きると、元気になっていた・・・」 この力に溢れた物語の出だしに私は驚き入った。父親ゆずりと言うより、父親以上だったことがわかる。 ちなみにこの物語のラスト、父の口から指輪が出てきてそれを母に渡したが、母を釣ろうとしていた父がとっくの昔に母に釣られていた、という洒落た終わりのように感じた。
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その他、印象的なエピソード
スティーブ・ブシェーミの詩「草は緑 空は青 スペクタータウン最高!」 これはどちら(フィニー、ブシェーミ)の才能でしょうか? きっと本当のブシェーミの詩は、ずっと尤もらしい凡作だったと思います(笑)
1ヶ月おきに、危険、汚い、キツイの3K全開の仕事をして得たものが「彼女は水仙が好き!」「彼女は音楽が好き!」だけ。 無邪気に喜ぶマクレガーにうらやましさを感じた。
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私ごとながら、自分も私ども兄弟に向けた親父の決まり文句が嫌でしょうがなかった。そのため地元を離れたと言っても過言ではない。本作を観て、そんな気持ちが変わるまでに至ってないものの、エンドロールでは涙が溢れでてきて困ってしまった。劇場でここまで泣いたのは初めてかもしれない。
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