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[コメント] それでもボクはやってない(2007/日)

周防正行は将来「名匠」と呼ばれるべき監督である。
ペペロンチーノ

完璧な「映画」。 リアリティーというものとは少し違う、作り物の「映画」として「リアルに見せる」ための完璧な「演出」。あまりのパーフェクトっぷりに興奮した。涙が出た。

周防正行は“ニッチ”な題材を“正攻法”で描き続ける。それも極めて“日本的”に。 前作『Shall we ダンス?』は「日本人が社交ダンス」だから面白かったのにハリウッドでリメイクしてどないすんじゃい。 本作もまたハリウッドから注目されているという。

周防映画は“極めて日本的”、言い換えればハリウッドの真似ごとではないからアメリカで新鮮に写るのだろう。 だが、周防監督自身は日本映画のハリウッドリメイクをあまり快く思っていないと聞いたことがある。「邦画がハリウッドの市場調査の場であってはならない」と。 それを意識したかどうか分からないが、この映画は“訴訟社会”アメリカでは理解困難な“隅から隅まで日本的”な話となっている。 しかしそれは特殊な日本ではない。社会を斜めから斬っているわけでもなければ、トリッキーな撮影を駆使するわけでもない。いたって正攻法。 マスコミに取り上げられることのない小さな事件。こうしたシンプルなストーリーを魅せるには、相当な監督の手腕が必要である。

周防正行は将来、巨匠ではなく名匠と讃えられるべき人材だ。

鬼才あるいは奇才と呼ばれる監督は若手でも大勢いる。 だが、将来「名匠」と讃えられる監督をリアルタイムで見続けられることは貴重な体験だし大変幸せなことだ。

地味な話だし、コメディーを期待した人は肩すかしをくらうだろう。 だが私は面白かった。メチャクチャ面白かった(<私が法学部卒だということもあるかもしれないが)。尾美としのりと光石研が一つの画面の中にいるだけで楽しかった(<それは少し異常な気もするが)。

え?なんで巨匠じゃないかって?だって、たぶん「大作」には向かないと思うし、手がけないと思うから。

(評価:★5)

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