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[コメント] BROTHER(2000/日=英)

「説明」はいらない。
ina

何か変だ。北野映画な事は確かだが肝心なものが抜けているような気がする。

北野武の映画の特色は絶対的な「省略」にあると思います。 この映画は全体的に「北野節」の映画だったが肝心な北野映画の特色である「省略」がない。 なぜ北野武は自分の特色を消してしまったのであろう。 この作品を観終わった時の何か変な感じはその部分だと思います。

「ハリウッド映画」。北野武は、自分の映画=省略、ハリウッド映画=説明、この両方の真ん中を選択した。それは妥協としか言えない。確かに映画監督には「ハリウッド映画」は魅力的なものだろう。ベンダース、リュック・ベンソン、ジョン・ウーなど自国で人気監督がハリウッドに進出して成功している。北野監督も頭がいいので失敗しないようにちゃんと考えている。例えば主人公を監督の国でない人にするとやはり外国のことがわかってないのでトンチンカンなことになってしまう。そこで主人公を自国の人間にして「異邦人」として自分の経験とリンクさせながら描く方法がベストである。また外国人監督として自分の国の国民性を出していく。ハリウッドとしては目新しいからだ。また自分の映画の特徴はそのままに。ジョン・ウー節、ベンソン節など。確かに北野監督は良く考えてこの作品を作っている。ハリウッド映画としては合格点かもしれないが、一番肝心な本来の自分の映画を忘れてしまった。

なぜそんなに「説明」が必要なのか。あなたの映画はジョン・ウーみたいに派手な銃撃戦、リュック・ベンソンのようなセンチメンタルな恋愛と切れのいいアクション、ベンダースのような異邦人の目(ベンダースは少し違うが)、北野映画はそんな映像だけの表面の演出だけではないはずだ。「映画の文法」というもっと高いレベルの表現だったのにその表現である「省略」を省略してはこの映画は北野映画ではなくなってしまう。北野映画に似たハリウッド映画だ。

北野映画は毎回これ以上のものができないというテンションがあったが「妥協」の今回の作品には「ぬるい」としか言えない。

「妥協」と「説明」でわかりやすく合格点のような作品だが肝心なものを忘れた「ふぬけ」のような作品だ。

映画の主人公は過激だが「BRATHER」という人間のつながりは忘れていなかった。肝心なものは絶対わすれない。北野監督にも肝心な自分の映画の特色は忘れて欲しくない。

主人公は自分の死に場所をアメリカで探していた。北野監督、こんなハリウッド映画があなたの死に場所ではない。あなたの死に場所はハリウッド映画の中でなく自分の映画の中にある。

(評価:★3)

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