[コメント] ゴーストワールド(2000/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
イーニド。
なんか、すごく、見ててなんともいえない気持ちになる。 「まわりはくだらない、つまんない奴らばっか。私は違う。」 でも、浮いてるのは自分で。 そうこうしてる間に周りはどんどん進んでいって。 自分だけが前に進めてなくて。 でも、私が行きたいのはあいつらの進んでるとこじゃない。 私が欲しいモノは、目指すモノはそれじゃない。
それじゃ、何が欲しいのか?何がしたい? それがわからない。 欲求不満で、イライラしてて。すぐにみつかると思ってたのにみつからない。 焦りのようなイライラする気持ち、なんともいえないあの感情。 そんなものが、感じられて。
幼なじみで、ずっと一緒だったレベッカとも。 高校を卒業して、環境が代わっていって、少しずつ距離があいていく。 彼女はみんなと同じ、現実になじんでいく。 イーニドとは違う、まっとうな道。 普通の、つまんない、ありきたりの道に。 ウェイトレスをしながら、この街で暮らすという選択。 すごくまっとうな選択だと思う。 普通の人なら、そうするだろう道。 でも、イーニドにとって、絶対したくない選択。
きっと、レベッカなら、これに馴染んでいける。 彼女はきちんと現実を見ることが出来る子だと思う。 レールに乗った人生を歩むことの出来る子。 けど、イーニドには、ムリ。 イーニドだって、馬鹿じゃないんだからわかってる。 でも、ムリなんだ。 彼女はそれに耐えられない種類の人間なんだろう。 ううん、そういう年頃なのかもしれない。 もっと年をとったら彼女も考えが変わるかもしれない。 でも、今の彼女にとっては、周りの世界は認められない。 なにもかも思うようにはいかなくて、なにが欲しいのかもわかんなくなってきて。
そう、この感じ。 この感じが好きなんだ。
最初は、高校を出たらもっと楽しくなれると思ってる。 でも、実際はそんなことなくて。 美術の補講はくだらないし、父親は女連れ込むし、レベッカとも距離があいてって。 唯一の心理的よりどころになってたシーモアにも彼女ができて。 美術の先生に認められて、奨学金までもらえることになったかと思いきや 大問題になって、結果的にシーモアにまで迷惑をかけることになっちゃって。 あ〜、どんどん追いつめられて八方ふさがりになってくのがたまんない。 それなのに、ハッピーエンドもどんでん返しもナシで。 なんて映画だろう。 すごく、心に残る。
それから、ラストの解釈。 他の人の解説読んでびっくりしたのが 「イーニドが乗ったのはあの世行きの、ゴーストワールドへ向かうバス。 よって、イーニドは死んだ、自殺したのだ」って解釈。 人の見るまでそんな考え、全く思い浮かばなかった。 そっか〜、そゆ見方もあるんだぁ、って思った。 うちは、彼女は「どこか」へ行くバスに乗った、って思ってたから。 あのバスは、彼女をここではない「どこか」へ連れて行ってくれるバスなんだ、って。
どこへ行くかは知らない。 でも、それは彼女の今の現実から彼女を連れ去ってくれるもので。 この今の、どうしようもない、どうにもできない世界、ここから脱出する術で。 うちにとっての問題は、そのバスがどこに行くかじゃなくて 彼女が、今の、この世界から、出ていくことを決めた、 口ばっかりはもうやめて、行動に移した、 バスに乗ることを決断したってことだったから。 うまくいかなくて、欲求不満で、イライラしてて 今までみたいにここでそのままひねて暮らすことよりも 「どこか」へ行ってしまいたかった。 そんな気持ちがわかる気がしたから。
「運転手さんそのバスに 僕も乗っけてくれないか 行き先ならどこでもいい」って感じ?
うちだって、このまま電車に乗ってどっか行っちゃいたいって思うことあるし。 別にどこへ行きたいってわけじゃない、「どこか」へ行ければいいの。 でも、それを実行には移せない。 そうするには捨てられないものが多すぎる。 だから、うちにとっては、彼女がそれを実行するかどうかが問題だったわけだ。 どこへ行くか、じゃなく。
実際、なんだって当てはまる。 彼女は「死」を選んだのかもしれないし、「都会」や「遠くの街」に行ったのかもしれない。 それを決めるのは、映画を見た本人だろうと思う。 だって、こんな風にどうとでも取りうるんだったら その時自分の心情がしっくりくる結末を思い浮かべちゃうもん。 今のうちだったら、「死」なんて考えもつかない選択だし、 どっちかってゆうと希望のようなものを感じる。 けど、もし、うちがもっと彼女に近かったら 「決断」した、勇気を持って踏み出したって思うんじゃなくて 「死」という手段によって状況から「逃げた」って思うかもしれない。 次にこの映画を見たとき、うちはなんて思うんだろう。 今と同じように思うのかな。 それとも、やっぱりあれは「死」というゴーストワールドに向かうバスだったって思うかな?
(長文ですいません 汗)
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