★3 | ビフォア・ミッドナイト(2013/米) | 9年前、男を誘ったあの尻は肥大し、浜辺に打ち上げられた鯨のような肉塊となり、彼の眼前で豊饒な脂を湛えている。自ら進んで脂の海へ乗り出す男の勇気は、役者根性の発露としか見えないほど、事態は男にとって懲罰と化している。 [review] | [投票(1)] |
★3 | ラスト・ナイツ(2015/米) | 描きたい徳に簡明さがなく、それを行動で表現するには曖昧すぎるとすれば、かかる行動が徳であると定義を与えてくれるような、指標となるキャラに依存するしかない。それが伊原剛志なのだが、 [review] | [投票(1)] |
★3 | フィクサー(2007/米) | ストレス耐性を備える女性という生き物に、あえてストレスを与えてみようという実験精神である。便利屋部隊が便利すぎて、話に緊張を見出す術はないが、ティルダがストレスに耐えてしまうため、便利屋部隊の放縦が事態をどこまでも進めてしまう依存関係ができあがる。 [review] | [投票(1)] |
★3 | 天と地と(1990/日) | 人間が下品な挙動を起こさないのは、語り手の文化的背景の賜物であると思う。悪趣味は確かに散見されるが、あくまでキャラの心情に対する隔たりがあるため、不快には達しえない。 [review] | [投票(1)] |
★3 | 007/ロシアより愛をこめて(1963/英) | 旅客車のコンパートメントの構造が、カバンのガス噴射に至るようなピタゴラスイッチ的顛末の予測という吉兆ないし凶兆の制御を通じて、あの莫迦らしいガジェットの数々を生かしている。 [review] | [投票(1)] |
★3 | 舞妓はレディ(2014/日) | 娘はサラブレットだから、ある日、唐突に芸が出来上がってしまい、課題が解消される感覚は、周囲の人物たちに担われている。それは、過去に無駄と思えた投資が、今、娘のサラブレット性を通して、結実した感覚。 [review] | [投票(1)] |
★3 | 名探偵ゴッド・アイ(2013/香港) | アンディ・ラウの亢進する甲状腺が、受け手を飛躍に馴らしながらも、本当に飛躍すべきではないものについては、われわれは確実に認知できてしまう。 [review] | [投票(1)] |
★3 | 夜霧の恋人たち(1968/仏) | 多動性障害が社会に受容される様が表現されていて、気送管や靴屋の構造といった、その過程で用いられるガジェットの濃密さが、飽きさせない。派生するゆるふわな恋愛観も、タバール夫人の造形として要約されることで、何か深いものを見た感を与えてくれるようだ。 | [投票(1)] |
★3 | 家庭(1970/仏=伊) | ルームメイトとやり取りするキョーコの芝居が強烈なのは、演出の統制が及ぶべくもないからだ。あの不穏さは、感情のマグマ溜まりとして働き、語彙の制約でそれを直截に表現できないほど、官能のほてりは匂うように、大気に拡散する。 [review] | [投票(1)] |
★3 | 終電車(1981/仏) | 抽象的な舞台装置と乱雑な舞台裏を往来しても、視覚的な亀裂が生じない。語り手の集中力のなさが、人を動かしてカットをつなぎとめるという技術的な勝利に貢献している。だが、これらは互いに侵食を企てる。侵食するから、愛の形が不明瞭だ。 [review] | [投票(1)] |
★3 | イントゥ・ザ・ワイルド(2007/米) | 親の不和に由来する家庭事情はそのままでは人生の課題として弱いように見える。自分に起因するものではないからだ。ゆえに、放浪と課題がリンクできず、単なる遭難事故の話になってしまう。 [review] | [投票(1)] |
★3 | ベティ・サイズモア(2000/米) | 自助努力の人であり、人生の課題も明確なモーガンが、偶然依存のレニーに引きずられる様は気に食わないのだが、この口惜は、この女性の異教的情景にある悲痛な魅力をモーガンと共有できた証拠でもあるのだろう。 | [投票(1)] |
★3 | 日曜日が待ち遠しい!(1982/仏) | ファニー・アルダンの堤真一顔が、なめらかなシトロエンの平滑面に映えながら街路を運ばれてゆく。その野性的な顔貌を隣でトランティニャンが不安そうに見守っている。 | [投票(1)] |
★3 | ザ・イースト(2013/米) | 仕事ができるという属性とヒッピーの親玉に共感してしまう情緒的な部分が、両立できないように見える。ヒッピー側に、これらの属性を止揚できる魅力は設定されておらず、恋が脚本の都合で左右されている印象が出てくる。 [review] | [投票(1)] |
★3 | きっと、うまくいく(2009/インド) | 言葉に不自由する異邦人への差別と筆記試験批判が両立するのは奇観でもなんでもない。どちらも階級間の流動性を否定しようとしている。この価値観を美談としては受け入れがたい。 | [投票(1)] |
★3 | キャプテン・フィリップス(2013/米) | これはわからなかった。スリラーになるような戦力比ではないし、事件によって醸成される人生の課題がハンクスにあるわけでもない。もっとも観察に値するのは海賊たちだが、彼らの窮乏は、二時間にわたるハンクスの豚のような喘ぎ声に圧殺されている。 | [投票(1)] |
★3 | 凶悪(2013/日) | 老人の虐待は、褒められたことではないとはいえ、世代間の怨念がある以上、そこに嗜虐心を見出してしまうのは自然な感情である。 [review] | [投票(1)] |
★3 | 悪の法則(2013/米) | 理解を超えるものは、行動を以て表現するしかない。したがって、キャメロンの内面開示がほかのキャラと同様に行われると、かかる俗化で、追われることのスリラーは望むべくもない。むしろ、驚きは転倒した形でやって来る。 [review] | [投票(1)] |
★3 | 日本の黒幕(1979/日) | 降旗にとっては苦手な題材で、もはやネタと割り切って見てしまった。そんな中にあって、田村正和と田中邦衛だけは相性が良かったらしく、ノリノリに撮られている。二人の役者としての資質が近いことがそれでわかってしまう。 [review] | [投票(1)] |
★3 | 忍びの者(1962/日) | 事件を動かしているのはあくまで雄之助で、雷蔵は状況に翻弄される。それをいいことに、雄之助はおふざけが過ぎ、加藤嘉ら脇役組と藤村志保の汎モンゴロイド顔が物語を型にはめる。 | [投票(1)] |