★5 | この世界の片隅に(2016/日) | 広島に育った、絵を描くことが大好きで夢見がちな娘、すず(のん)。彼女にあるとき、幼い頃に見初めたという呉の水兵、周作(細谷佳正)との縁談が持ち上がる。否も応もなく周作の家に嫁いだすずを迎えたのは、優しい義父母(牛山茂/新谷真弓)や辛辣な口調の義姉・径子(尾身美詞)、その娘である利発な晴美(稲葉菜月)だった。すずは彼らのなかで日々を重ね、太平洋戦争勃発後の物資の減少のなか、暮らしに喜びや楽しみを見つけてゆく。だが、すずから青春を奪ったことに負い目を感じる周作は、すずの幼馴染みである哲(小野大輔)と彼女の親密さに複雑な思いを抱くのだった。〔126分〕 | [投票] |
★4 | あの日のように抱きしめて(2014/独) | 第二次大戦後のベルリン。顔を包帯に隠した元歌手のネリー(ニーナ・ホス)は、ユダヤ人収容所を出て、親友のレネ(ニナ・クンツェンドルフ)に伴われて帰還した。ユダヤ機関の一員であるレネは、ネリーにパレスチナへの移住の話を持ち掛けるが、彼女は生き別れになった夫ジョニー(ロナルト・ツェアフェルト)との生活以外に関心を持たなかった。収容所で滅茶苦茶にされた美貌を元通りに整形したネリーは、ジョニーを探し続け、ついにその姿を米兵相手のクラブに見い出す。だが、ネリーは収容所で死んだとの知らせを頑なに信じるジョニーは、ネリーを自分の妻とは認めなかった。そしてレネは、ジョニーが遺産目当てでナチスに妻を売った男だと言い放つ。〔98分〕 | [投票] |
★2 | ストックホルムでワルツを(2013/スウェーデン) | スウェーデンの田舎町で電話交換手を務めるモニカ(エッダ・マグナソン)は、ひとり娘のエヴァ=レナ(ナディア・クリスティアンソン)を抱えながらも、ジャズ歌手として大成する野望を捨てきれずにいた。舞台に立った彼女の歌を聴いた評論家の誘いで夢に見たニューヨークで歌ったモニカだったが、評価は惨憺たるものだった。それでも父(シェル・ベリィクヴィスト)の反対を押し切って巡業の旅に出たモニカの前に現われたのは、母国語でジャズを歌いたい彼女の希望を理解するベーシストのストゥーレ(スベリル・グドナソン)だった。彼は作詞家のベッペ(ヨハネス・ワンセロウ)をモニカに紹介し、彼女のめざすジャズを形作らせる。〔111分〕 | [投票] |
★3 | 人生スイッチ(2014/アルゼンチン=スペイン) | マリーア・マルルが乗った飛行機の乗客全員がもつ恐るべき共通点とは。「おかえし」◆ウェイトレスのジュリエッタ・ジルベルベルグが迎えた客は、憎んでも憎み足りない男だった。「おもてなし」◆新車を買ったレオナルド・スバラグリアは、ボロ車の主との仁義なき壊し合いに突入する。「エンスト」◆レッカー車とのイザコザで全てを失ったリカルド・ダリンが、逆ギレの果てに知った皆の喝采を呼ぶ反撃法とは。「ヒーローになるために」◆富豪オスカル・マルティネスは息子の犯した事故を隠すべく、金の亡者たちとの交渉に入る。「愚息」◆そして人々は結婚式へと向かう。花嫁エリカ・リバスの破滅的なイベントへと…「Happy Wedding」〔122分〕 | [投票] |
★3 | 淵に立つ(2016/日=仏) | 町工場を営む利雄(古舘寛治)は、妻の章江(筒井真理子)やひとり娘の蛍(篠川桃音/真広佳奈)と穏やかな家庭を築いていた。そんな工場に、ある日利雄の昔馴染みの男・八坂(浅野忠信)が現われる。利雄によって早速家の一室を与えられた八坂を章江は訝るが、礼儀正しく慎ましい彼に、すぐに信頼の念を抱いた。その上母とともに教会に通う蛍に、八坂はオルガン演奏の手ほどきを行い、じきに彼女の心をもつかんでゆく。いつしか家族同然に振る舞うようになった八坂は、過去の大きな影を恐れる利雄に脅迫めいたセリフを吐き、そして悪魔のような爪痕を残して去った。8年ののち、傷の癒えない工場を新入りの青年・孝司(太賀)が訪れる。〔119分〕 | [投票] |
★4 | 湯を沸かすほどの熱い愛(2016/日) | 夫・一浩(オダギリジョー)の失踪後、女手一つで娘の安澄(杉咲花)を育ててきた双葉(宮沢りえ)は、末期ガンの宣告を主治医から受ける。数か月の命といわれ衝撃に沈む双葉だったが、すぐにせねばならない仕事が山積していると悟り立ち上がった。まず、苛めを受けて登校拒否を訴える安澄を奮い立たせ、言うべきことを言わせること。そして愛人とともに行方不明の一浩を探し出し、休業していた稼業の銭湯を再開させること。持ち前の明るさとバイタリティで双葉は仕事をこなし、一浩が愛人から押し付けられた連れ子・鮎子(伊東蒼)をも引き取って見事銭湯を立て直した。だが、まだ彼女の計画は始まったばかりなのだ。中野量太の商業映画デビュー作。〔125分〕 | [投票] |
★3 | ティエリー・トグルドーの憂鬱(2015/仏) | トグルドー(ヴァンサン・ランドン)は、数十年勤め上げた会社に馘首された。彼には不平不満を口にしない出来た妻(カリーヌ・デ・ミルベック)と、障害をかかえる息子(マチュー・シャレール)がおり、いま仕事を捨てられはしなかったが、かと言って労組とともに上層部と戦う余裕はなく、職安に通いつめていた。家を売ってローン返済にあてることも失敗し、職業訓練校で培った資格も役に立たない絶望的な毎日。そのなかでトグルドーはやっとスーパーの監視員の職を手に入れる。だが、それは客どころか同僚をも疑わねばならない冷酷な職務だった。そして長年勤務してきた女性社員の、出来心からの罪を告発したことで、彼は最悪の結果に向き合う。〔93分〕 | [投票] |
★3 | セデック・バレ 第一部 太陽旗(2011/台湾) | 日帝併合時代の台湾。「出草」と呼ばれる首狩りの儀礼をもつセデック族において、若者モーナ・ルダオ(ダー・チン)はふたつの首級を初陣で挙げ、勇者と呼ばれるに至るが、他部族の青年タイモ・ワリス(マー・ジーシアン)との間に決して消えないしこりを残した。頭目となったモーナの領地にやがて支配者として日本人が現われ、血気盛んな彼は余所者狩りを繰り返すも、やがてその支配が避け得ないものと認識させられるのだった。そして30余年を経て、モーナの息子タダオ(ティエン・ジュン)が日本人警官と衝突する。若者たちから日本への叛乱指揮を促された壮年のモーナ(リン・チンタイ)は、誇りのための勝算なき戦いについに立ち上がった。〔144分/スコープ〕 | [投票] |
★4 | 永い言い訳(2016/日) | 小説家の幸夫(本木雅弘)は、倦怠期に陥った妻・夏子(深津絵里)を友人との旅行に送り出したその日、彼女が事故死したことを知る。だが、その知らせを編集者の福永(黒木華 )との不倫行為の最中に受けた幸夫にとっては、それはショックに涙するような事件ではなかった。葬儀が続く中、夏子とともに客死した親友ゆき(堀内敬子)の夫であるトラック運転手の陽一(竹原ピストル)が、悲嘆の果てに同じ境遇の幸夫に電話をかけてくる。マスコミの取材続きに疲弊していた幸夫が彼の家を訪ねると、そこには受験間近な息子の真平(藤田健心)と保育所に通う娘の灯(白鳥玉季)がいた。幸夫は多忙な陽一に代わっての子供の世話を引き受ける。〔124分〕 | [投票] |
★5 | 彼は秘密の女ともだち(2014/仏) | 主婦クレール(アナイス・ドゥムースティエ)の青春は、まさに親友ローラ(イジルド・ル・ベスコ)とともにあった。幼時より笑うも泣くも一緒だった親友との日々は、他ならぬローラの急死とともに幕を引かれ、クレールは激しく落ち込む。そんな彼女に、夫のジル(ラファエル・ペルソナ)はローラを失った家を訪ねることを勧める。もとよりローラの遺児リュシー、そしてローラのかけがえのない伴侶だったダヴィッド(ロマン・デュリス)のサポーターとなることを決意していたクレールは、疑うことなく足を運ぶ。だが、ローラの家で彼女が見たものは、女装してわが子に授乳するダヴィッドの姿だった。衝撃を受けるクレールに、ダヴィッドはその理由を語る。〔102分〕 | [投票] |
★4 | ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ(2015/英) | 妻子より愛されながら、報いてやれぬパーキンズ(コリン・ファース)の生業は書籍編集者だ。彼は無名の作家たちの労作を発掘する才能をもち、ヘミングウェイやフィッツジェラルドをスターダムに伸し上げた。そんな彼の前に現れた作家ウルフ(ジュード・ロウ)は、出版社を盥回しにされたという小説『天使よ故郷を見よ』を売り込んで来る。興味を覚えたパーキンズは寸暇を惜しんで熟読、惚れ込んだあげくに出版を目指し添削を行う。できあがった作品は読書界に旋風を巻き起こし、次回作に向けてふたりの蜜月期が始まった。だが、それはウルフを愛するアリーン(ニコール・キッドマン)、パーキンズの妻ルイーズ(ローラ・リニー)を焦燥に導くのだった。〔104分〕 | [投票] |
★5 | オーバー・フェンス(2016/日) | 自分は平凡な人生を送るのだろう、と漠然と考えていた白岩(オダギリジョー)は、妻(優香)との離婚を経てその思いをかき消され、今は函館の職業訓練校に通っている。大工仕事の真似事の日々に、白岩は少しずつ自分が壊れてゆくことを自覚していった。そんなある日、彼は路上でダチョウの求愛行動を真似する聡(蒼井優)という女に興味を抱く。キャバクラで同級の代島(松田翔太)に改めてホステスとして紹介された彼女と、白岩はそのままベッドを共にする。しかし、聡は小さな不満から部屋より彼を叩き出した。白岩は来るべきソフトボール大会に向けての練習に没入しつつ、抑えきれぬ焦燥を噛み殺していた。佐藤泰志の「函館三部作」最終章。〔112分〕 | [投票] |
★0 | リスボンに誘われて(2013/独=スイス=ポルトガル) | スイスの高校教師ライムント(ジェレミー・アイアンズ)は、通勤中ひとりの女性が投身自殺しようとしているのを見、救出してとりあえず学校に連れてゆく。だが彼女はコートを残して失踪、その上着のなかに「言葉の錬金術師」なるポルトガル語の書物を残した。ライムントは矢も楯もたまらず、授業を放り出して謎を追いリスボンゆきの列車に乗り込んだ。書物を著したのはアマデウ(ジャック・ヒューストン)という男だ。彼に興味をもちその妹アドリアーナ(シャーロット・ランプリング)のもとを訪れたライムントだったが、すでにアマデウはこの世を去り、書物は100冊しか印刷されなかった稀少本だとのことだった。パスカル・メルシエの小説を映画化。〔111分〕 | [投票] |
★4 | めぐり逢わせのお弁当(2013/インド=仏=独) | ムンバイの主婦イラ(ニムラト・カウル)は夫とは冷えた関係ながら、愛妻弁当を夫のオフィスに届けてもらう努力を惜しまなかった。この街の弁当配達人は正確さに定評があり、その仕事を疑う者もなかったが、ある日ミスが起こる。イラの弁当は夫にではなく、定年間近の会社員、サージャン(イルファン・カーン)のもとに届けられたのだ。近所の食堂に弁当を頼んでいたサージャンはイラの料理上手さに驚き、舐めるように平らげてイラに感謝を示すメモを送る。手紙のやり取りによるふたりの奇妙な関係はここから始まるが、サージャンは後任のシャイク(N・シッディーキー)への仕事引継ぎを第一義に考え、愛に発展しそうな事態を危ぶむのだった。〔115分〕 | [投票] |
★3 | トム・アット・ザ・ファーム(2013/カナダ=仏) | 恋人の男ギヨームを失った青年トム(グザヴィエ・ドラン)は、葬式に出席すべく彼の故郷へ向かう。ギヨームの母アガット(リズ・ロワ)は落胆をあらわにしながらもトムの訪問を喜んでくれたが、その夜屈強な男がトムに詰め寄り、アガットに変なことを教えずギヨームの友人として演技しろと強要する。彼はギヨームの兄フランシス(ピエール=イヴ・カルディナル)であり、命令に従わないトムに容赦なく暴力をふるうが、アガットを哀れに思うトムは敢えてフランシスの元を去らなかった。だがフランシスの専横は度を越してゆき、弟の架空の「恋人」である娘の来訪を求める。トムは女友達サラ(エヴリーヌ・ブロシュ)を呼び恋人の演技をさせるのだった。〔102分〕 | [投票] |
★4 | サイの季節(2012/イラク=トルコ) | 革命後のイラン。反体制的な詩の執筆で30年投獄された詩人、サヘル(ベヘルーズ・ヴォスギー)が出獄してきた。彼は先に刑期を終えた妻ミナ(モニカ・ベルッチ)の影を追い、彼女のいるトルコに車を走らせる。革命前、サヘル(カネル・シンドルク)はミナと仲睦まじく暮らしていた。だが、運転手のアクバル(ユルマズ・エルドガン)はミナの美しさに我を見失い、彼女に愛を告白して家を放逐された。なおも執念を燃やすアクバルは革命軍幹部となり、虚偽の密告で夫婦を訴えたのだ。サヘルは若い娼婦(ベレン・サート)たちに案内されながら、ミナの街を巡り続ける。その胸に熱情を隠して。祖国を追われたバフマン・ゴバディ監督の心情を語る一作。〔93分〕 | [投票] |
★5 | 悪童日記(2013/独=ハンガリー) | 第2次大戦下、ナチスドイツの侵攻に晒されるハンガリー。ある双生児(アンドラーシュ・ジェーマント、ラースロー・ジェーマント)は兵士である父親(ウルリッヒ・マッテス)に疎開を命じられ、母方の祖母(ピロシュカ・モルナール)の住む田舎へと赴く。しかし魔女と噂される祖母は、母(ギョングヴェール・ボグナル)に激しい憎悪をむけ、その息子たちにも冷淡かつ苛烈に接するのだった。父より毎日の出来事を日記帳に記せ、と教えられた双生児は、決して逆境に屈することのないようにお互いを鍛え、その強さを磨いた結果をノートに記してゆく。そんな毎日のなか、ナチス将校(ウルリク・トムセン)が祖母の家を訪れる。〔111分/スコープ〕 | [投票] |
★3 | 裸足の季節(2015/仏=トルコ=独) | 親を失った5人姉妹…ソナイ(イライダ・アクドアン)、セルマ(トゥーバ・スングルオウル)、エジェ(エリット・イシジャン)、ヌル(ドア・ドゥウシル)、それにラーレ(ギュネシ・シェンソイ)はいずれ劣らぬ美しい娘に成長し、イスタンブールより離れた小村で活発に日々をおくっていた。ある時、5人は水辺で男子たちと騎馬戦に興じていたが、それを桃色遊戯ででもあるように告げ口された祖母(ニハール・G・コルダシュ)は顔色を変え、お仕置きをする。それのみならず、帰宅したエロル叔父(アイベルク・ペキジャン)の指示で5人は家に閉じ込められ、花嫁修業を強いられることになった。輝かしい青春を奪われた5人の反逆が始まる。〔97分〕 | [投票] |
★4 | 独裁者と小さな孫(2014/グルジア=仏=英=独) | 大統領(ミシャ・ゴミアシュウィリ)が君臨する独裁国家。だが、その全能の権力を真似して喜ぶ孫(ダチ・オルウェラシュウィリ)と玉座にあった彼の前で、突然その帝国は崩れ去る。クーデターを目前に妻子は国外に脱出し、期を逃した大統領と孫のみが混乱するこの国に残された。賞金首となったおのれの正体を偽り、大統領は床屋に忍び込み主人(ズラ・ベガリシュヴィリ)に変装の協力を強い、逃亡の旅に出る。旅芸人となった彼の道行きを前に、無罪嘆願も虚しく姉を処刑された娼婦(ラ・スキタシュヴィリ)や、愛する妻との間を引き裂かれた政治犯(ソソ・クヴェデリゼ)が現われ、彼の魂に揺さぶりをかける。そして大統領への包囲網は狭められてゆく。〔119分〕 | [投票] |
★3 | マジカル・ガール(2014/スペイン) | アニメ『魔法少女ユキコ』に憧れる白血病の娘アリシア(ルシア・ポジャン)。高価なヒロインのドレスを着たい娘の最後の願いを叶えるべく、失業中の父ルイス(ルイス・ベルメホ)は遂に犯罪に手を染める。その時出会ったのが人妻バルバラ(バーバラ・レニー)だった。孤独に耐え切れず、ルイスを呼び止め一夜の契りを求めたバルバラを彼は抱きしめるが、翌朝ケイタイに不倫の事実を楯に大金を求める声を残した。夫を裏切れないバルバラは旧友アダ(エリザベト・ヘラベルト)を訪ね、一夜のみの仕事を世話してもらう。しかしそののちも脅迫はエスカレートし、応えきれず制裁を受けたバルバラのため、恩師ダミアン(ホセ・サクリスタン)が行動に出る。〔127分〕 | [投票] |