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[コメント] アメリ(2001/仏)

水をはじく石。
グラント・リー・バッファロー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







アメリが水切りを好きなのは、彼女の心性を現しているからだろう。 投げられた石は水をはじくが、水の中には入らない。だが水とは接し ている。

彼女自身は、現実に向き合うことを嫌がる。しかし、自分は直接接しない もののそっと他人の幸せを後押しするという行為は、彼女にとって現実と 接点をもちたいという前向きな気持ちの現れだったのではないだろうか、 水をはじく石のように。それは、『桜桃の味』において、主人公が、他者 に土をかけてほしいと願うのが、彼自身誰かとかかわっていたい気持ちの 現れであったことを想起させる。そのような意味で、とても芳醇で映画的 な人物造詣であると感じた。

ディテールへのこだわりも素晴らしい。登場人物はすべてどこか神経症 とも言えるほどの、それぞれのこだわりがあり、それでいてどこか臆病 な部分をもっている、これはおとぎ話ではなく、優れて現代的な世界を 舞台にした物語である。

なのに4点なのは、始まり方が『マグノリア』以上に唐突で軽妙でテンポが よかったのに、後半は少しそのテンポが減速してしまうこと(それもアメリの空 想と現実の対比のためなのかもしれないが)。相手役の男の背負ってい るものが、いまいち見えてこなかったこと(設定はあるのだが)。カフェの トイレでことに及ぶなど下卑た表現が少々あることである。

おそらく一回見ただけでは見逃したディテールがたくさんあるという意味で、 機会があれば来年もう一度見てみたいと思った。

(評価:★4)

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