★1 | スパルタの海(1983/日) | ウルフ(辻野幸一)は問題児だった。エリートの両親(小山明子/平田昭彦)に罵声を浴びせ、暴力をふるい荒れ狂う。そんな彼を救う最後の手段として両親が選んだ選択肢は、「戸塚ヨットスクール」への入学だった。そこは戸塚宏校長(伊東四朗)のもと、スパルタ教育をもって情緒不安定児を立ち直らせることで知られた施設だった。同じように家庭内暴力に明け暮れた少女アッコ(横田ひとみ)とともに、ウルフは檻に入れられてスクールでの第一夜を過ごす。次の朝より過酷な特訓の日々は始まり、ウルフは皆と同じく鉄拳と怒号のなか、一隻のヨットを航行させる力を叩き込まれるのだった。実在の組織を描き、戸塚校長の逮捕で公開が危ぶまれた問題作。〔105分〕 | [投票] |
★3 | 狼の王子(1963/日) | 戦後の北九州。米兵ビガー(チコ・ローランド)に男の生きざまを説かれながら、浮浪児のタケたちは逞しく毎日を闘っていた。そんなタケの眼光に狼を見た日下組組長(石山健二郎)は彼を引き取り、後継者として育てる。だが、武二(高橋英樹)の名を得たタケの眼前で日下は加納組の男に殺され、武二は裁判所内で下手人と加納(田中明夫)を射殺、収監された。数年ののち、刑期を終えた彼は後見人の文五郎(加藤嘉)に逃亡を示唆され、東京に向かう。しかし、武二は監獄の中で衝動に突き動かされない、思慮深い男に育っていた。安保闘争の中、右翼街宣車に乗りただ立ち尽くす彼を、新聞記者の葉子(浅丘ルリ子)は腑抜けと挑発する。〔102分/白黒〕 | [投票] |
★3 | 愛の渇き(1967/日) | 関西、杉本邸。次男良輔の亡きあと、その妻であった悦子(浅丘ルリ子)はなおもそこに残り、義父弥吉(中村伸郎)の無聊を慰める日々を送っていた。彼女の献愛は長男謙輔(山内明)の揶揄のもとであったが、悦子は何事もなくいなしていた。そんなある日、敷地を散歩していた彼女は、若い使用人三郎(石立鉄男)の労働に勤しむ姿に目をとめる。野卑で逞しい、若さを誇示するかのようなその肉体は、悦子の忘れていた感情を叩き起こすのに充分であった。悦子は三郎に靴下を買い与え、彼がそれを履かないといって叱責するゲームを楽しむ。だがその間に女中の美代(紅千登世)が入るのを嫌い、悦子は敢えて美代のための小言を三郎にぶつけるのだった。〔98分/白黒〕 | [投票] |
★2 | 夜の勲章(1963/日) | 東京に事務所を構える私立探偵の阿久根(小林旭)は、ある日異父姉の伸子(二木裕子)を探してほしいという看護師の瑛子(松本典子)を迎える。瑛子のいうには、伸子には亡くなった父親の遺産が転がり込んでいるとの話だった。その金が目的の犯罪と見た阿久根は、伸子がホステスとして勤めていたクラブの支配人、篠村(内田良平)を訪ねる。自らも薬物を扱っていた篠村が麻薬を使い伸子を籠絡していたか、と詰め寄る阿久根だったが、篠村は首を振るのだった。そして伸子に麻薬を教えた奇術師(小沢昭一)も彼女の動向を知ることはなかった。この捜査の陰にもと刑事の岩井(大坂志郎)を見た阿久根のもとに、伸子は死んでいたとの情報が入る。〔101分〕 | [投票] |
★2 | ゆがんだ月(1959/日) | 神戸。桂木(長門裕之)は人形問屋の跡取り息子ながら、やくざに身を落とし刹那的な日々に溺れていた。ある日彼は、兄貴分の米山(高原駿雄)が他ならぬ同じ組の立石(梅野泰靖)によって殺害されるのを目撃する。口止め料を上から受け取った桂木だったが、その不条理に苛立ちを感じ情婦である奈美子(南田洋子)にはそれを打ち明けた。それだけで事は終わるはずだったが、米山の妹である文枝(芦川いづみ)との出会いから彼女に懊悩を見抜かれた桂木は、真実の経緯を新聞記者の木元(大坂志郎)にぶちまけ、東京に逃亡するのだった。桂木は文枝を追うが、奈美子、そして桂木を狙う刺客も彼に続き東京の土を踏んだ。〔88分〕 | [投票] |
★4 | おじいちゃんの里帰り(2011/独=トルコ) | ドイツ。老いたる男フセイン(ヴェダット・エリンチン)はトルコ移民の大家族の長である。散らばった子や孫たちを本家に集めた彼は、トルコへの家族たちの帰属意識のなさを憂いて、故国に築いた新しい本家への旅を提言する。英国人の恋人の子供を身ごもった孫娘のチャナン(アイリン・デザイル)、またトルコとドイツの間で揺れる幼い孫チェンク(ラファエル・コスーリス)らをも伴って。昔、若きフセイン(ファーリ・オーゲン・ヤルディム)は妻と三人の子供を思ってドイツへ出稼ぎに出、すぐに家族たちに新天地への移住を持ち掛けた。だが妻も子供たちも、祖国とは文化も宗教も違うドイツに当惑し、毎日を懸命に戦わざるを得なくなった。〔101分〕 | [投票] |
★3 | 黒い海峡(1964/日) | 恩義ある船場組長(山形勲)に番犬のように付き従う槇(石原裕次郎)は、組のために殺人をためらいなく犯し3年を牢内で過ごした。そんな彼への恋情を断ち切れない組長の娘・則子(十朱幸代)を振り返りもしない槇を、同期の男・哲次(中谷一郎)は責め、堅気になって愛を貫けと勧めるのだった。だが、その哲次が恋人であるクラブ歌手・知佐子(吉行和子)とともに組を出奔し、あまつさえ追手に差し向けられた組員を殺害したとの報告が届く。船場の命を受け、哲次を追って神戸に飛んだ槇は知佐子が歌うクラブに潜入し、彼女を受け入れた神戸の大物・大月(垂水悟郎)と対面する。大月が哲次に認めた利用価値とは何か。〔92分〕 | [投票] |
★3 | ジェームス・ブラウン 最高の魂を持つ男(2014/米) | スーパースター、JB(チャドウィック・ボーズマン)は最底辺の環境で生をうけた。母(ヴィオラ・デイヴィス)に捨てられ、父(レニー・ジェイムス)に売り飛ばされた少年期の彼は、売春窟にあって彼を育てたハニー(オクタヴィア・スペンサー)のもとで、みずからの能力を武器に暮らしてゆく決意をはぐくまれた。大人になり微罪で投獄されたJBは、そこに慰問にきたゴスペルグループのバード(ネルサン・エリス)と友情を結び、彼によってその能力を見い出される。ともにソウルミュージックに転じ、謀略と冒険を重ねスターダムにのし上がってゆくJB。絶大な支持を得てアポロシアター公演を成功させた彼だったが、その専横から離反者を招いてゆく。〔139分〕 | [投票] |
★3 | サンドラの週末(2014/ベルギー=仏=伊) | ソーラーパネル工場で働くサンドラ(マリオン・コティヤール)は、夫のマニュ(ファブリツィオ・ロンギオーヌ)とふたりの子供を抱えている。あるとき彼女は体調を崩し、休養を余儀なくされた。そして復帰したサンドラを待っていたのは解雇の知らせだった。16人の同僚にボーナスを出すためには不可欠の条件だったという。しかしサンドラにとっては、マイホーム入手から新たな生活を始める矢先の出来事であり、死活問題といえる事件なのだ。同僚のとりなしでこの決定は次の月曜に持ち越され、改めて彼女の復職と皆の賞与は天秤にかけられる。ジャン・マルク主任(オリヴィエ・グルメ)の妨害にもめげず、サンドラは同僚の説得に出る。〔95分〕 | [投票] |
★4 | パレードへようこそ(2014/英) | 大学生ジョー(ジョージ・マッケイ)はふとしたことから、ある団体のデモ行進に巻き込まれ炭坑夫支援の旗を担がされる。その団体とはマーク(ベン・シュネッツァー)らが主催するレスビアンとゲイの団体LGSMだったのだが、初めての行動に頬を紅潮させてジョーは仲間入りし、ウェールズの炭坑村に向かった。だが、団体の内容を知った村の人びとは、以前アクセスしてきた他の町村と同じく尻込みをする。それでも労組の代表ダイ(パディ・コンシダイン)やクリフ(ビル・ナイ)はかれらの好意を素直に受け入れ、その行動に感謝を捧げた。そして交流会を開催することで皆もLGSMを受け入れてゆくが、嫌悪を向ける者たちは密かに内部分裂を目論むのだった。〔121分〕 | [投票] |
★3 | あん(2015/日=仏=独) | 公園にある小さなどら焼き屋。ワケありの男、千太郎(永瀬正敏)はここで雇われ店長として働いていた。女子中学生たちのほかは寄り付くこともない店に、ある日見知らぬ老婆、徳江(樹木希林)がやってきて、バイトに雇ってくれという。適当にあしらって帰らせた千太郎だったが、徳江が置いていった手作りのあんをなめた彼は、その旨さに言葉を失う。徳江は手が不自由だったが、50年あんを煮込み続けたベテランだったのだ。常連の中学生ワカナ(内田伽羅)の助言もあって千太郎は徳江を雇い、あんの噂は噂を呼びどら焼き屋は大繁盛するようになった。だが、オーナー(浅田美代子)は徳江がハンセン病患者との疑いをもち、解雇しろという。〔113分〕 | [投票] |
★3 | アリスのままで(2014/米) | 言語学教授として名を知られる50歳のアリス(ジュリアン・ムーア)にとって、その不可解さは講演会で檀上に立ったときに始まった。ここぞというときに訴えたいある用語が思い出せない。ボケはじめかと自嘲する彼女だったが、大学一周のジョギングを終えた時、道が判らなくなって気を動顛させた事件に夫ジョン(アレック・ボールドウィン)を伴い病院へ向かうことを決意する。果たして、彼女は若年性アルツハイマー症だった。アリスは教授の座を退かざるを得なくなり、今はそれぞれに仕事をもつ子供たちにその病状を告白するに至った。次女のリディア(クリステン・スチュワート)らは母の記憶が消えぬ間にそのメッセージを受け取ろうとするが、道は険しかった。〔101分〕 | [投票] |
★4 | きみはいい子(2015/日) | 若き男性教師・岡野(高良健吾)は担任のクラスをまとめようと苦心しながら、身勝手な子供たちや輪をかけてエゴイスティックな親たちに辟易し、教師としての立ち位置を見出せずにいる。幼い娘を抱える主婦・雅美(尾野真千子)は幼時の自分に加えられた折檻を忘れられず、子供たちとよい関係をもつママ友(池脇千鶴)を横目で見ながらも娘に暴行する毎日から逃れられない。夫も子も持たない老婦人・あきこ(喜多道枝)は孤独の中でボケの症状を隠せず、スーパーの店員(富田靖子)らを煩わせている。大人たちはみな誰にも頼らずに外界に接して傷口を広げながらも、他ならぬ周囲の子供たちにヒントを発見し、行動の指標を与えられてゆくのだ。〔121分〕 | [投票] |
★1 | Mommy マミー(2014/カナダ) | もうひとつのカナダでは、発達障害児を親が危険な存在と見たとき、法的手続きを経ずに施設に拘束させられる法案が可決されていた。シングルマザーのダイアン(アンヌ・ドルヴァル)はこの風潮の中、矯正施設からわが子スティーヴ( アントワーヌ・オリヴィエ・ピロン)を退院させる。勝気でしたたかなダイアンではあったが、時に暴力と暴言に歯止めが効かなくなる障害児スティーヴを溺愛していたのだ。だが、それが自らの社会的地位を危機に追い込んでいる事実をも把握していた。そんなある日、隣人の教師カイラ(スザンヌ・クレマン)がトラブルを起こしたスティーヴを介抱する。ここから母子は閉じた関係を終え、外界との繋がりを模索してゆくが…。〔138分/正方形〕 | [投票] |
★2 | サンシャイン 歌声が響く街(2013/英) | スコットランド。兵役を終えて帰国したデイヴィー(ジョージ・マッケイ)を迎えた両親、ロブ(ピーター・ミュラン)とジーン(ジェイン・ホロックス)は銀婚式を迎えようとしていた。妹のリズ(フレイア・メイヴァー)もデイヴィーとともに帰った兵士アリー(ケヴィン・ガスリー)との恋情をはぐくみ、一家は祝福のムードに包まれる。その中でリズはデイヴィーに、移民階級の同僚イヴォンヌ(アントニア・トーマス)を紹介、ふたりは忽ちの内に恋に墜ちるのだった。だが幸福のうちにあったロブにひとりの女性から手紙が届き、彼は愕然とする。ロブは24年前に過ちを犯し、今まで知らなかったもうひとつの命をこの世に産み落とさせていたのだ。〔100分〕 | [投票] |
★3 | 弾丸大将(1960/日) | 米軍演習場での弾拾いを稼業とする善三郎(南広)は、陽気でケチなお調子者だ。毎日平原をいち早く駆け抜け、仲間の2〜3倍の不発弾を拾って小金をため込んでいる。そして仕事仲間の大谷が死んだのち、その後家さんのマキ(淡島千景)に思いを寄せてモーションをかける善三郎だが、ひとり仕事に没頭する彼女にはフラれ続けていた。それでもメゲることを知らない彼は、米軍将兵の案内役や射撃訓練の的、酒の横流しや女の子の世話と八面六臂の活躍を見せ、張り切りすぎてヤクザに袋叩きにされるのだった。だが、警察の世話になった善三郎を救ってくれたマキは、思いもよらぬ男とねんごろになっていた。〔100分/白黒/スコープ〕 | [投票] |
★3 | ノサップの銃(1961/日) | 怒涛荒れ狂う納沙布の漁場に、銃を抱いた風来坊ガン(宍戸錠)がやってきた。その男ぶりに惚れたはねっ返り娘のはる(南田洋子)には目もくれず、ガンは仙田一家のテリトリーに向かう。漁場を二分する勢力のうち、落ち目の浅川に較べて仙田の勢いは大したものなのだ。浅川の親爺(稲葉義男)は昔気質の海の男で、大学出の息子、新次(葉山良二)の経営法に背き、自ら墓穴を掘って落ちぶれたのだった。そんな浅川に協力を惜しまなかった仙田の遺志を汲む娘ユキ(笹森礼子)は、新次とともに漁場の繁栄を築かんとしていたが、浅川を吸収せんとする叔父(富田仲次郎)と従兄の猛(平田大三郎)に妨害されていた。それを横目にガンはある策を練る。〔91分〕 | [投票] |
★3 | 青春の風(1968/日) | 神戸の短大にてフェンシングで鳴らした三人娘、光子(吉永小百合)、愛子(和泉雅子)、峯子(山本陽子)も今は成人し、社会に羽ばたこうとしていた。ひとまず光子は、ハウスキーパーとしてクーパー(E・H・エリック)家に高額で雇われる。愛子の兄で光子に思いを寄せる圭介(浜田光夫)は安サラリーゆえ彼女への求婚に躊躇するが、光子からはそんな優柔不断さを叱られるのだった。そこへ圭介に狙いを定めた峯子がアパートに押しかけたせいで、光子は圭介を誤解しすべてを棄てる巡礼の旅に出てしまう。後を追う圭介だが、思わぬ伏兵として放浪の画家岩太(杉良太郎)も現われ、恋愛模様は混乱を極めてゆく。〔83分〕 | [投票] |
★2 | 縄張はもらった(1968/日) | 一文字組代貸の次郎(小林旭)は、八年の刑期を終え娑婆に出て一文字組の凋落を知る。弟の仇と付け狙う日野(宍戸錠)を退け、病に倒れた組長を見舞った彼は、組長が世話になったという狭間組に礼をすべく出向いた。「殺しの狭間組」の異名をとる彼らだったが、表向きは温かく次郎を迎え、組のために働いてみないかと囁く。次郎のために用意された仕事は、青葉会と遠野一家が火花を散らすある村の土地買収だった。狭間組の目付け役・箱崎(二谷英明)を除けば一匹狼ばかりの部下たちのほかに、日野を子分につけられた次郎はイカサマ師の新庄(藤竜也)を青葉会の賭場に送り込むが、村娘の佐衛子(太田雅子)と知り合いある決意を抱くのだった。〔95分/スコープ〕 | [投票] |
★2 | 世界の果ての通学路(2012/仏) | そして朝はまた訪れる。子供たちはそれぞれに向かうべき学び舎への長い道を辿ってゆく。ケニアのジャクソンは、妹とともに象やキリンの生息するサバンナを横断する。アルゼンチンのカルロスは山羊飼いの仕事を終え、幼い妹をつれ馬に跨って高原を駆ける。モロッコのザヒラはスカーフで髪を覆い、女には不要と言われた教育を受けるため友人たちと山道をゆく。インドのサミュエルは、生まれつき萎えた足をものともせず弟たちに車椅子を押されて川沿いの道を進む。子供たちはおのおの大きな夢を抱え、その望みの実現を賭けて毎日を懸命に生きているのだ。パスカル・プリッソンの手になるドキュメンタリー。〔77分/ヴィスタ〕 | [投票] |