煽尼采さんのコメント: 点数順
告白的女優論(1971/日) | 観客に「覗き」感を与えるショットの数々。仰角や俯瞰の多用。余白を大きくとり、人物を画面の隅に配置。人物の姿を、別の被写体で遮る等。加えて、幾何学的な美術や、恐らく意図的に誇張された演技の、隅々まで計算された構成美。鏡と嫉妬と嘘の乱反射。 [review] | [投票(2)] | |
ミツバチのささやき(1972/スペイン) | 映画内映画としての『フランケンシュタイン』という構造。人造人間、機械仕掛けの奇蹟。現実の生命と、うたかたの幻影の曖昧な境界――。それはまさに、映画の事。息苦しいほどの、映画美の結晶体。光と影で構築された蜂の巣に閉じ込められる観客。 [review] | [投票(2)] | |
鬼火(1963/仏) | エリック・サティの、沈黙よりも静謐な音の響き。この映画に於ける映像の連なりもまた、その種の静けさを湛えている。「愛撫とは、この上なくそこに在るものを、不在として求める焦燥である」(E.レヴィナス)。届かない愛撫としての彷徨。 [review] | [投票(2)] | |
見えざる敵(1912/米) | ギッシュ姉妹のデビュー作であり、まだ幼さの残るその可憐さは、鮮烈な印象を与える。モノクロームで映し出されたその華奢な美貌は、サイレントという事も加わって、人形のような、人間離れした美しさがある。また、三つの空間を繋ぐクロスカットも見事。 [review] | [投票(2)] | |
8 1/2(1963/伊) | 「我々の心から唇へと上り来る詩句は、実は、記憶からやって来たものなのだ。(…)未来とは過去が人間の眼に見せる錯迷した相貌に過ぎない」(サルトルのマラルメ論草稿) [review] | [投票(2)] | |
友だちの恋人(1987/仏) | 男と女の関係で、「これは友情」と自他に言い聞かせるのは大抵、そうしてブレーキをかけなければならない感情が芽生えつつある徴候?(ロメールの完璧な色彩設計による感覚的かつ作劇的な妙技を見よ!) [review] | [投票(2)] | |
戒厳令(1973/日) | 戒厳令という例外状況、暴力に魅入られつつも、怖れ、忌避する北。朝日平吾の血塗れの服の扱いの如く、血腥い事は他人に押しつけ、自らは「連絡しただけ」の立場に居、永遠に「十数える」事しかできぬ革命家。全てを観るだけの存在=天皇を夢見た男。 [review] | [投票(2)] | |
人間の約束(1986/日) | 人間が約束し得る事と、人間に約束されたもの。人間の尊厳と、人間の宿命。 [review] | [投票(1)] | |
ダーティハリー(1971/米) | 十字。銃。対象との「距離」と、それのゼロ化がもたらす倫理的緊張。 [review] | [投票] | |
42丁目のワーニャ(1994/米) | 失意と倦怠の物語、『ワーニャ伯父さん』。それを活気ある現在進行形に転換する、ルイ・マル最後の力業。うち棄てられた劇場という、過去へ向かいつつある場所と、劇の準備という、不確定の未来へ向かう行為。対照的な時間の出逢いそのものがドラマだ。 [review] | [投票] | |
ホワイトハンター ブラックハート(1990/米) | traveling(旅/移動撮影)による、travelingへの考察。撮影という罪、撮影という罰。 [review] | [投票] | |
善き人のためのソナタ(2006/独) | 「耳をそばだてる者」が聴いてしまったソナタが象徴する、芸術の無償さ。どの役も、独特の人間臭さを醸し出していて、長尺にも関わらず、人物を見ているだけでも飽きない。意外にユーモアもあり、それがまた、人間の切ない在り方を浮き立たせる。 [review] | [投票(13)] | |
時をかける少女(2006/日) | テーマは、過去の修復――から、時間の共有へ。芳山和子(大林版ヒロイン)の職業。キャッチボール。衝突や転倒の危険を孕みながら突っ走るヒロインの、身勝手と純粋、つまりは青春。 [review] | [投票(10)] | |
ジョーズ(1975/米) | 弦楽器の二音の反復の速まりが緊迫感を呼び、そこに被さる管楽器の鈍い音が、水中を横切る鮫の巨体を思わせる。足場のない海に半裸で浮かぶという、無防備な状況。鮫がいつどこに現れるか分からないせいで、何もない海自体が恐怖の対象として人間を包囲する。 [review] | [投票(8)] | |
天国と地獄(1963/日) | 外観は、格差問題を織り込んだ社会派サスペンスだが、実は人間の心理の純然たる闇、その内なる天国と地獄が描かれている。僕には、犯人の動機らしきものが見えた気がした( [review]にて詳説)。 [review] | [投票(8)] | |
松ヶ根乱射事件(2006/日) | これは、事件。 [review] | [投票(8)] | |
太陽(2005/露=伊=仏=スイス) | 強いられた一人芝居として、虚空に‘日本’を描かされる天皇。しかし彼は、ロシア人監督が考えるような、唯一神的な存在だったんだろうか。 [review] | [投票(7)] | |
秋刀魚の味(1962/日) | 頻繁に同一語句を反復する台詞回しが刻む小津的リズムはカット割にも表れ、効率的に物語を語る上では幾らか不要な(この「幾らか」という微妙さが絶妙なのだが)筈のカットが映画的時空間を現出する。不気味な傑作。 [review] | [投票(6)] | |
晩春(1949/日) | 魔物のようにさえ思える紀子(原節子)だが、彼女は自身の立場の不安定さに喘ぐ存在でもある。表情の振り幅の大きさ、彼女自身の動揺によって、映画全体を動揺させる眩暈的なダイナミズム。 [review] | [投票(6)] | |
タクシードライバー(1976/米) | 魔物のように登場するタクシー。その怪物じみた迫力とは裏腹に、それは飽く迄もただのタクシーにすぎない。この、一歩退いて見れば滑稽にも思える、狂気の画面。或いはこの映画そのものが、一つの皮肉なジョークなのか。 [review] | [投票(6)] |