[コメント] ダークナイト(2008/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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素晴らしいまでにしっかりと作られている映画だと思った。テーマを踏み外すことなく緻密に練られた脚本、煮詰められたキャラクター、それに応えるだけの力を見せる出演者、隅々まで目の行き届いた画面作り。スクリーンからは終始クラシック音楽を聞いているかのような重厚な雰囲気が漂ってくる。ものスゴく優等生の匂いがする。
だからと言って重苦しくつまらないかと言えば全くそんなことはなく、僕らはトラックの空中一回転や病院爆破(パンフによるとこの二つは実際に撮影したものらしい)に喝采を挙げ、そして上映終了後には心の中に一筋の引っ掛かり(問題提起)と僅かな光明(子どもは真実を知っている)が残される。完璧すぎる。ここまでよく出来ているともう評価云々というより、出されたものを拝領するしかない気分にすらなる。ちなみにそれでも☆4なのは、僕が「歪でも突き抜けた瞬間のある映画が好きだから」っていう好みの問題。
中でもやはりジョーカーのキャラクターは群を抜いており、「口元の傷痕の理由が毎回違う」なんていう設定はもう思いついた人天才じゃないかと思った。あれに気付かされた瞬間、ジョーカーの持つ狂気の度合いが2、3段上がった。また病院爆破のシーンでスイッチが故障して全崩壊まで一拍置くという“間”も最高だ。ヒース・レジャーの演技が高く評価される今回のジョーカーだけど、そもそも脚本の段階でのキャラクター設定が半端じゃないんだ。この役もらった役者はきっと幸せだろうと思う。もちろんヒース・レジャーがそれに相応しい演技を見せたことは大前提としての話ね。舌なめずりの癖とかメイクの落ち具合とか、あと部下の腹の爆弾が爆発した瞬間の「ユラリ」とした感じとか色気が半端じゃない。
またトゥー・フェイスを演じるアーロン・エッカートの、「危なっかしい“揺るぎない正義”」も大変に良かった。トゥー・フェイスになってからはどうしても特殊メイクありきで面白みに欠けてきちゃうんだけど、そこに至るまでの光の騎士っぷりは過不足なかったと思う。
結局これって日本における『仮面ライダー THE FIRST』なんだろうな。そのヒーローのことが好きで好きでたまらない人たちがいて、そんな人たちの「今だからこそ作れるハードな作品が観たい」という思いに応えようとして作られる作品。僕は「仮面ライダー THE FIRST」観てないんでそっちの完成度はわからないんだけど、今作はきっとそんな気持ちを抱えたバットマンファンが十二分に満足する出来なんだろう。こんな作品が作られるだけの支持層がいて、それを受ける才能ある作り手がいて、潤沢な資金があって、しかも僕みたいな門外漢から驚きの声が上がったりするんだから、これもうファンとしては最高に幸せなことだ。ぶっちゃけ大変に羨ましいと思った。
あと裏MVPとしては船の起爆スイッチを投げ捨てる囚人を挙げたい。奴はきっと人を4〜5人は殺してて、この時は罪を悔いながら判決を待ってるんだ。そして死刑判決後はこの日のことを自らの誇りにして、微笑みながらグリーンマイルを歩くんだよ。そうに違いないよ。彼こそが本当のダークナイトだ。
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