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赤い戦車さんのコメント: 更新順

★4カジノ(1995/米)カジノのスロットや煙草の紫煙を際立たせるバーの反射光、ラスベガス市街の眩惑的なネオン。或いは真上からスポットライトのように人物を包み込み、顔の影を強調する照明。それが非現実感を増幅させ、作中の虚栄と喧騒の日々を見事に浮かび上がらせる。大した事ない話を盛り上げようとする編集・カメラワークの様々なテクニック披露もまた同様。90年代スコセッシ作品では本作が好み。[投票]
★2ウルフ・オブ・ウォールストリート(2013/米)嵐の場面にしても、乱交の場面にしても乱闘の場面にしても、往年の元気が全く無い。それはつまり画面にダイナミックさが微塵もないということである。ディカプリオの人物説明として「こいつは頭が弾けててヤバい奴だぞ」というイメージを冒頭から綴っていくわけだが、ヘリの降下シーンや的当てから最後まで、果たしてこれが最善のカメラ位置・照明・編集と言えるのだろうか。演出的創意工夫に欠けているように思えるのだが。[投票]
★4ダーティファイター 燃えよ鉄拳(1980/米)ホークス的な前作の方が個人的には好みだが、バディ・ヴァン・ホーンは『静かなる男』相手によく健闘していると思う。イーストウッドソンドラ・ロックが宿泊するモーテルでの登場人物集合シーンは常軌を逸していて爆笑もの。[投票]
★3断崖(1941/米)これはジョーン・フォンテインをもっともっとサディスティックに追い詰める濃厚なサスペンスか、逆に彼女の勘違いを徹底的に馬鹿馬鹿しく描くコメディのどちらか一方に振り切れるべきだったのではないか。どうにも中途半端で、大きな盛り上がりを欠く。むしろ序盤のロマンスの方が面白いとさえ思えてしまう。[投票]
★4逃走迷路(1942/米)3.5。あまりヒッチ好みとはいえない女優だが、むしろ女優を取り巻く人物描写が曖昧でその点の方が弱い。主人公も愛国か恋愛かで位置づけが明確でないし、悪役も最後に翻意をしてしまう。一方で冒頭のどす黒い煙が右から流れてくるショットの不穏さや橋からの飛び降りショットの驚き、パーティ会場での包囲、映画館のスクリーンの利用法、そして勿論クライマックスなど、冴えたカットが多数あるのも事実で嫌いな作品ではない。 [review][投票(1)]
★5三十九夜(1935/英)めまい』と並んで私のヒッチコックベスト。嘘八百を並べ偶然(という名の映画的必然)に助けられ危機を次々と乗り切っていくその運動速度の驚異的なこと。行動の理由・説明を排するか行動の後にその理由がやってくるから運動が生命力を持つ。新聞や逃亡など大小のサスペンスに政治集会の演説や宿屋の夫婦など虚構性を際立たせるありとあらゆる荒唐無稽。最初からラストショットまで映画藝術(藝術映画ではない)の粋だ。[投票]
★4ヒッチコックのゆすり(1929/英)サイレント映画かと見紛う冒頭シーンや連鎖される「円」「顔」「手」のイメージ、トーキーへの移行に伴う音の実験など若き巨匠の才気に圧倒される。刺殺シーンの見せない演出、そして包丁の妖しげな煌き。影の巧みな使い方も素晴らしい。終盤はヒロインの心理的葛藤が映画の速度を減衰せしめているが、それでも充分面白い。前半は『勝手にしやがれ』にも劣らない革新的な仕事だ。[投票(2)]
★4NOVO ノボ(2002/仏)傑作。同じ「記憶を保てない男」に関する映画でも、『メメント』より遥かに視覚的だ。記憶を保てないということは主人公にとって過去は無に等しく、常に今(現在)しかない。混乱する記憶を体現するかのように映画は崩壊寸前まで断片化を推し進め、「今」の刹那性、そして映画の現在性を強調する。一カット間違えれば駄作になりかねなかったリモザンの映画的冒険。その成功を祝福しよう。フィナーレのかっこよさよ![投票]
★4農夫の妻(1928/英)ヒッチコックの喜劇的側面(常軌を逸した荒唐無稽、馬鹿馬鹿しさ)がよく出ている。子犬の大群、プディングの揺れ、繰り返されるヒステリー。それだけでなく、誰が椅子に座るかや階段を使ったカット繋ぎはまるでサスペンスのように撮られている。紙に名前を書くことによる感動、暖炉に照らされたリリアン・ホール・デイビスの美しいアップ。[投票]
★3毛皮のヴィーナス(2013/仏)ポランスキーの意図に沿って役者動かして演技させてフレーミングして編集して、ポランスキーの指示通り計算通りに仕上がってる感じ。人によっては「立派」「巧い」と思わせるのかもしれんが、その指示・計算から映画が逸脱することの無い退屈さが私には辛い。燃え上がる部分がない。[投票(1)]
★4フランシス・ハ(2012/米)殆どのショットが動作の途中から始まっているが、それを更にジャンプ多用の繋ぎで運動感を失うことを恐れるかのように前へ前へと推し進める。一見すると軽やかなようにも見えるが、アクションが止まることを病的に恐れる臆病さのようにも映る。それは本作の主人公の一定の場所に留まらない姿にもダブってこないだろうか?しかし今時ユスタシュやらジャムシュやらヌベルバグやら趣味が良すぎるね、ベタすぎると言い換えてもいい。[投票(1)]
★4極道の妻たち 情炎(2005/日)血飛沫の表現は北野武座頭市』の影響もあるか。3つあるアクション的見せ場のカット割が思いのほか明晰で見やすい。高速度撮影の多用は功罪半ばだが決め決めの使い方で燃える。言語を介さない高島礼子杉本彩とのダンスシーンの素晴らしさ。台詞に頼ってしまう弱いカットもあるが、全般に動物や食べ物の湯気、水面の揺らめきなど無関係のものを積極的に画面に取り入れ運動感を高めようという努力が見られる。 [review][投票]
★4透明人間(1992/米)マウス・オブ・マッドネス』と並びカーペンターの賢さが存分に味わえる傑作。チェヴィー・チェイスの姿が見える一人称ショットと三人称ショットを混乱させずに配置し、可視/不可視の領域を常に視覚で、アクションとして提示するその手腕。暗転、オーヴァーラップの使い時も心得ている。知識さえあれば誰でも撮れる映画などよりも、こうした真に高い知性を備えた映画(マイケル・マン等)をこそ評価せねばならん。[投票]
★3ユリシーズの瞳(1995/仏=伊=ギリシャ)冒頭20分が良い程度であり、これはアンゲロプロスの中でもアクションの驚きが最も希薄な部類ではっきり言ってつまらん。視覚的主題が散りばめられてるわけでもなし、どうでもいいショットまでさも重厚そうに長回ししてんじゃねえよ。いくら照明に凝り画面のディテールを構築しても、肝心のアクションの事件性を捕まえていなければ沐猴而冠である。[投票]
★4瞼の母(1962/日)弟分の母親に字を書いてもらう序盤で既に涙腺が緩む。錦之助にもたれるように母親が被さり、字を書く。それをまず正面から、続いて横のバストへ。錦之助、老婆に目をやる。また正面へ戻り、次に、涙ぐむ弟分の妹と弟分のそれぞれのアップ。そして両脇に妹と弟分を置き、奥に綿之助と老婆という構図。錦之助の今だ見ぬ母親が明らかに投影されている、そのことをショットで語れてしまう加藤泰の力量はやはり素晴らしい。 [review][投票]
★4幸せの教室(2011/米)トム・ハンクスにここまでコメディ演出の才能があるとは驚きだ。画面から笑いが入ってくる。とりわけジュリア・ロバーツが夫と喧嘩するシーンで顕著。チーズケーキもハハハ!の笑いも伏線だったことがよく分かる。経済学の教授がフレーム外から手を伸ばしてくるカットも可笑しい。数回あるスピーチ場面も単発的な笑いではなく、カットが変わるごとに笑いが増幅されるようよく練られ、逆算されている。これは面白い。[投票]
★4マッハ!!!!!!!!(2003/タイ)度重なる高速度撮影はアクションの事件性を薄め、アクションを通じた映画の盛り上がりではなく、単なる「このアクションを観ろ」になってしまう。故に今ひとつ燃えるショットが見られないのだが、例えばストリートファイト三連発において筋肉バカ、続いて素早いキックファイター、そして最終的に高低差や火花や光の点滅を持ち込むなど、この監督のアクション設計は「画面を面白くすること」に関して突出した才能を持っている。[投票]
★4荒野の用心棒(1964/伊=独=スペイン)初期レオーネの中では一番無駄なく引き締まっていてB級活劇に近いノリ。故に好み。ところで『用心棒』から盗んだのは脚本上のアイデアのみであって、演出それ自体はレオーネオリジナルであり、これが盗作になるなら全ての西部劇はグリフィスの剽窃になってしまうだろう。片方の一味を燃やす業火の禍々しさは『荒野のストレンジャー』に受け継がれている。[投票]
★3雨の午後の降霊祭(1964/英)誘拐場面や身代金強奪場面では街頭ロケの開放感と冴えたサスペンス描写が映画らしい見応えを形成する。この側面では黒沢清版にも負けてはいない。ただし、肝心の降霊シーンでは演出に困ったのか役者の演技のみに頼ってしまった感じがある。風、照明の明滅、物音といった何らかの要素で演技を補強した方が良かったように思う。[投票]
★4P2(2007/米)地下駐車場という限定された舞台の中で出来ることを殆どやり尽くしている。序盤、犯人との長めの対話では途中で人物にちょっとした動きをつけることで退屈を回避し、フォークを使ったサスペンス演出にも感心。その後もエレベーターでの水攻めなど数多い素敵アイデアやマクガフィン、人物の行動のみを描く様で勢いを持続させ、悪と対峙する車でのチキンレースに到っては思わず唸る。そしてスプリンクラーによる祝福の雨。実に見事。 [review][投票(1)]