川島雄三の映画ファンのコメント
寒山拾得のコメント |
わが町(1956/日) | 尺の短い半生記にはろくなものがないが、本作は見事な例外。 [review] | [投票] | |
新東京行進曲(1953/日) | 都知事とともにエリート小学校紹介する愚かなノリで、ミゾグチの左翼映画『東京行進曲』とはまるで関係のないユルい群像劇。北原三枝はまだ全くの子供、なぜ大坂志郎と結婚の約束をするのだろう。 [review] | [投票] | |
貸間あり(1959/日) | 技術的には川島喜劇の頂点のひとつであり、今に至るまでこのテクは超えられていないだろう。しかし盛られた話は単調で笑いに乏しいし、クールなフランキーは『幕末太陽伝』の二番煎じで冴えない。 [review] | [投票(2)] | |
飢える魂(1956/日) | 『続・飢える魂』と続きものの「第一部」で、単独で観ても仕方ないのでご注意。我々が川島に期待するユーモアとバイタリティとは真逆の愛欲メロドラマ。らしいと思える件は唯一、松坂牛にビール呑ませているショットだろう。 [review] | [投票] | |
銀座二十四帖(1955/日) | 森繁の映画ジョッキーの見事さで語り継がれるべき作品。「東京は日本の植民地」「銀座の電気使用量は秋田市と同じ」「サヨナラだけが人生」。 [review] | [投票] | |
還って来た男(1944/日) | 冒頭の階段や子供とともに町屋を疾走するキャメラなど、川島印を追うだけで愉しいのだが、話は散漫。大風呂敷をまとめてしまう腕力は見られない。織田作への遠慮だろうか。 [review] | [投票] | |
青べか物語(1962/日) | 土地、土地の名、ドキュメント、具象性、悲劇と喜劇。同じ周五郎作『どですかでん』に欠けていたものが本作には横溢している。向こう岸から手を振るだけで自分の映画にしてしまった桜井浩子の儚い笑顔が忘れ難い。 [review] | [投票] | |
グラマ島の誘惑(1959/日) | 史実の過密着パロディなのだから、アナタハン島事件について何も知らないで点数をつけるのはフライングなのだろう。機会を設けて勉強したい。森繁を圧倒する宮城まり子の怪演が素晴らしい。 | [投票] | |
縞の背広の親分衆(1961/日) | 畳みかける場面転換のスピード感でもってショットが変わる毎に次の人物に期待高まるという喜劇の理想郷が出現している。淡島千景、有島一郎、西村晃までもが即興演出に嬉々として参加しているのが判る気持ち良さ。 | [投票] | |
幕末太陽傳(1957/日) | このフランキーの昏さ、いつご陽気さを失うか判らぬ喜劇俳優の危うさ。 [review] | [投票(2)] | |
接吻泥棒(1960/日) | 好ましい喜劇で新珠三千代が冴えまくっているが、総じて型にはまっており、パクリを自白するかのように科白で引用される『グッドバイ』のほうがずっと面白い。 | [投票] | |
しとやかな獣(1962/日) | 金に細かい新藤色の勝った作品で、戦後とともにどんどん煮詰まり行く彼の閉塞感の優れた中間報告の趣。続編は『絞殺』か。 [review] | [投票(3)] | |
女であること(1958/日) | エレガントな豚久我美子とともに成瀬の世界に闖入した川島映画。嫉妬の交錯のなか、ほとんど何もしない中北千枝子が不気味。 [review] | [投票] | |
特急にっぽん(1961/日) | 笠原にしてははっちゃけないホンだが演出は好調。縦横無尽に駆けまわる女子職員群とサイレントに擬した車窓越しのドタバタは、モノクロ・シネスコ史上最高レベルのものと思われる。少なくとも黒澤より凄い。 | [投票(1)] | |
喜劇とんかつ一代(1963/日) | グルメと買収、化学実験、日仏交流、庶民賛歌が不思議に併存する高度成長喜劇。精養軒の実話ベースにつき当り障りのないドタバタに終始する。加東大介のプロ意識と池内淳子のおとぼけが見所か。 | [投票] | |
あした来る人(1955/日) | 話の程度が低いのは原作者が馬鹿だから仕方がないが、なぜ撮影までこれほどボロボロなのか。照明助手はレフ板の持ち方も知らないらしい。 [review] | [投票] | |
適齢三人娘(1951/日) | バイタリティ溢れるユーモアが数珠繋ぎに転がる様は正に川島喜劇の理想郷。松竹期では(私見では『とんかつ大将』と並ぶ)極上の面白さで全盛期を予感させている。 [review] | [投票] | |
とんかつ大将(1952/日) | 佐野周二の貴種流離譚。彼ばかりモテるのがリアルで、かつこれにより人物の入り乱れ具合が統御されており、彼等が立場立場で突入するクライマックスがやたらと白熱する。地域に入ることを讃えた愛すべき作品。 | [投票(1)] | |
お嬢さん社長(1953/日) | 主役がイモでどうしようもないが、後年のスピード感溢れる川島演出の片鱗が窺えるのが取り柄。桂小金治と大坂志郎がそっくりで二人並ぶと不思議な画になる。 [review] | [投票] | |
東京マダムと大阪夫人(1953/日) | 木造平屋建の二戸一住宅に連なる白ペンキの柵、転圧された道路の片隅で飼われるアヒル。オイルショック以前は、公園や学校でやたらとアヒルが飼われていた。あれは何だったのだろう。 [review] | [投票] | |
深夜の市長(1947/日) | ホンも平凡だが演出がまた恐ろしく凡庸でロマンスなど学芸会並。本当に川島なんだろうか。二枚目主演の安部徹が信じられないほどイモなのも半分は演出のせいだろう。気の毒。 [review] | [投票] | |
真実一路(1954/日) | 「弥平さんはお前の父親じゃないんだ」「ええっ」みたいなメロドラマ。不良がこんな簡単に悔悛するなら便利でよい。軍人の乗馬や東北飢饉の寄付金、千人針などの風俗描写がよく、小学校の前転用マットが昭和6年当時からあったのは個人的に発見だったがそのくらい。 [review] | [投票] | |
女は二度生まれる(1961/日) | 「男は一度しか生まれない」という揶揄でもある。 [review] | [投票(4)] | |
花影(1961/日) | 実話ならではの不可知の謎に覆われた即物描写と池内淳子の存在感でみせるが、まあ今更文壇バーの実態など珍重しても仕方がないという感想。小説技巧の限りを尽くした弩級の原作から筋だけ抜き出した具合。 | [投票] | |
箱根山(1962/日) | 美点はやはり『愛のお荷物』『特急にっぽん』系列のヒステリックな導入部でやたら面白い。本編は落ち着いた語り口なのだが東野英治郎だけがそのままテンション高く駆け抜けてお茶でうがいするに至る。 [review] | [投票(1)] | |
暖簾(1958/日) | 川島は立身出世を喜劇のモチーフとして肯定し続けた監督で、大島・増村世代とは一線を画している。本作はこの一面でもって成功した作品。 [review] | [投票(2)] | |
人も歩けば(1960/日) | 笑いだけが残る煙のような喜劇。 [review] | [投票] | |
女優と名探偵(1950/日) | 『松竹映画三十年 思い出のアルバム』併映の、スリ西條鮎子を追う私立探偵日守新一とともに大船スタジオを探検する企画もの。スタジオ内は平凡、追っかけは古典的なドタバタで何ということはないが、カメオの面々は豪華、西條がキュートでいい。 [review] | [投票] | |
明日は月給日(1952/日) | 川島喜劇と松竹ホームドラマの奇妙な混淆物。老け役の日守新一による詠嘆は決して悪くないけど、前年の『麦秋』と比べれば腰が浮いていて見劣りがする。当然だろう、川島喜劇は腰が浮いているのが特色なのだから。 [review] | [投票] | |
夜の流れ(1960/日) | 北村和夫の大傑作。怒気迫る虚脱感とでも云うべき抜群の造形で、この貧乏神の通る場所だけ画面が翳り暗雲が立ち込めるのだった。全体には開き直りのヤケッパチ版『流れる』の趣。 [review] | [投票] | |
風船(1956/日) | オツムの弱い芦川いづみはロシア文学のキャラの翻案だろうか。とても愛着が湧いた。 [review] | [投票] | |
洲崎パラダイス 赤信号(1956/日) | 消えた町を記録してしまった文化財映画。この前跡地を散歩してきたのだが、轟夕紀子さんの居酒屋跡と思しき場所にウヨった北方領土返還の大看板が立っていて驚愕。追善供養碑に参って周りの雑草抜いてきました。 [review] | [投票(1)] | |
イチかバチか(1963/日) | 最後まで川島は高度成長と地政学の作家だった。伴淳三郎の凄さに見とれていると、途中参入するハナ肇がさらに凄いという強力な重喜劇。 [review] | [投票(1)] | |
赤坂の姉妹 夜の肌(1960/日) | 風俗小説の生臭い面々に交じってぎこちない川口知子の初々しさと、彼女を批評する伊藤雄之助の海千山千が印象に残る。東宝系でここまで政治家を小馬鹿にする作品は珍しいのでは。 | [投票] | |
愛のお荷物(1955/日) | 冒頭の薀蓄と国会中継からフランキー堺のソロドラム辺りまで、実に愉しい。三橋達也と高友子の兄弟喧嘩の件など、とても生き生きとしている。後半は存外平凡な収束に向かい、残念。 [review] | [投票] | |
続・飢える魂(1956/日) | 日活期なのに松竹期に逆戻りしたかのようなお仕着せのメロドラマに終始した川島の失敗作。南田洋子は別嬪だがそれだけで、心動かされる魅力に決定的に欠けている。映画全体もそんなものだ。 [review] | [投票] |