★3 | フィッシュストーリー(2009/日) | 「法螺話=荒唐無稽(の実現)」がテーマにしては語りが窮屈すぎる。もっと奔放な演出が見たい。また台詞の恥ずかしさが私には耐え難い。もちろんよい部分もある。多部未華子は目つきのよろしくないところが可愛らしく、濱田岳の達者なのには舌を巻く。本篇ラスト数カットのバンドの視線演出などもグッと来る。 | [投票(1)] |
★5 | かぐや姫の物語(2013/日) | 映画やアニメーションとして云々するより、ひとまずギザの大ピラミッドやシスティーナ礼拝堂の天井画などと並べ置いてみたほうが落ち着きがよい。技術と予算を中心とする膨大な数と種類の諸条件が満たされたとき、人類はこれほどの創造物をものにしてしまえるのかと、ほとんど呆れにも近い畏れを覚える。 [review] | [投票(5)] |
★3 | 白夜行(2011/日) | ぬるい商業邦画とは一線を画した腹の据わりだ。堀北真希が持つべき性的なハイライトからは逃げているが、諏訪太朗や隻腕の人が蠢くバラック集落など各所の画面造型に見所があり、銀残しが顔面のグロテスクネスを寒々しく強調する。この「気持ち悪さ」が演出家の仕事=悪意だ。終盤の情緒垂れ流しはご愛嬌。 | [投票] |
★4 | サッド ヴァケイション(2007/日) | 非常にアクロバティックな映画。それはこの映画の『EUREKA』なんかよりも数段複雑で多層的な構造を特に指して云っているのだけれども、それを軽みさえ感じさせる作品として成立させてしまう青山真治の手際には心底驚かされた。 [review] | [投票(6)] |
★3 | まほろ駅前多田便利軒(2011/日) | こういうフィルムの感触を尊重した画面の映画はいつまでも見ていられる。米軍基地の大空など、審美的に決めすぎたカットも厭味なく私の瞳を愉しませる。瑛太と松田龍平の面構えもざらりとした異物感を張りつけて映画向きだが、「まほろ」の個性(あるいは没個性ぶり)には興が湧かない。町演出が丸腰だ。 | [投票(2)] |
★3 | おにいちゃんのハナビ(2010/日) | 「泣かせ」の手札が安直な揃いで、恥ずかしいシーンが多数。高良健吾でさえ紋切型の処理に手一杯だ。谷村美月も同様だが、このあざとい役どころにあって笑顔に媚びを感じさせない点は偉大である。また、さすがに花火はよく撮れている。最も感動的なのは花火が打ち上がってから音が届くまでの「時間差」だ。 | [投票] |
★4 | 苦役列車(2012/日) | 純然たる職業演出家としての達成が窺える、山下敦弘の最もプロフェッショナルな映画。おそらくそれは向井康介や近藤龍人、あるいは山本浩司や山本剛史といった名をクレジットに見出せないこととも無縁ではないだろう。撮影の充実度は同じく池内義浩がカメラを担当した『リンダ リンダ リンダ』に並ぶ。 [review] | [投票(13)] |
★3 | 彼女の人生は間違いじゃない(2017/日) | 瀧内公美が乗車する高速バスを筆頭に、高良健吾や柄本時生らの自動車など、作中人物の移動が移動手段の明示を伴いながら執拗に画面化され、積み上げられる。これ見よがしな方言使用を控える一方で、効率性を犠牲にしてでもジオグラフィックな正確さを志向した語りは、「土地」の物語において誠実である。 | [投票(2)] |
★3 | 千年の愉楽(2012/日) | 「生きている人と死者が対話をする場面があります。どのように撮ればよいですか?」「遺影が喋り出せばよい」この透徹した演出観こそが若松孝二だ。中上健次に対しても一向臆するところなく、「路地」のロケハンにすら頓着の形跡を見せない。中上に、そして「映画」に臆しているのは私たち観客ばかりだ。 | [投票(1)] |
★4 | ケンタとジュンとカヨちゃんの国(2010/日) | 文字通り「壁を壊すこと」を職業とする若者たちのロード・ムーヴィは、しかし決して全的な開放感に達することがない。いくつものシーンが不穏な息苦しさに覆われてしまう。壊すことのできない不可視の壁を前にしては砕け散るしかないのか。いや、おそらく彼らはそのような「華々しさ」とも無縁である。 [review] | [投票(2)] |
★4 | 狼煙が呼ぶ(2019/日) | 「予感」の映画。これを格好よいと認知できたとして、それは多分に切腹ピストルズの劇伴音楽によるが、何が何やら判然しない成り行きを映した画面には何かが始まる濃密な予感だけがむやみに充満していく。いかにも豊田利晃な面構えの連なる中、堂々たる主役の風情を漂わせた佇まいの渋川清彦が感慨深い。 | [投票] |
★4 | シン・ゴジラ(2016/日) | キャラクタの造型が純粋である。ある種の映画において「殺人者」は殺人者ゆえに人を殺め、「刑事」は刑事ゆえに捜査をする。その行動は必ずしも心理的根拠を要しない。同じく「巨大不明生物特設災害対策本部」がゴジラ対策に粉骨砕身するのは彼らが巨大不明生物特設災害対策本部の成員だからでしかない。 [review] | [投票(8)] |
★3 | ノルウェイの森(2010/日) | 瞬間移動の映画。移動のシーンはことごとく省略されている。「自動車」も「列車」も周到に排除されている。その代わり彼らはやたら歩く。菊地凛子が驚愕の高速散歩を繰り出す草原や公園のシーンに顕著であるように、しかしその徒歩はどこかへ辿り着くための移動とはなりえずに堂々巡りしかもたらさない。 [review] | [投票(10)] |
★3 | ジ、エクストリーム、スキヤキ(2013/日) | 井浦新と窪塚洋介は「大人になりきれない」とか「世事に疎い」とか以前に知能の程度が怪しまれる。というのは造型の加減の誤りだが、両名の俳優的人徳がそれを不問に付す。手探りの会話を記す前田司郎の筆はまったく精緻で、本筋が他愛なければ他愛ないほど隣り合わされた死が効いてくる仕掛けも頷ける。 | [投票(1)] |