★4 | BLUE ブルー(2020/日) | 才能とは物事を他人より巧みに成し遂げる能力のことで、強さとは物事を他人より持続的に維持できる能力のことだとしたら、瓜田(松山ケンイチ)だってその資格に値する。思えば学校にだって職場にだって、どこにだって“本流”のすぐ隣に瓜田のような奴はいた。 [review] | [投票(2)] |
★3 | Mank マンク(2020/米) | 世の不況をよそに“夢売り”という虚業が生み出すあぶく銭に浮かるハリウッドを舞台に、描かれるのは『市民ケーン』が成した映画的偉業ではなく、享楽的酔っぱらいノンポリ野郎の覚醒、というこれまたハリウッドお得意の古典的ヒーロー譚で、さしたる新味はない。 [review] | [投票(1)] |
★4 | 水を抱く女(2020/独=仏) | 深緑色をベースにした画調とバッハの協奏曲の旋律が60〜70年代の良質の欧州映画の趣を醸し出して心地よい。大人の恋愛物語に神話幻想がほどよく溶け込み、派手さはないが堅実な語り口が純愛劇のリアルを担保する。矛盾を承知で言えば地に足の着いたファンタジー。 [review] | [投票(2)] |
★4 | 市民ケーン(1941/米) | ケーンの死後、ニュース映像(風)に仕立てたプロットが延々続くのにまず度肝を抜かれた。以降、そのニュースを否定することが本作の目的となる。事実だと思おうとしていること、すなわちすべての“既成”を覆すためにこの物語(映画)はあるのです、と宣言するのだ。 [review] | [投票(4)] |
★3 | 脱出(1945/米) | 本作のハワード・ホークスの関心はドラマにはないようで、名だたる作家を連ねた原作も脚本もほったらかし。全勢力はボガードとバコールの掛け合いに集中投下され、二人の一言一行 は嫌味すれすれの様式美を醸し出す。で、箸休めは酔っぱらいとピアノ弾き。 [review] | [投票(1)] |
★4 | ノマドランド(2020/米) | 作中、何度も、何度も、何度も朝日が昇る。ファーン(F・マクドーマンド)が迎える“陽の光”は昨日も、今日も、明日も同じだが“光を迎える土地”は移り変わる。何に帰属して生きるかではなく、どう帰属するのかというオルタナティブな幸福を見い出すまでの一年。 [review] | [投票(7)] |
★4 | まともじゃないのは君も一緒(2020/日) | 成田のボケと清原のツッコミが楽しく微笑ましい。清原果耶の“お芝居”は芝居っ気がなく、喜劇ならではのエキセントリックさを感じさせない自然な存在感で、本当にこういゆう女の子いそうな気になってくる。ファッションも可愛く横浜のロケーションも品が良い。
| [投票(1)] |
★3 | わが生涯のかがやける日(1948/日) | 戦前の理想叶わず急転の民主化にも振り落され、エセ民主主義にかこつけて成り上がったヤクザの支配下に甘んじる男と女に仮託して、正しい民主主義のありかたを謳うという理想には敬服するが、いかんせん大衆を巻き込むべく共感装置としてのメロドラマがずさん。
[review] | [投票] |
★4 | ハムレット(1964/露) | 開巻は荒れ狂う波濤と堅牢な石壁を背景に激しく燃え盛るかがり火。激情を醸す不穏なフィックスショットに続き王家の急変に疾走する早馬、重々しく掲げられる喪旗、開かれる跳ね橋門と、躍動する波乱の予感にショスタコビッチの劇判が格調を与え一気に引き込まれる。 [review] | [投票] |
★4 | あのこは貴族(2020/日) | 階層格差は上下関係としてイメージされるが本作の「上流」と「庶民」は同一のレイヤー上に位置づけられ、ちょうど東京を中心に地方が周りを囲むような関係として描かれる。庶民から上流は漠とした憧れとして垣間見るが、上流は関心の外にある庶民など見ていない。
[review] | [投票(2)] |
★3 | 無頼(2020/日) | 地方のヤクザ一家の組長の半生にダブらせて、戦後の昭和史の熱量を“今どきの若い奴ら”に見せて挑発しようという魂胆なのだろう。私はリアルタイムで“あのとき”の空気を知っているのでとても面白かったが、昭和55年以降生まれの人にはたぶん「???」だろう。 [review] | [投票] |
★3 | アエリータ(1924/露) | 三角形を基調にした鋭角的で硬質な火星世界の造形が面白く、女王アエリータと侍女の衣装もキャラも楽しく見飽きない。地球パートは未整理な脚本と勘所をはずした演出でごちゃごちゃ感があり、無線技師の混乱ぶりが伝わってこず同時代のサイレントに見劣りする。 [review] | [投票] |
★3 | スタフ王の野蛮な狩り(1979/露) | F・ラングの『死滅の谷』みたいなファンタジーホラーかと思って観ていたら、だんだん横溝正史みたいになってきて・・・。あまりにも現金な幕切れに唖然。1601年(17世紀)に端を発した農奴解放の恨み伝説が、300年を経て1901年(20世紀)の初頭に光明をみる物語。 [review] | [投票] |
★3 | KCIA 南山の部長たち(2019/韓国) | 韓流っぽい過剰さを押さえた演出と表情のないイ・ビョンホンの硬質顔のストイックさに好感。耐えに耐えた末ののっぴきならない人情悲劇と思いきや、動機の多重性を臭わせる権力者の心理構造劇へ。落としどころの割り切りの悪さがエンタメとしてのキレを削ぐ。 [review] | [投票(1)] |
★3 | すばらしき世界(2021/日) | 今回の西川美和作品はずいぶんと優しい。私は監督の一筋縄ではいかない意地悪さが好きだったのでちょと拍子抜け。役所広司さんのお芝居が魅力的なので2時間あきずに楽しめましたが、この三上という男、なんのことはないハード仕様の車寅次郎ですね。 [review] | [投票(5)] |
★4 | 聖なる犯罪者(2019/ポーランド=仏) | 重そうな瞼をしたダニエル(バルトシュ・ビィエレニア)の目が雄弁だ。その眼差しは何かから身を守ろうとしているかのように不安げだが人を拒絶しているようにはみえない。この若者は良きにつけ悪しきにつけ、常に相手と真剣に対峙しているということだろう。 [review] | [投票(3)] |
★3 | 天国にちがいない(2019/仏=独=カナダ=カタール=トルコ=パレスチナ) | 中肉中背。猫背ぎみに少し顔を突きだし、でっぷりではないが歳相応にゆるんだ下腹のエリア・スレイマンの立ち姿に警戒感はない。目撃する“現実”に驚くでもなく呆れるでもなく、対象を見つめる視線に喜怒哀楽もない。あれこれ“起きる”が結局は彼が主役。 [review] | [投票(2)] |
★4 | 女相続人(1949/米) | うぶ、天然、世間知らずなキャサリンが見せる得意顔や困惑顔は微笑ましくすらある。そこに“しがらみ”に対して無防備にたれ流される良心をみるからだ。一転し、一滴の良心も漏らすまいと、彼女の顔に貼り付いた「拒絶」と「沈黙」のなんと恐ろしく攻撃的なこと。 [review] | [投票(1)] |
★3 | 生まれながらの悪女(1950/米) | 男たちが、よく言えばマイペースで鷹揚、悪く言えば我がままで間抜けだからだろうか、あまり困っているように見えず、ジョーン・フォンテインが悪女というより天然のモラルレスちゃんに見えて微笑ましくすらある。彼女のアイドル映画として楽しみました。
| [投票] |
★4 | ノイズが言うには(2010/日) | 何げない(とは言えないが)この日常描写のなかに周到な恣意が仕込まれたドキュメンタリーだということが徐々に分かってくる。この恣意は小田香自身の混乱した心情に直結しているため、実は本人にとって「周到」などでは決してないことがさらに分かってくる。 [review] | [投票(1)] |