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煽尼采さんのコメント: 更新順

★5インランド・エンパイア(2006/米=ポーランド=仏)リンチ自身の手持ちのデジカムによる撮影は、フィルムの質感を犠牲にしてはいるが、手振れや、不器用なズーミングが、覗く者=リンチの身体性を感じさせる。彼の主観に身を重ね、眼前の光景に立会う気持ちで観れば、奇妙な味わいが愉しめる。 [review][投票(3)]
★4DEAR WENDY ディア・ウェンディ(2005/デンマーク=仏=独=英)ダンディーズはゾンビーズ。死にとり憑かれた思春期のリビドー。『ドッグヴィル』の箱庭感が、演出法を引き継いでいた前作よりも却って再現されていたのには驚かされた。 [review][投票]
★3突破口!(1973/米)脚本や演技も巧みではあるが、むしろ冒頭から光への偏愛ぶりを臆面なく見せるマイケル・バトラーの撮影に惹かれてしまう。噴水とスタッフロールの配し方などに見られる構図が上手い。本編中も、川面の輝きや、明け方の陽光などの美しさに目を引かれる。 [review][投票(1)]
★4リンダ リンダ リンダ(2005/日)被写体を突き放すのでもなく、見守るのでもなく、そのリアルな生態を覗いているようなロング・ショット。ライヴ本番までの苦闘を、正攻法の「汗と涙」で描くのではなく、少女たちが見せる疲労感で間接的に表現する、その距離感と低温さが山下監督的。 [review][投票(3)]
★3エル・マリアッチ(1992/米)惚けたユーモアと、格好よさとの絶妙のバランス。予算の都合で派手に物が壊せない制約を感じさせるが、同時にその制約の中で精一杯のアイデアを詰め込んでいるのもよく見える。 [review][投票(1)]
★3フランス軍中尉の女(1981/英)劇中のグローガン医師は産婦人科医のようだが、彼の部屋には精神を病んだ人の顔写真や、人の頭蓋骨が置かれている。これは性愛と死が表裏一体である物語の暗喩ではないのか。そして狂気と死は、共に‘虚構’が常にその内に孕んでいる要素でもある。 [review][投票(2)]
★4グレースと公爵(2001/仏)絵画を背景に用いる手法は、映画の平面性、虚構性と共に、絵具をキャンバスに塗り込めた物としての絵画に潜む生々しいドキュメンタリー性を顕在化させる。歴史と映像の、革新と保守の間での、ロメールの徹底的な中間性。 [review][投票]
★4マディソン郡の橋(1995/米)厚い時間の層を感じさせる、緻密なディテールの積み重ね。台詞も、ショットも、表情も、全てが圧倒的に「時間」を背負っている。二人が微妙な感情のあやを触れ合せながら関係を深める過程は、淡々とした中にも、重い時間の層が動くドラマ性が迫ってくる。 [review][投票(3)]
★4マンダレイ(2005/デンマーク=スウェーデン=オランダ=仏=独=米)「この国はまだ黒人を受け入れる準備が出来ていない」――本作の三年後、初の黒人大統領が選出された。が、アメリカの或る街では、彼が暗殺される日が賭けの対象にされている。 [review][投票(1)]
★4バイオレント・サタデー(1983/米)“shot”の応酬。暴力的な映像以前に、映像が暴力的な破壊と侵入であるということ。 [review][投票(1)]
★4浮き雲(1996/フィンランド)‘ささやかな幸福’そのもののように時折ひょっこり姿を見せてくれる犬。窓、ドア、冷蔵庫、テーブル、港のコンテナ、といった四角形が形作る画面の構図、それに加えて壁やソファー、カーテンなどの赤、青、黄、白のシンプルな色彩バランスが目に心地好い。 [review][投票(3)]
★5幸福〈しあわせ〉(1965/仏)モーツァルトの音楽のように完璧な幸福の光景が、微かな亀裂によって、恐るべき光景へと変じていくこと。素晴らしい色彩設計、フォーカスやカット割りの実験性にも関らず、ミニマルな演出による最大限の効果をもあげていることの驚き。 [review][投票(6)]
★4スリ(1959/仏)細部まで計算され、最小限にまで純化された脚本、ショット、カット割り、視線の動き。そこにただカメラ映えする身体が嵌め込まれてあるということの美しさ。 [review][投票]
★4フルスタリョフ、車を!(1998/仏=露)カメラと人の動きの騒々しさ、ビシッと決まった構図にも漲るエナジーは『フェリーニのローマ』に匹敵する。互いに衝突し意味を叩き割り合う声声声が飛び交う不条理な空間は、雪の白、ランプの灯りの白、カーテンの白でホワイトアウトしつつ炸裂し続ける。 [review][投票(2)]
★3歌麿をめぐる五人の女(1946/日)溝口は、情念に突き動かされる女たちをただ見つめることに徹する映画監督としての自分の姿を、歌麿に投影していたのだろうか。劇中で歌麿は、女たちに「描かせてくれ」と迫ったり、絵師としての強情を張る場面以外は殆ど受動的な人物として描かれている。 [review][投票]
★3夜の女たち(1948/日)劇伴はベートーヴェンの「運命」の一節に似た旋律で、切羽詰まったような旋律を繰り返しながら、どこへ発展していくでもなく悲鳴に似た音を伸ばして途切れる、という、この映画の物語を体現したような印象だ。 [review][投票]
★3最高の人生の見つけ方(2007/米)「棺桶リスト」という原題の通り、全篇をユーモアが包み込む。『スタンド・バイ・ミー』は少年たちが死体を探しに冒険に出る話だったが、今回は、死体になりかけた大人の男たちが冒険に出る。 [review][投票]
★2ひまわり(1970/伊)冒頭の、向日葵畑とテーマ曲で既に完成している感傷美以上の発展が無いので、殆ど感傷性にのみ奉仕する場面の連続に、後半以降は飽きてきた。反戦映画なんだろうけど映像的に魅力があるのは、空襲シーンで空に舞う火花や、はためく赤い旗に重なる戦場の光景。 [review][投票(1)]
★3太平洋ひとりぼっち(1963/日)主人公のナレーションや、頻繁に挿入される回想シーンは、観客を退屈させはしないが、孤立感を殺ぐこと甚だしい。堀江青年に寄り添うような撮影が、彼を捉えるカメラ、観客という三者の共犯関係を成立させるが、「ひとりぼっち」感にとっては致命的。 [review][投票(4)]
★4ジョーズ(1975/米)弦楽器の二音の反復の速まりが緊迫感を呼び、そこに被さる管楽器の鈍い音が、水中を横切る鮫の巨体を思わせる。足場のない海に半裸で浮かぶという、無防備な状況。鮫がいつどこに現れるか分からないせいで、何もない海自体が恐怖の対象として人間を包囲する。 [review][投票(8)]