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[コメント] もののけ姫(1997/日)

全てを捨てて世界を呪う、狂える巨人宮崎駿。それすらアッサリと受け入れた世間のいいかげんさには、舌を巻いた。
ペンクロフ

国民的映画監督に祭り上げられた宮崎駿が全世界に対して牙をむき、狂いまくってのたうちまわる超大作。

自分の怒り、迷い、苦悩、矛盾をそのまんまフィルムにブチ込む。客がどう思おうと知ったことではない。こういう態度、きのう今日映画監督はじめましたって若者がカッコつけてやるとハナについて見ちゃいられないんですが、宮崎駿は極上のエンターテインメントを作れることを過去に何度も証明しているベテランである。彼の映画はヒットを繰り返し、新作の予算はドンドン増えた。それはそのまま、興行的に失敗したときのリスクが増大するということでもある。すでに彼は、気楽に失敗を恐れず映画を作れる立場にはないのだ。ところが!

もののけ姫』を観て仰天した。宮崎駿の怒り、迷い、苦悩、矛盾がそのまんまフィルムにブチ込まれているではないか。結論らしい結論もなく、映画は観客を置き去りにして空中分解する。映画としては最高に気まずい感じだったけど、あの立場にあってここまで狂った自分をさらけ出せる宮崎駿という男は本当に凄い。なんだかんだ言っても自分のはらわたを撒き散らし、作家としての純粋さを保ったままこんなにムチャクチャ支離滅裂な映画を何十億もかけて作れるおじいちゃんは、世界中探したってそうそういるものではない。そこはやっぱり庵野秀明あたりのコモノとはスケールのデカさが桁違いで、オレにとってこの人の巨大なはらわたのハタ迷惑具合は、それだけで充分銭を払う価値がありました。ズバリ言ってこういうキチガイ、大好きです!

それにしてもこのおそるべき映画がバカみたいに大ヒットした事には、本当に驚いた。宮崎駿本人も呆れたのではあるまいか? この狂った映画すら祭り上げてしまう日本人の、一枚上をゆくいいかげんさには舌を巻いた。逆に立派だと思った。それでこそ大衆である。作品としてはアレだけど、社会現象としては5点満点の映画です。

(評価:★4)

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