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[コメント] ボウリング・フォー・コロンバイン(2002/カナダ=米)

恐怖と不安の連鎖に立ち向かうには、怒りと笑いこそが有効だ。マイケル・ムーアは、そのことをよく知っている。
ペンクロフ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







実は、あんまりこれをすぐれたドキュメンタリーとは言いたくない。映画館で木戸銭払って観るドキュメンタリーならば、せめてこれぐらい面白くなくては困る。

今となってはもはやベタでしかないサッチモ先生の使い方に、マイケル・ムーアの苦渋を感じた。すぐれたオープニングのセンスからして、彼がいまさら「こんな画にWhat a wonderful worldを流すなんて皮肉が利いてるでしょ!」なんて本気で思ってるとはとても思えない。1人でも多くの人にこの映画を観てもらうために、ムーアはあえてベタを選択したのだ。そこは評価したい。同様にライフルおじさんヘストンに会いに行くクライマックスだって、彼が望む以上に作品が要求した見せ場でしかない。だってどう見てもイヤイヤ訪問してるんだもんなあ。ヘストン訪問の空しさも、彼の家に亡くなった女の子の写真を置いて帰る行為の偽善も、ムーアは多分わかってやっている。これだって本当ならば、ホワイトハウスへ突撃して現職アメリカ大統領にインタビューするのがベストである(捕まるけどな!)。だからこそ、彼がリラックスして取材しているカナダのシーンは素晴らしい。いいことを言ってるのは、なにもマリリン・マンソンだけではない。カナダの呑気な少年たちの呑気な言葉だって、真剣に聞いて損はない。

コロンバイン高校の事件には、実は銃問題以外にも語るに値することは山ほどある。だがムーアは事件を起こした少年たち、そして事件の原因そのものには迫らずに、この事件をマクラにして広くアメリカという国の病根を、その成り立ちから観客に示していく。意図したように話を進めて当然、これはドキュメンタリーであってニュースではないのだから。言いたいことを言わなくてどうする。意識的な取捨選択を重ねて、作り手が疑問の答えを発見していく(または発見してるように見せる)、その過程こそがドキュメンタリーの醍醐味。堪能した!

(評価:★4)

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