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[コメント] 惑星ソラリス(1972/露)

ストーカー』に出てくる「ヤマアラシ」についての話で、私の今までの「ソラリス」の解釈が間違っていたらしい、ことに気づきました。
ジョー・チップ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ストーカー』の「ヤマアラシ」は部屋までたどり着いたが、途中で弟は死ぬ。「ヤマアラシ」は部屋に弟を生き返らせてくれと願いをかけたが、出てきたのは大金だった。それが彼の本性だったからだ。本性を目の当たりにした彼は自殺した。 恐ろしい話である。「ゾーン」は願いをかなえてくれる良い場所ではなかった。無意識の本心を白日の下にさらけ出される場所だった。つまりソラリスの海と同じだ。                                   『ソラリス』では死んだ妻がクリスの前に現れる。私はこれを自殺の原因が彼にあると考え、その良心の痛みから出現したのだろう、と解釈していた。クリスが彼女を愛そうとするのはその罪ほろぼしだと考えていた。確かにそれも否定できない。だが、事態は複雑だった。以下は私の憶測だがこういうことではないのか。                                        クリスの心には常に母のイメージがつきまとっていた。写真、フィルム、夢、さらに母とハリーは髪型、スタイル、服装までがそっくりだ。マザコンという言葉は陳腐だが、そういうことだろう。そもそもハリーの自殺の原因とは、彼に愛されていないことに絶望したから(とクリスは自分で思っていただろう。なぜなら自分でもハリーを愛していたかどうか自信が持てなかったから)。                                                それほど愛している母なら、なぜ母が実体化しなかったのか。実体化したのは妻だった。それがクリスの無意識の本性。                                                         クリスは「これは罰なんだよ」とサルトリウスに言う。「何に対する罰なんだ」という問いに「すべてさ」と曖昧に答えるが、クリスにとっての罪は実は母を愛していなかったということで、ハリーが実際にそこにいるということがその罰だったのだ。だがクリスにとってそれは同時に福音であったかもしれない。なぜなら自分がハリーを愛していることが分かったから。                                                       複製のハリーを愛するとは、妻への愛と共に母へも信頼を回復する、という行為でもあったのだろう。二人とも死んだ今となっては、(しかも父も地球に帰るころには死んでいる)なんとも絶望的な話だが、そうすることによって海がなにかの答えを出してくれるかもしれない。クリスはそれに賭けたのだろう。                                             海の解答、あの島になぜ母も妻もいなかったのか・・・海がもはや「罰」の必要がないと判断したから(つまり許された)、残る父に会いなさい、ということか。そこが実はよく分からないのだが、これがハッピーエンドであることは明らかだろう。                                                                        こうして見ると改めてこの映画がキリスト教的色彩が色濃く、さらに徹底して男性の視点によって描かれていることが分かる(それが悪いというのではない、あまりにも正直過ぎるとは言える)。                                                                 

(評価:★5)

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